第5話
2班、3班と発表は順番に進み、やっとおれたちの番が来た。
「わたしたちが発表する内容は、市の観光についてです。
1班も発表していましたが、今宵川は鮎の名産地と言うだけではなく、観光地としても、とても人気の場所です」
「毎年夏休みの期間中には、鮎のつかみ取りをやっている箇所があり、その場所では自分が採った鮎をその場で塩焼きにしてくれ、頭から尻尾まで骨を気にせずに食べることができます」
彼女の発表に対し、おれがサポートに回るような形で発表は進んでいった。
「これでわたしたちの発表を終わります。ありがとうございました」
発表が終わった瞬間、これまでのどの発表の時よりも大きい拍手が教室中を埋め尽くした。
「えぇっと、みんな拍手ありがとね。
それでなんだけど……質問ある人は手を挙げてくれる?」
彼女はこんなに拍手が来るとは思っていなかったのか、どうすればいいか戸惑っている様子だった。
ちらほらと手をあげる人の姿が見え始めた頃でさえ、彼女はオドオドしていたので、おれは適当にクラスメイトを指名した。
「今宵川、泳ぐ、できる?」
おれが指名した子はあまり口数が多い方ではない女の子だった。
名前は確か……
彼女が自分から発言することは滅多にないため、久しぶりに声を聞いた。
「えっと、夏場であれば泳ぐことはできると思う。
ただ冬になると川が凍っちゃうから泳ぐことはできないかな」
今宵川のずっと上流には大きい滝があり、冬になるとその滝が凍るらしい。
その凍った滝によじ登る人が毎年いたようだが、事故が多いからと最近では封鎖されているというのは父の受け売りだ。
「夏、暑い、泳げる、嬉しい。冬、寒い、水、嫌」
その後も何人かの質問に答え、発表は無事に終わった。
最後の方になると、彼女もいつものリズムを取り戻したようで、質問に対しハキハキと答えていた。
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