第7話 日本人はやっぱりお風呂が好き
先に屋台で仕入れたお肉食べよっかな。
そう思った僕はお皿を出して、屋台で買った肉串の串を抜きジュドが食べやすく固まり肉だけにする。ジュドは大体お肉10本ぐらいでいいらしい。
改めて見るとお皿の上に肉が山盛りってすごい光景だよね。良かったよ……余分に20本も買っておいて。
ホッとしている僕を横目にガツガツと食べ始めるジュドが、ふと何かに気づいたみたいだ。
「マスター、コレはボアとオーク肉ですか?」
「そうらしいよ。とりあえずジュドが両方食べると、データ取れるだろうと思ってさ」
「成る程。ですが、やはり丸ごとデータが欲しいものです。マスター、外で肉の調達も頑張りましょう」
「あ、やっぱり?……お手軽な屋台ものでは駄目かぁ」
「そんなもんです。でも、データ集めさえすれば、いくらでもお肉食べても大丈夫ですからね。肉パーティも夢じゃありません」
「あーイイ……!夢のガッツリステーキ肉も出来るのか……!」
肉をモグモグ食べながら、更に肉汁滴る肉を求めるのって成長期あるあるだよなぁ。僕ももっと大きくなる為にしっかり取らないと。
そんな決意をしながらしっかり3本食べ切った僕の簡易な食事も終えて、ジュドと共に食後の散歩がてら蒸し風呂の様子を見に行く。
ジュドの説明によると……蒸し風呂小屋には、入り口から入ると手前に揚がり場と呼ばれる脱衣所と、風呂屋型と呼ばれる小部屋と湯殿と呼ばれる空間の二部屋があるんだ。
通常の入り方は外の大釜で湯を沸かし、通風口を通して蒸気を風呂屋型と呼ばれる小部屋に充満させて入る仕組みらしい。
「うわぁ……コレって、入るまでめっちゃ手間がかかるんじゃ……?」
「そうですよねぇ。という事で早速改良しましょう。マスターお願いします」
「丸投げかい……!でも湯殿って言うスペースがあれば、浴槽だけ作ればいけるんじゃないかな?」
「お湯は水魔法で出せますし、なんなら付与魔法一定の温度から下がらないようにすると長湯も可能でしょうね」
「いいね、いいね!じゃ、ジュドに僕のイメージを伝えるから、この湯船作ってくれる?」
「ふむ……コレなら簡単ですね」
僕がイメージした風呂の様子をジュドに思念で送ると、ジュドが目を閉じてすぐ出現した2、3人はは入れそうな浴槽。しかも、浴槽の手前に長すのこに木製の風呂桶と椅子も現れ、それに排水溝まで作られていた。
「ジュドー!さっすが相棒!わかってるぅ!」
イメージ通りの風呂の完成に、ぎゅっとジュドをハグした後いそいそと靴を脱ぎ浴槽に手をかける僕。手に魔力を集めて浴槽に耐水/常時浄化/適正温度保持をイメージし、付与魔法を発動させてみたら、なんと、初回で見事に成功!
風呂の適正温度は42度だっけ?僕、長湯好きなんだよなぁ。
ウキウキしながらそのまま浴槽に魔法でお湯を溜め、つい鼻歌を歌ってしまう僕を見て首を傾げるジュド。どうやらジュドにはお風呂の気持ち良さがわからないらしい。
うーん、残念!ジュドと共感は無理かぁ。
とは思いつつも、僕の心はもうお風呂に入れる、という思いでいっぱい。だって、昨日は入れなかったし。
「よっし!お湯張りオッケー!後は、雑貨屋で買った石鹸と〜タオルを出して〜♪」
フンフン鼻歌を歌いながら準備を終えたら、パパッと脱衣所で脱いで素っ裸になった僕。ガラッと木戸を開けて湯殿に入り、すのこの上の椅子に腰掛ける。
因みに、明かりはまだ付けて無いから木戸は開けっぱなし。どうせジュドしかいないからね。
そんなジュドは後学の為、外から僕の入浴の様子を見学中。髪も身体も泡だらけの僕を見て「新種の生き物ですね」だって。
うん、ジュドもお風呂の気持ち良さを味わってもらえるように、何か考えておこうかな。
そんな事を考えながら身体を洗い終わった僕は、念願の湯船へ!
