第4話

彼女-志帆しほ-とおれがクラス委員になって数日が経ち、はじめてのクラス会議が開催された。


「今日の議題は、【私たちの市、星明市ほしあかし】についてです。

 わたし私たちが住んでいるこの市では、ほかの市にはない特別なものがあります。

 そのことについて、グループで集めたことを発表していただきたいと思います」


総合の時間でまず初めに取り組んだことは、自分たちの住んでいる地域に詳しくなろうというものだった。

おれたちはそれぞれのテーマを決め、大きい画用紙に調べた内容を発表の司会を先生に頼まれた。


志帆はとても張り切って発表用の資料を作り、おれは静かにその準備を進める。

席が近かったこともあり、同じ班で同じ発表資料を作っていたおれたちにとって、今日がその成果をアピールする絶好の機会でもあった。


1班から順に発表をしていき、おれたちが発表するのは最後の4班だった。


「これから1班の発表に入りたいと思います。私たちの班では、星明市で有名な食べ物について調べました。

 星明市の特産品の一つとして鮎があります。

 星明市を流れる今宵川こよいがわの水はとても綺麗なので、鮎の餌となる苔などが育ちやすく、毎年国内一位の漁獲量を保っています。

 ………………………

 ご清聴、ありがとうございました」


発表が終わると同時に、志帆が大きく拍手をした。

それに続くようにしておれも拍手をすると、ほぼ同タイムでまばらに拍手が聞こえる。


「ありがとうございました。それでは、発表をしてくれた1班の皆さんに質問がある人は手をあげてください」


まばらだった拍手はだんだんと止み、ちらほらと手が上がり始める。

彼女はその中から一番席が近い女の子を指名した。


「それじゃあ、依織いおりちゃん。質問をどうぞ」


「はい」という声と共に立ち上がった女の子-依織ちゃん-は、絵が書かれた画用紙を指差した。


「あの、ここの絵に書かれてる、鮎って、寿命、どのくらいなの?

 ペットみたいにして飼える?」


依織ちゃんは生き物が好きで、クラス内でもいきもの係をやっている。

教室の後ろでメダカを飼っているが、その世話をしているのも、彼女がほとんどだった。


1班のメンバーはそのことについては全く調べていなかったのか、互いに顔を見合わせ、どうすればいいのかと戸惑っているようだった。


「そ、それは……」

「確か鮎の寿命は1年くらいだったから、あんま飼うってことはできないと思うよ。

 それに、食べ物もちょっと用意するのが難しいと思う」


どう答えたものかわからない様子に耐えられなくなり、おれはとっさに助け舟を出した。


「そうなんだ……残念」


それだけ聞くと、もう満足したのか、沙織ちゃんは席に座った。

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