異世界で作ろう!夢の快適空間in亜空間ワールド
風と空
第1話 プロローグ
世界には、並行して存在する異世界が数多く存在する。
そんな並行が神のちょっとした油断で、衝突が起きたーーー
それが地球と異世界フェンゼルが邂逅した瞬間だった。
だが、あり得ない事態になる前に、神は自らの力の一部を介入させて事態を収束させた。
並行する二つの世界は、何も変わらない筈だった。
ただ、そこで生まれた一瞬の歪みに巻き込まれた唯一の存在がいた事を除いてーーー
◇
《……該当者確認……サーチ開始……認証終了……起動します》
……なに?頭の中に響くこの声は……?
不意に聞こえてきた不思議な音声に気を取られていると、ドサッと背中に衝撃が走った。
「………っいった……!なんだったんだ、あの光……!?」
って、誰この声?
子供のような声が聞こえてきて、思わず周りを見渡すが周りに人影は無い。
「どうなっているんだ……?え、待って……この声、僕、か?」
明らかに僕の思考を語るこの声は、どうやら僕自身から発せられていたらしい。
しかも、着ていたスーツがブカブカになっている。これは身体が小さくなったのか?そう思って手を見ると、明らかに小さくなっている。
ともかくこのままじゃ落ち着かないから、上着を脱いでシャツを出してベルトを締めズボンの裾をまくっておく。
「ヨシ!身だしなみOK!一先ず、どう考えてもわからない僕の事は置いといて、現状整理優先だな。で、ここは……何処、だ?」
周りに目を向けると見た事の無い景色。ただ、自分が立っているところは、人工的に切り開かれた場所だという事だけはわかる。
ここってもしかして、道……?
踏み固められた土に残る2本の轍の後……でも、自転車のタイヤの跡にしてはおかしいんだよなぁ?
……まあ、状況が一向に掴めないけど、まずは自己紹介しておこうと思う。
僕こと冴木淘汰(サエキトウタ)は32歳で、現在就活中という名の無職。
過酷な仕事で身体を壊したものの即座に職場が動いてくれたおかげで、仕事を辞めてすぐに職安から給金が発生したのは良いけれど……
辞めてからの2ヶ月は、職安に行く以外ほぼ休んでいたんだけどさ。最近ようやく本格的に動けるようになって、実は今日面接に行く筈だったんだ。
……だというのに、何故僕はこんなところに立っているんだろう?
ん?遠くから音が聞こえてくる。これは避けた方がいいかな。
そう思って道の端に避けて立っていると……
現れたのはなんと馬車!しかもゲームの世界かって言う服装をしている人達が馬車の周りを固めていたんだ……!更に、通り過ぎる人の髪の色が、あり得ない程鮮やかだったりするのは……?
駄目だ駄目だ……!混乱して全く理解できない。
落ち着けーーー落ち着けーーー!今こそ深呼吸だ、トータ!思いっきり息を吸ってぇぇぇ……吐け!
「すううううううう、はあああああああ……!」
ヨシ!まずは状況確認だ。
僕自身、何故か小さくなったが身体は動く……!そして、どうやら推測するに、ここは現代日本じゃ無い。
……いわゆるコレは異世界ってヤツ……か?
ここしばらくの僕の愛読書はネット小説だったから、つい思考がそっちに行ってしまう。久しぶりに読んだけど、アレはハマったなぁ。
いかんいかん、話が横にそれてしまった。ええっと、それよりも。もし、そうであるなら……次に試したくなるのはコレだろう。
「ステータス……(ボソッ)」
恐る恐る言ってみるとヴァン……!と音と共に本当に空中に出現したんだよ!ステータスボードが!!
「おおおおおおっ!……って、コレって……!?」
ツッコミたい事はいっぱいあるけど、とりあえず見てもらった方が早いだろうなぁ。僕のステータスは、どうやらコレらしい。
トウタ サエキ 13 男性
HP 250
MP 100,000
スキル 全属性魔法 亜空間ワールド
称号 不運な異世界人
加護 創造神のお詫び(手紙有り)
……うん、めちゃくちゃ安直なステータスが来た……!というか、色々あるけど1番気になるのは手紙だよなぁ。
とはいえ、ここは異世界決定かぁ……
しかも、称号が不運な異世界人って……泣ける……!
