りんごの唄

星町憩

りんごの唄

りんりん りんごりん 

電話がなる 今日もなる

ワタシになる あなたの望むあたしになる

きらいな声できらいな言葉をきれいな相槌うって

あなぼこのようなえがお抱いて あたしはあたし


りんごりん りんりんりん

わたしのきもちはあのひ 枝からもいどいた

ずっとそでに隠してる

はやすぎた? ちいさくて すっぱくていびつで 売り物になんかならなかった

おいしくないし 知ってたし 手のひらに包んで隠せるくらいの シロモノなんて

ほしいひともいない

ナイフで飾る勇気もない

ないないない

それじゃだめなの うるさいな


りんりんりん

鳴り止まない幻聴

いつでも人の目が気になるの

どうせひもじいときの非常食だようるせぇな


あちらにいっぱい宝石りんご

それで満足して おいしいでしょ?

あたしなんかほうっておいて

ほうってほって放物線

斜塔のように斜めに傾いで 世の中に舌打ちしてる


くつが片方どっかいった どうでもいい どうでもいい

だってこれは芸術 理解できない? 問題ない!

苦し味を知らないやつなんて興味もない

あまい? すっぱい? ハッ、そのていど

どう、これもっとまずいよ食べてみる? あ、そう

くさってる


くさってないのにきっとそう

虫だけがおともだち

ごてごてのべたべたのあまったるい虚偽 暗鬼 常識

定時でコーティングしてちょっとオシャレした気になって

でもお粗末だから、わたしが食べましょうか

キラキラに見えたし甘かったけどよくわかんなかった

やせっぽっちのこころが泣いて、

でももう手遅れ 種も噛み砕いてしまったの


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