第6話

「ねぇ、わたしと付き合ってよ」

「はい?」


彼女に告白をされた。

放課後話があるからと教室に残り、二人きりになった途端の出来事だった。


おれは咄嗟のことに理解が追いつかず、彼女の顔を見るが、彼女は顔だけでなく手先や足までも真っ赤に染まっていた。


「だ、だから……あぁもうっ‼︎ わたしと付き合ってって言ってるのっ‼︎

 答えなさいよバカ……」


どうやらおれは何も答えずにじっと彼女を見つめていたらしい。

恥ずかしい思いをしたのはわたしだけかというように顔を覗き込んでくる彼女の顔はまだ赤い。


自慢ではないが、おれはあまり目立たない。

今でこそクラス委員になり、みんなから注目されているが、それ以前は、名前すら認知されていたか怪しいレベルで目立たない。

そんなおれをどうして……という質問は彼女にはことあるごとにしていた。

そんな時彼女は決まって「周りをみていそうだったから」と繰り返す。


「あ、うん。わかった。これからもよろしく」


断る理由は、ないだろう。

目立たない人生だなんてつまらない。それはわかりきっていた。

誰にも頼りにされず、誰にもみてもらえない。

そんな世界から彼女は連れ出してくれた。

おれ一人では絶対に無理だったことだ。


おれは彼女に対して感謝をしている。

それだけで彼女の告白を受ける理由としては十分だ。


「よかった」


彼女は安心したように、おれの肩に寄りかかってきた。


「断られたらどうしようって、すっごい不安だった。

 嫌われちゃったらどうしようって、すっごく怖かった。

 ほんとうに、よかった……」


彼女なりに勇気を出したことだったのだろう。

見れば彼女の目元にはうっすらと恥ずかしさとは違った赤みと共に、きらりと光る何かがあった。

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