第2話 山小屋
「ここだよ」
開けた場所に出ると、雲一つない
(すごい……)
人が出入りしないはずの
また古びた様子もない。屋根には傍にある
だが、疑問がある。人が出入りしないこの場所で、誰がこの小屋の手入れをしているというのだろう。
(……考えるのは、止めよう)
「妖怪が出る」と
「ここで少し体を
「……はい」
時子に言われ充はうなずくと、その場で
「……」
日の傾き具合を見る限り、ここまで来るのに半時(一時間)くらいかかっただろうか。山道は、急な斜面もあまりなかったのでそれほど大変ではなかったが、汗はしっかりとかいている。
充は
それとも一刻を争うような状況なのだろうか。いや、そうであるなら
「じゃあ、行きましょうか」
充は義母の柔らかな声で、それまで巡らせていた思考を一旦やめる。汗を拭き終えた義母は引き締まった顔をして息子を見ていた。仕事をするときの義母は、いつもの柔和さが引っ込み、どこにあったのだろうかと思うような鋭さが表に出る。
それを見ていたら、仕事だけはきちんと終わらせて早く下山できるようにしよう、と充は思うのだった。
「そうですね。早くしましょう」
うなずくと、傍で聞いていた茜が「開けるよ」といって山小屋の引戸に手をかけていた。
(あれ……?)
充は茜を見て目を見開く。茜の姿に、最初に見たときの
(まさか……ね)
そうだ。まさか妖ではあるまい——そう思ったときだった。
「何かあればあたしが盾になるけど、念のため二人も気を付けて」と言ってから、彼女は引戸を開けた。
—— 何かあれば、あたしが盾になる。
茜は確かにそう言った。
「何かあれば」ということは、この中に危険があるということだろう。充は生唾を飲み込んで、何が起こるか分からない事態に対し、心だけ備える。武術はからっきしなので、心だけ構えるしかないのだ。
「
茜が一歩、二歩と山小屋の中に入る。恐る恐る彼女に続いていくと、暗がりの中から獣が
(どこから聞こえてくるんだろう……?)
そう思って視線を巡らせたとき、左腕に何かが当たる。
「ひっ」
情けない声を出し
「
「は……はい」
早とちりしたことに
「
不思議に思って声を掛けると、時子は視線をそのままに、右手の人差し指を
充たちが動きを止めてから
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