「はああああああ………!」
僕が入った質量でザアアアア……と湯船から溢れるお湯を勿体ないと思いつつ、日本ではなかなかできなかった贅沢感を味わう。
たった一日入らなかっただけで、こんなにもお風呂が恋しかったとは……!ラノベでお風呂お風呂って言うのがすごいわかるよなぁ……!
思いっきり歓喜のため息を吐き、湯船のお湯で顔を洗い満足した僕は、浴槽の縁に寄りかかりジュドに現在の亜空間ワールドについて気になっていた事を聞いてみた。
「ジュドー?今この亜空間ワールドの大きさってどれくらいあんの?」
「現在は、地球で言う日本の四国くらいですね」
「っ!!はああああ?!そんなデカいの?」
「マスター、[亜空間ワールド]って名称だけでも大きさは予想つくかと。でも、コレでもまだ小さい方ですよ?」
これで小さいって……思ってたより規模が違いすぎる……!
驚いている僕にジュドが言うには、いずれはアメリカ大陸くらいにはなるそうで、その為にも異世界各地の素材が必要になるんだとか。
あ、季節も設定してくれたらしい。日本と同じように四季があるんだって。今現在は春の気候らしい。
「はあ……聞けば聞くほど凄すぎる……!今の僕には手に余るよ……」
チャプン……と肩までお湯に浸かり直した僕だけど、正直言えば、これだけの空間をどうやって使っていくか考えるだけでワクワクしていた。
季節があるなら雪見風呂も良いし、夏にはやっぱり海にも入りたい!秋には亜空間ワールドで作物を収穫できたら収穫祭だって良いだろうし……!
なんて事を考えていると、やっぱり思うのは……
「人手、が欲しいよなあ……それも信頼出来る人……」
僕のボソッと口から出た言葉に、休んでいた体勢から首を上げるジュド。
「それもそうですが……まだ焦る事はないかと。まだまだ植物の増殖も追いついていませんし、マスターもこちらに来て2日目ですから。それに、寂しいなら一緒に寝てあげますよ?」
からかい口調で僕に言うジュドだけど、その目は優しい。
……実際のところ、ジュドの提案って良いんだよなぁ。
アレスタックスの姿のジュドと一緒に寝ると、体温が伝わって来て一人じゃないって実感して安心するんだよ。……やっぱり、この世界で肉親もいない状況は寂しいものがあるのが本音だし。
それに、ジュド専用の小屋も自分でちゃんと庭に作っていて、大きなジュドでも余裕で寝れる畳敷きの小屋があったんだ。それもジュドが小屋に入る前に自分でクリーン魔法使う姿を見ていたから、ジュドも小屋も綺麗な状態で寝れるのはわかっているし。
「ジュド……しばらくよろしく」
「仕方ないですねぇ」
なんて言いながらも、僕に頼まれて嬉しそうにお尻振っているジュド。何かを思いついたのか、僕を残して先にカポカポ歩いて移動して行ったんだ。
多分、小屋に戻ったんだろうな。なんだかんだ言ってもジュドは僕に甘いからなぁ。
ジュドの事を考えほっこりしながらも、その後も結構長湯をした僕は、お風呂から出るとジュドの小屋に直行。ガラララ……と戸板を開けると、薄暗い筈の室内がほんのりと明るく照らされていた。
「流石ジュド。魔導ランプ見つけたんだね」
「勿論です。マスターのアイテムボックス内は全て把握してますから。それに、マスターが私用の毛布まで買って下さいましたし」
そう言ってジュドが嬉しそうに腰を下ろして横になった場所には、今日雑貨屋で見つけたフワフワのファビットの毛皮が敷いてあった。
因みに、雑貨屋の店長さんによると、ファビットって2mクラスのデッカい兎の魔物なんだって。その毛皮が手触り良くて結構お高い買い物だったけど、ジュドにいいかなぁって買っておいたんだ。
まあ、僕も一緒に寝るだろうと言う事も見越して買ってたんだけどさ。
で、いそいそと僕もジュドのお腹にくっついて横になってみると、毛皮があったかくて買って大正解!
僕用の毛布もアイテムボックスから出して包まると、お風呂上がりの気持ち良さとジュドの暖かさで、すぐに瞼が重くなって来たんだよ。
「悪い……ジュド……後は、よろしく……」
そう頼んだ後、僕はすぐ寝落ちしたらしい。
僕、異世界に来て寝付き良くなったなぁ……
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