平均台

おっとっと、ぐらぐら。


両手を広げ、バランスをとる。


少しでも気を抜くと落ちそうだ。


落ちるかも。ここまで来て落ちたらどうしよう。


そう思うと、膝が笑えてくる。


酒を飲んだり、性衝動に魔が差したり、生きるのが面倒くさくなってくると、ぐるぐると視界が回る。


中には横からケラケラ笑って僕が落ちてくるのを待ってる奴までいる。


僕は負けない。そんなことに負けない。しっかりとゴールを見据え、精一杯バランスをとって進むんだ。


あれ?この平均台はどこまで続くんだ?


平均台に上がる時はゴールなんてすぐそこに見えていた。


行き着く先に僕を受け止めてくれる先生もお母さんもお父さんもいない。あるのはただ虚しく続く平均台。


視界がぐるぐると回り始める。


右手が下がると自動的に左手は上がる。


間に合わない。


崩れた姿勢のまま僕は考える。


そうだった。足元を見て生きなさいって言われたんだった。

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