第6話 異世界市場と亜空間ワールドのレベル上げ
協力者となってくれたフェルトさんと一旦ギルド長室へ戻って、僕の冒険者ギルド登録をして気付いた事……
「『不運な異世界人』は消せないのか……?」
隠蔽魔法を使っても消えないギルドカード。すると、フェルトさん曰く……
「このギルドカード自体アーティファクトだからな。だが、だからこそ本人が思えば出したい情報だけ現れるぞ」
因みにギルドに金を預けると、ギルドカード同士でお金のやりとりが出来るんだってさ。この世界もキャッシュレスだったか。意外に進んでいるところは進んでいる。
「そうだ、トウタ。宿はギルドにしないか?そうすりゃ、俺も様子を見に行き易いんだが」
「え?ギルドも宿やっているんですか?」
「いや、簡素なもんだがギルド会員なら安くしているし、個室もある。トイレ、調理場は共同だがな」
そう言ってフェルトさんが案内してくれたギルドの宿というより宿舎は、結構綺麗で調理器具も揃っているし、個室はベッドだけとはいえ清潔感があって雰囲気が良かった。
……うん。亜空間ワールドを充実させるためには、動き易いかな……?
『ジュド、冒険者ギルドの宿舎に泊まろうと思うんだけど、どう?』
『そうですね、動き易い方がいいですし。他の人に見つかる心配なさそうですし』
ジュドからもいい返事が来た事で、フェルトさんにお願いして鍵付きの個室を頼んだ僕。一週間で銀貨三枚(日本円にして3000円くらい)だって!すっごく安いし、1ヶ月の契約を即決定したんだ。
「良し!決まりだな!まあ、俺はギルド長の仕事もあるからそんなに顔は出せないが、面倒事が何かあったらすぐ来い」
ニカッと笑いながら僕の頭をポンポンと叩くフェルトさんに感謝を告げて、ようやくまずはこの世界での動き易い基盤を手に入れた僕は、早速市場へ向かったんだ。
あ、ジュドを連れて歩くと目立つから、僕だけで歩いて行ったけど……
「さあ、いらっしゃい!いらっしゃい!新鮮な野菜だよ!」
「今日はボアとオークが手に入ったよ!買っていかないかい?」
「果物はどうだい?」
「毎度あり!」
「いやあ、これ以上はまけらんねえなぁ」
「兄さん、寄って行かないかい?」
商業ギルド裏の大噴水周りは、市場に入る前からそれはもう活気があったんだ!野菜の鮮度も結構いいし、肉屋の周りは独特の匂いはするけど、ベーコンやウィンナーもあるのが嬉しい!
それに穀物を売っている店で米も発見!やっぱり家畜用として売られていたけどね。小麦に大麦、大豆もあった。果物はよくわからないけど、全種類2個ずつ買ったし。
アイテムボックスも解禁にしてドンドン買っていたら、上客かと思われたのか、あちこちから寄ってくれと声はかかるし、売り子の人達と会話するのも楽しいし、かなりの時間を市場で過ごした。
あ、でも卵や牛乳、砂糖や塩は商業ギルド内でしか売ってなくて、結構な高額だったなあ。うん、これは早めに亜空間ワールドで複製しなきゃ。
そして布や生地を購入したり薬屋で薬草や調味料を購入して、服屋や雑貨屋という店を見て回った僕が気が付けば、時刻はもう昼過ぎ。
……今日はこのくらいにしておこうかな?
満足気に店からでる僕の前に、ガラの悪そうな男が二人近づいてきたんだ。
因みに、市場に来るに前にジュドに忠告されていたんだけど……
『大量買いは目立ちますし、マスターはいいカモにされ易そうに見えますから、常に移動の時は認識阻害魔法の展開と購入時は値切りをしっかりやって下さいね!』
コレに関してはジュドに感謝だよ。やっぱり平和ボケ日本人だからそんな厳重にしなくても、って思ったけどさ。忠告通り認識阻害魔法を使ってたんだ。
「あいつどこ行った?」
「クソッ!見失ったか!」
こんな感じでカツアゲ目的の男達やスリ目的の男女に狙われてたんだ。そう、女の子だからって気を許すのも駄目なんだなぁって思ったよ。はあ、やっといて良かった。
そして、今日のところは冒険者ギルドに戻り、僕の個室で亜空間ワールドを展開。
「ジュドー!お土産いっぱい買ってきた……よ……?」
「お帰りなさいませ、マスター」
カポカポと歩いてきたジュドの後ろには、もはや立派なお屋敷が完成していたんだ。しかも庭園と言ってもいいほど整えられた庭と玄関周り。
……もはや一人で住むには広すぎるって……
「うーわー……ジュド凝ったね……!」
「マスターに喜んで貰えるために頑張らせて頂きました」
「そっか、楽しかったんだね」
「そうとも言います」
僕もジュドの性格がわかってきたからね。思いっきり楽しんだって素直に言わない辺りがジュドだけど、有能だよなぁ。
製作者のジュドによると、書院造りまでの建物データしかなかったため、基本に忠実に造ったんだって。
書院造りって奥と表で用途が分かれているらしくて、基本生活するのは奥の寝室や台所で、表は来客用書院や遠侍っていう護衛の待機所があるらしい。
「ジュド……此処に侍さん居ないって……!」
「その通り使わずとも、活用方はマスターが決めていいんですよ?」
「あ、そっか。カスタマイズすれば良いか。……ん?って考えるとジュド?亜空間ワールドの文化レベルって上げる必要ある?」
「そうですね。1番わかり易い言い方をすると、その時代その時代に生まれた商品が生み出し易くなりますよ。それに、マスターの慣れ親しんだ品や文化は、時代と共に研鑽し改良し進化してきた商品達や文化です。
ですから、例えばただ座るだけのソファーではなく、座り心地のいいソファーを。生きるだけじゃなく便利で快適な生活文化を生み出す事が出来るようになるんです。その為にもレベルを上げる事を推奨します」
「うん、まあ……この空間は自重せずに造っていきたいし。やっぱり現代生活に戻りたいし、頑張るよ!で、どうすればランクアップするの?」
「この世界では魔石が1番いいでしょうね。という事で次は安土桃山時代を飛ばして江戸時代までとなると、魔石1万個お願いします」
「安土桃山時代飛ばすんだ……!それで1万かあ。依頼いっぱい達成させないとなぁ。で、頑張れば何が変わる?」
「マスターが喜ぶとなると……江戸に変わると醤油や味醂、鰹節の作成が可能になりますよ?」
「食べ物かよ!でも、醤油は欲しい!」
喜ぶ僕の様子に、ボソッと「……吉原文化は、まだマスターには早いですし」というジュド。聞こえているんだからな!そりゃ、……ちょっと気になるけどさ。
とにかく目標は決まった。うん、現代日本に近づかせる為に、魔石採取だな!その為にも、魔法も上手く組み合わせてやって行こう。
だってさ……トイレはボットントイレだし、トイレットペーパーは無いし、お風呂は無いし。
いや、蒸し風呂はジュドが作ってくれていたけど、やっぱりお風呂に入りたいじゃないか!
トイレもお風呂もクリーン魔法でなんとかなるけど、それだけじゃ物足りないんだもん。……この辺が贅沢な日本人だよなぁって思う。
という事で、今日の残りの時間でお風呂場製作だ!
「あ、マスター。お昼ご飯はなんです?」
ま、まあ……マイペースなジュドの言葉に思いっきり力が抜けたけどお腹も空いたし。先に屋台で仕入れたお肉食べよっかな。
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