第2話 ナビゲーター、その名はジュド

 ……とりあえずは、色々ナビゲーターに聞いてみるのが最善だろうなぁ。


 「ええと、ナビゲーター?」


 『スキルナンバー00ZESADOでございます』


 「スキルナンバー00Z……?」


 『スキルナンバー00、Z、E、S、A、D、O』


 「長いな!もっと短くならないの?」


 『ではジュドとお呼び下さい』


 「……初めからそっちを言ってくれよ」


 『マスターの記憶力を伸ばす為に必要と思われましたので』


 「………」


 この一癖も二癖もありそうなナビゲーターのジュドによると、俺の身体は13歳からやり直し。魔法は既に身体にインストール済みという事で、頭の中で思い描くだけでいいらしい。


 言語や文字の習得も済んでいるそうだから、現地人と会話も可能。ありがたいと言えばありがたい。


 けど、俺自身の存在は地球から消されているらしい。家族も友人も俺の記憶は消されている、と聞いた時は正直複雑だった。


 家族から心配される事は無くなったとはいえ、正直言って寂しいよなぁ……


 なんて俺が思っている事をジュドが読み取ったのか『私がこれからずっと一緒です』って言ってくれたんだけどさあ……お前声だけじゃん。


 そう言ってやったらジュドの奴『生き物を捕まえてきて下さい』って簡単に言って、俺を[亜空間ワールド]からポイッと外に出しやがった!


 「うおおおい!どう言う事だよ?」


 いきなり出されてシュンッと入り口を閉じられたら、何もない場所で思わず叫ぶのも仕方ないと思うよな?でもジュドの奴後からこう言ったんだ。


 『あ、マスターとは同期していますから、思念で会話出来ます。そのままでは一人言を言う危ない方ですよ?』


 『だーーー!もう!先に説明してから外に出せってぇ!』


 『[亜空間ワールド]は、無から生き物を作り出す事はできません。という事で、私の身体となる媒体を持ってきて頂かないと、マスターと一緒に行動出来ないじゃないですか』


 『なんで急にフランクな話し方に変わったし!…………わかった、なんでもいいんだな?』


 ふと、某有名小説のプニッとした丸い生き物なら捕まえられるか?と思っていたんだけど、ジュドは即座に読み取って否定してきた。


 『マスター、スライムは不可です。大きなモフモフを希望します』


 『ジュド……!此処に来たばかりの僕に、何期待しているんだ?っていうか、ここ安全な動物居るのか?』


 『スライムもどうかと思いますが……?話しを戻しますが、マスターの現在位置は辺境都市ヴェルダンの街道です。そうですね……あ、マスターそのままヴェルダンに向かって下さい。私に相応しい器を見つけました』


 『……本当にジュドの能力はどうなっているんだよ……?』


 『マスター、無駄に悩むとハゲますよ?』


 『僕はまだ13歳だっての!』


 ったく、もう。いきなりポンポン言われたって理解に苦しむんだって!


 ………認めたくないけど、おかげで寂しい気持ちも薄れたけどさ。


 それにまだまだ色々知らない事が多いってのに……『あ、道中で教えますから、さあ出発して下さい』だからぁ、考えを読むなって!


 『人間素直が1番ですよ、マスター』


 「あーもう!行くよ、行きますよ」


 『あ、既に怪しい人として思われてますね』


 どうにも人間臭いこのナビゲーターに言われて周りを見ると、声を出してしまったものだから、通りすがりの人から奇妙な目で見られてしまっていた。


 ……うん、ジュドとの会話中は気をつけよう。


 そんな感じで歩き出したのはいいんだけど、歩き出してすぐピタッと止まってしまう僕。なんせ靴が大きくて、カポカポいって歩き辛いんだ。


 面接の為に革靴履いてきたからなぁ。そう思いながら紐をギュッと縛ってもまだブカブカ。


 13の僕は157cmだったからなぁ。一気に身長伸びたのは高校入ってからだったから、サイズが違うのも当然か。


 靴をプラプラさせる僕の様子に、何か諦めたようにジュドが言い出したんだ。


 『はあ……仕方ありません。血統にこだわっていられませんね。マスター、左横の林に入って下さい』


 いやいや、ジュドってスキルのナビゲーターだよなぁ?なんでため息ついてんだ?というか、この状態で入るの?


 『ええ?歩き辛いのに林に入るのはなぁ……』


 乗り気ではない僕がちょっと嫌そうに告げても、すかさずジュドの正論が入る。


 『何の為の全属性です?街道から見えない位置から浮遊魔法で移動しますよ?』


 『おお!そうだった!その手があったか!』


 『でもそのままじゃ目立ちますから、林の奥の洞窟へ行きますよ』


 ん?洞窟?


 ちょっと疑問に思ったけど、ジュドに急かされて何とか街道から離れた場所まで歩いて行った僕。立ち止まって、頭の中で身体が浮くイメージを持つと……


 「おお!浮いてる!」


 ふわっと身体が宙に浮き上がり、思わず興奮して叫んでしまった。……仕方ないだろう?だって初魔法だし、成功しちゃったんだから。


 「ふおおおお!面白い!」


 そのまま興奮した僕が辺りを飛び回っていたら、揶揄い口調のジュドから指示がきたんだ。


 『ホラホラ、マスター。そろそろ行きますよ?』


 『……なんか笑われている気がするけど……わかった。どっちに行けばいい?』


 『笑ってませんて。崖が見えるまで真っ直ぐ進んで下さい』


 『ん、了解』


 コツを掴みスピードも出せるようになった僕が木々を避けながら真っ直ぐ進むと、比較的早く崖が見えてきたんだ。ここまで来ると人もいないだろうし、僕は声を出してジュドに聞く。


 「で、ここからどうするんだ?」


 『左斜め上に洞窟があります。そこの中に入って下さい』


 指示通りの方向へ向かうと、崖にぽっかり空いた洞窟の中には……


 「……でっか……!って、コレ……生きてる?」


 入り口から入る光の奥に横たわっていたのは、凡そ2mは超えるであろう縞模様の2本角のヤギのような生き物。


 腹を見てみると微かに上下には動いているから、生きてはいるようだったけど……見るからに衰弱している。


 「ジュド?……コイツを探していたの?」


 『そうです。まずは、亜空間ワールドに連れて行きましょう』


 僕が聞くと同時にヴァンッと現れた亜空間ワールドへの入り口。ジュドに言われた僕は、衰弱しているヤギ?に触れて浮遊させながら亜空間ワールドに戻って行ったんだけど……


 因みに、チラッと鑑定したコイツの正体はコレ。



 【アレスタックス[閃光]】

 2本の大きな角と縞模様の毛皮が特徴のAランク魔獣。見た目は地球でいうヤギ科の大型アイベックスともいえる。音速で移動し、雷魔法と風魔法での同時攻撃が特徴の種族。[閃光]は種族の長とも言える個体。現在、老衰の為衰弱状態。



 ……えっと、ジュドさん?さっき仕方ないって言ってませんでしたっけ?


 仕方ないで探した個体がAランクなら、ヴェルダン都市に見つけた個体って一体なんですか……?


 そもそも老衰の個体なんですけど……?

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