第2話
彼女との出会いは、小学3年生の時だった。
「今から、クラス委員を決めたいと思います。
男子で一人。女子で一人。
我こそはという方はいますか〜?」
クラス内でのリーダー。
そんな重荷を、誰も受けようとは思わない。
自然と誰かに押し付けるような雰囲気が漂い始める。
しかし一人だけ、やりたいと言ったクラスメイトがいた。
それが彼女、
「わたしにやらせてっ」
彼女はとにかく目立つのが好きで、おれとは全く逆の人間だった。
他に女子の中でやりたいと立候補する人はおらず、そのまま女子のクラス委員は決定してしまった。
しかし、男子のほうはそううまくは決まらなかった。
「なぁ、お前やれよ」
「えぇ〜やだよぅ」
「じゃあお前な」
「俺だってやりたくないよ」
誰一人としてクラスのリーダーなんてものになりたくはない。
何か問題が起きた時に自らが動かなければ奈良にことが面倒臭いというのもあったし、自分がやる必要性など、どこにも感じられないからだ。
「女子は早く決まったのに、男子は何しぶってんだか……」
しまいには、もう決まったからと女子がいばり始めてくる。
彼女が立候補していなかったら、同じことが起こっていただろうにも関わらずだ。
「じゃあ……
「えっ……?」
なぜこの場で、おれは名前を呼ばれているのだろうか。
なすりつけ合いには参加せず、ただぼけっとしていただけのおれを呼んだのは、他でもない志帆だった。
「わたし、向いてると思うんだよねっ、クラス委員。
ほら、いつも周りを気にしてるし、細かいところにすぐに気づけるんだもん」
「で、でも……」
おれが周りを気にしているのは、みんなの目が怖いから。
細かいところにすぐに気づけるというのは、人の目を避けた場所がいつも決まっているから。
ただそれだけのことなのに、彼女はそんなおれをみていたということなのだろうか。
自然と悪い気はしなかった。
そして、彼女にならついていってもいいかもしれないと思った。
「じゃあ、やってみようかな……」
「やったぁ‼︎ これから二人でよろしくねっ」
「他にやりたい人はいないかな? それじゃあ、二人とも。頑張ってねっ」
先生の拍手と共に、彼女が抱きついてきた。
「ちょっ、急に来られても〜〜」
咄嗟のことでバランスを崩したおれは、彼女に乗られるようにして、床へと倒れ込むのだった。
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