第32話 エアの繋がり
ブルーエアドラゴン改めエアが入って来たため、躾けと称する教育がはじまり、江戸温泉街に加わった寺子屋や私塾や藩校が役立つ時がやってきたんだ。
寺子屋はわかるよね?私塾や藩校ってなにって思わなかった?
一応違いを話すとね……
藩校は、藩士などを生徒に兵法や武芸、儒学、蘭学、医学などを教えていて、藩が運営していたんだって。
私塾は、蘭学者や儒学者が開いたものが多く、オランダ語や数学技術など高度な内容を教えていたの。
寺子屋は身分を問わず広く庶民の教育に寄与し、生きるために必要な実用的な内容を教えたんだって。
で、今回エアには、亜空間ワールドで生きるための必要な内容だから寺子屋でジュドが講師としているわけだけど……
「良いですか?とにかくこの世界は、マスターが快適に過ごしたいと言う願いの下成り立っています。ではエアに質問しましょう。快適とは何ですか?」
「えーー、僕一応300年は生きているんだけど?気楽に暮らす事じゃないの?」
「はい、みたらし団子一個没収」
「ああああああ!僕の団子!」
「真面目にやりなさい。教えたでしょう?」
「う“ー……『亜空間ワールドで心地よいおもてなしや共に過ごす時間を楽しむ』でしょ?」
「やればできるのにやらなかった。という事で、もう一つみたらし団子没収」
「あああああああああ!何で?ちゃんと言ったじゃん!」
「貴方には我慢も必要ですからね。それに最初からやっていれば、没収はしませんよ」
「ううううううう……!あと一個しか無い……!」
「はい、ではこの状況で貴方がすべき事は何ですか?」
「……真面目にやる事でしょ?」
「もう一つ没収しますよ?」
「真面目にやらずに『ごめんなさい』!」
「そう、貴方はまずは人に迷惑をかけたら、素直に謝る事を覚えて貰います」
大きな寺子屋の室内で、人化したブルーエアドラゴンが大人しく座って、アレスタックスのジュドの授業を受ける……なんてシュールな状況だろう……
見学している僕が少し遠い目をしている中、ジュドによる亜空間ワールドでの過ごし方を伝授されるエア。
なんとなく構ってもらえて嬉しそうなのは、気のせいじゃ無いだろうなぁ。笑顔を我慢してるのバレバレだもん。
あ、そうそう。なんと藩校や私塾も活用されているんだ。これもセイクリッドジェリーマーメイド達が、率先して覚えようとしているの。
一回読むと覚える彼らは、最近は実地訓練と称する『生活』が始まっているんだ。
おかげで、異世界版城下街みたいなのまで出来上がっているんだよ。
彼らは人間と会話する事も訓練の中に入っていて、最近じゃ本当に江戸温泉街が賑やかなんだよ。
ほら、今だって通りで店主役とお客役で頑張って会話してるんだ。
「へい、らっしゃい!いい野菜手に入ったんだ!よってかねえか?」
「なんでぇ、なんでぇ。べらぼうめ!どこが良い野菜だ!土がついてねえじゃねえか!」
「てやんでぇ!おめえ、まだ新参モンだな?これはジュド様がお出しした野菜だってんだ!倍率が高くて手に入りにくいしなものよぉ!」
「それを先に言いやがれ!ウチには今アクア様が止まっているんでぇ!買わないわけには行かねえだろうが!」
「おお!ならこの果物と、おお、コイツも入れて、おまけにコレもつけてどうだ!持ってけドロボー!」
「へへっ、かたじけない!ありがとうよ」
……以上、寺子屋の窓から聞いた会話でした。
ジュド……!なんで江戸っ子言葉なんか教えてるんだよぉ……!
