第3話

「えへへ、ついはしゃぎすぎちゃった。ごめんね。重くなかった?」

「それは大丈夫だけど、志帆さんこそ大丈夫だった? 怪我とかしてない?」


教室で、みんなに見られながら押し倒されたおれとその上に乗っかるようにして倒れた彼女。

当然、それを見逃すクラスメイトはここにはおらず……


おれたちは、初日早々、お似合い夫婦だともてはやされることになるのだった。


「なんかすごいことになっちゃったね……

 わたしがはしゃぎすぎちゃったせいでこんなことになるだなんて……

 思いもしなかったよ」

「まぁあれはしょうがないことだったんじゃない?

 おれもとっさに踏ん張れなかったところにも原因があるし……」


放課後、おれたちは互いの謝罪を込めて教室で会議をしていた。

これからのこと。今のこと。


現状はどう頑張っても、いじられる原因を作るだけだろうというのが、二人の出した結論だった。

ここで汚名を挽回しようとするたびに、おれたちは一緒にいる時間が長くなってしまうことは当然で、それを誰かに見られたらそこからまた噂が広まっていくからだ。


実際、今日話していただけでも、三、四人は忘れ物をとりにきたクラスメイトに見つかり、「仲良くな〜〜」といじられる始末である。

その度に彼女は、「うぅ〜」と頭を悩ませるような仕草をするので、その光景はみているだけでも面白かった。


「そういえば、なんでおれなんかクラス委員に誘ったの?

 他にできそうなやつはいっぱいいたのに」


おれは帰り際、ずっと気になっていたことを聞いてみた。

普段そこまで目立ちもせず、周りの人と関わっていないおれを、どうしてそこまで推薦したのか。


「さっきも言ったじゃん。いつも周りのこと気にしてるから、細かい変化にもすぐに気づけるんじゃないかと思ったんだって」


それだけではない気がする。

彼女にはもっと別の理由があるように思てならない。


「ほんとにそれだけ?」


おれはさらに問い詰めるが、彼女から帰ってきた言葉は明るい返事のみだった


「そうだけど? これからよろしく!! 充くんっ!」

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