いやいやまずは確認、確認だ!こうなってしまったものは悲観していたって始まらない!もう、僕は前を向くって決めて面接に出たんだ!
そう前向きに気持ちを鼓舞するも、現状が安全とは言えない事は変わりない。とすると、安全な場所を見つけてから手紙をじっくりみたいよなぁ。
全属性魔法があるなら、結界だってできるだろうけど……そもそもこの世界の普通がわからない。
だって、下手に能力を展開して、ラノベあるあるの貴族に目をつけられるなんて嫌だし。
かといって、この世界が日本みたいに平和とは限らない。なら、もう一つの確かめたいコレを試してみるのも有りか。
「えーと……よくあるラノベでは、コレをタップすると良いんだよな……?」
不安の為か、つい声に出して確認してしまう僕。そして[亜空間ワールド]をタップすると……
シュンッ……と音を立てて現れた長方形の入り口。向こう側は真っ白で何も無いけど、人が存在できる空間だというのは何故か理解できた。
「うん、迷ってたって始まらない……!僕のスキルだっていうんだ!死にはしないだろ……!」
覚悟を決めて足を踏み出し中へと入ると、全身が入った時点で真後ろでシュンッと入り口が消えてしまった⁉︎
「えっ!ちょっとっ!マジで?!」
不意に入り口が消えた事によって、慌ててしまった僕。だって万が一だけど、出れないって事だってあるかもしれないし!
『スキャン開始……元素多数確認……展開します……』
なんて焦っている僕の全体を、何処からか聞こえて来た声と共に現れた光の線が行き巡ると……
ザアア……!と音と共に真っ白な空間が、青空と草原に変わりだしたんだ!!
「ハ?」
あり得ない事の連続に、思わず地面に尻餅をついてしまった僕。ええっと……………なんでさっきまで何もなかったのに、土や草がある訳?しかも雲や風まである……?
脱力して頭の上に疑問符が何個も浮かび上がる僕に対し、なんと!先程から聞こえてきていた声が僕に語りかけてきたんだ!
『お待ちしておりました。マスター・トウタサエキ。私はスキルナンバー00ZESADO。この[亜空間ワールド]のナビゲーターです』
「ナビゲーターだって?!……じゃあ、なんでも質問に答える事はできる⁉︎」
『可能です。ですが、まずはマスター・トウタサエキには手紙を読む事を推奨いたします』
そう告げられた俺の手元にポンッと現れた金色の封筒。ともかくコレを読めば良いのか、と封筒を開けると、入っていたのは二つ折りにされた金色の便箋。そこにはこう書かれていたんだ。
『親愛なる 冴木淘汰様
まずはお詫びを申し上げます。この度の出来事は、並行する異空間同士の衝突によって出来た歪みが原因です。
これは一瞬の事で私の気の緩みにより、その場に居合わせてしまった冴木淘汰様を、地球よりこの世界フェンゼルに連れて来ざるをえませんでした。
異空間衝突に巻き込まれた結果、佐伯淘汰様の肉体は損傷し、急遽身体を若返らせ、この世界に対応させる身体へと変換させて頂きました。その為大変申し訳ありませんが、地球への帰還は不可能となりました事をご了承を下さい。
お詫びとこれからの冴木淘汰様の生活の為に、以下のものをご用意させて頂きました。
1・若返り年齢は13歳(フェンゼルでは15歳から大人とみなされます)
2・全属性魔法と魔力永久成長型(フェンゼルでは全属性は貴重です。魔力も一定以上になったら上がり辛いのが通常です)
3・亜空間ワールド(コレこそが衝突で出来た超空間です。制約はございますが、冴木淘汰様の好みに成長できます)
4・現地通貨(冴木淘汰様のご通帳に記載されていた金額分を換金させて頂きました)
5・スキルナビゲーター(以下疑問はこちらにお尋ね下さい)
尚、この手紙は異例の処置として送らせて頂いておりますので、読後1時間後に消滅致します。本来、神はフェンゼル世界に不介入が鉄則の為、このような形で大変申し訳ございませんが、お詫びとさせて頂きます。 創造神』
………うーん、コレはまたなんとも言いがたい。
巻き込まれて怒ればいいのか、これだけ凄い備えに感謝をすれば良いのか……?
……とりあえずは、ナビゲーターに色々聞いて見るのが最善だろうなぁ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。