がっくりと寺子屋の窓枠にうつ伏せになる僕を横目に、室内ではジュドの教育が進んで行く。
……うう、火鉢の側が眠気を誘う……
「ふむ……今日はこのくらいで良いでしょう。よく頑張りましたね」
いつしか寝落ちしていた僕がハッと気づくと、今日の授業が終わっていて、エアの頬にジュドが顔をすりすりと近づけている。
ご機嫌なエアはジュドの首に抱きついて「じゃあ、ご褒美にジュドに乗る!」とおねだり中。そう、エアはジュドにも懐いたんだよね。
「仕方ありませんね」と渋々許したかのように背中に乗せるジュドだけど、結構エアを気に入っているのはバレバレ。
微笑ましい光景に僕も合流して大通りに出ると、もはやいっぱしの町民となったセイクリッドジェリーマーメイド達の様子が目に入る。
袴姿に町娘の着物姿に商人の着物姿、それにウチの本館で働く女中姿のセイクリッドジェリーマーメイドの姿もあるね。
うん、なぜかセイクリッドジェリーマーメイド達の間で、ウチの本館に勤めるのが憧れなんだって。
料理洗濯掃除はもちろん、着替えまで手伝おうとするんだもん。流石に着替えは自分でやるから、と断ったけどね。
……クリーン魔法一発で綺麗になるのに、手作業が流行りって面白いよね。でも自分の手で綺麗になる感覚はスッキリするからわかる気がするけど。
あ、そういえば……
「ねえ、エア?エアにも眷属っていうのかな?アクア様に仕えるセイクリッドジェリーマーメイドみたいな存在っているの?」
ちょっと思っていたんだよね。エアってどこか仕えられるの慣れてんだもん。
「ん?ホーリーハルピュイアの事?」
「あ、やっぱりいるんだね」
「うん、勝手に世話してくれるよ。アイツら浮島がないと生きていけないんだ」
「え?浮島?」
浮島と聞いて、うっかり某有名アニメの城を思い出したのは僕だけじゃないはず。
いやいやそれよりも、とっても興味深いんだけど……!
「ふむ……やはり深淵の森の各ドラゴンは、専用ダンジョンを持っていましたか」
僕が興味深々になったのを見て、何かを考えだしたジュド。そんなジュドが更にエアに突っ込んで聞いて出て来たダンジョン名が……
「『深空(しんくう)のダンジョン』?」
「そ。そこで食事とか運動やってた」
あっさりというけれど、ジュドによれば『深空のダンジョン』も『大海原のダンジョン』と同じ難易度の高いダンジョンなんだって。
因みに、一膳飯屋で席に座って味見をしていた『風光の跡』メンバーによると……
「はあああ!?今度は『深空のダンジョン』だってぇ!!!?」
「空我、ちゃんと食べ終わってから話して」
驚きの余り金平牛蒡を吐き出す空我さんの向かいで、芋の煮っ転がしをサッと避難させる楓さん。
「やっぱりそっちもか……!」
「『深空のダンジョン』だって!?」
その横で雅也さんはお茶を吹き出すのを我慢していたくらい驚いていたのに対し、雅也さんの向かいに座る力也さんはガタッと立ち上がって驚いていたんだ。
「アレ?みんな知っているんですね?」
「当然!これも深淵の森のどこかにあると言われていたダンジョンだからね!」
「雅也はダンジョンについて調べていた」
「楓はどうして冷静なんだよ……?俺らが盛り上がって調べていたっつーのに!」
「あー……空我。一応その顔はワクワクしている顔だぞ?」
僕の質問に勢いよく答える雅也さんに、冷静に補足情報をくれる楓さん。空我さんは一緒に喜ばない楓さんに不満顔だけど、兄の力也さんによると楓さんも3人と同じ気持ちらしい。
そして浮島があると聞いたメンバー達からは……
「スカ○ピア!」
「ラピ○タ!」
「グラ○ルの世界じゃん……!」
「ランペドゥーザ島か!」
意外にも四人が分かれたんだよ!力也さんは某有名海賊アニメだし、楓さんは僕と一緒の某有名な浮いている城。
空我さんはゲームに走ったんだね。某有名ゲームの世界って陸ないし。で、雅也さんは現実派だった。
「雅也さん、どこそれ?」
「前世で行ってみたかったんだよなぁ。地中海に浮かぶ島で、伊国最南端、シチリア島南方にある島。 海の透明度がすっげえ高くてさ、船が浮いたように見える場所でさぁ」
「「「いや、それ浮島じゃない!」」」
僕の質問に丁寧に答えてくれたのは良いけど、残り3人からツッコミもらっている雅也さん。
……うん、それだと島も船も水面に接してるし、フォローできないなぁ。
なんて茶番はいいとして、僕らの行けるダンジョンに新たに『深空のダンジョン』が加わり、アクア様も呼んでどちらに行くかで話し合いが始まったんだ。
さて、次はどっちに行くんだろうね?
僕はどっちでも良いけど……フェルトさんとラルクさん羨ましがるだろうなぁ。
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