第15話 防災ステーションを打ち立てる

クリスマスは等しく平和が巡ってくるはずだったが、去年の日本は、ぼくがクリスマス震災を幻視するほど、危険であった。これは不幸の予言ではなくて、防災の議論を戦わせるための台紙にしたいという狙いで書いている。

実際に今年は、元旦から石川県で、能登地震が起きて、そののち、9月に豪雨に見舞われて、断水と停電が相次ぎ、むしろ、地震よりも手も足もでなかった。なぜなら、安全保障上で自衛隊も、メガクエイク型の震災でないと出動できないうえに、インテリジェンスのカードも動き様がなかった。それはお盆頃から動き始めた宰相選びに明け暮れたわけではなくて、為す術がないまま、衆院選に進む他、日本人が舵取りできる針路など無いように思われた。

しかし、防災の分析を一覧させて、概観すると、長期ビジョンであれば対抗措置が生まれる余地はあるように感じられた。

たとえば、産学連携によって、全国の公立学校に給食センターおよび給食室があって、予想以上に地方選が盛り上がった結果、学校に給食制度が普及していった。これには、貧困の対策もあって、ヤル気になれば、全国で「炊き出し派遣村」を野営することも不可能ではない。

これを防災に活かすわけである。

ここまでは、インテリジェンス・オフィサーであれば、そこそこ分析可能な範囲に収まっているが、ぼくが考える防災立国は、もっと大規模なものだ。

物資が足りると、必ず、電源と情報の確保が最優先になってくる。そして、ガス漏れで火災が起きないように、消防とも連絡するべきで、阪神淡路大震災の神戸や東北の気仙沼では、火の海になってしまった。これは各家庭のスプリンクラーで対応できるかどうかは、疑問である。そもそも、水道管が破裂していて、火災の被害は、戦争の焼け跡のように凄惨であった。死者が多かったのは、これに起因してもいた。或いは、断水の影響で、消火活動に影響があり、訓練と話が異なって、想定外の事態を目の当たりにしていた、等々。

ぼくとしては、まず、この文明圏では、電力さえ供給されれば、断水も迂回してパワーサプライできると思っている。バスタブに水を貯めておくのも、各家庭の努力としては涙ぐむものがあるけれど、地震が起これば、ダムのような水力発電所をメインにして各地域の貯水池に行き渡らせることができない。その結果、停電もあって断水に至るのであり、自衛隊が水汲みに奔走するしかなくなってくる。従来では、原発事故がリスクを負っていたが、ぼくは、水系を読んでいくと、むしろ、水力発電所のほうに断水と停電の双方がクロスオーバーしていると分析できる。

日本をグーグルのように、マルチ・スーパーダムに再設計することで、農業用水も確保できると考えられる。スーパーダムは、人工の琵琶湖のようなものだ。

そして、電力が得られれば、情報が入手できるので、官邸で被災状況を掌握でき、防災ラジオなどを通じて、自治体に指示を出すことができる。国民に不信感を抱かせないためにも、内閣府は、対策本部を早急に立ち上げ、官房長官の会見を開くべきである。ここで、自衛隊の出動に専門家が関わるように手配すべきなのだ。

ところが、ぼくの防災立国は、これでも不安を払拭できないと考えていて、概略を手短に書くことにする。それは、政府の防災基本計画を読んでも、一向に手付かずになっている節があって、相当な編集力と構想力が求められるからだ。

ぼくは、各家庭にバッテリーカー、即ち、EVがあれば、蓄電池の機能を宿すので、「車中泊」(キャンプ)の他にも強力な武器になると読んでいる。これだけでも、竹槍で体育館に集合して、感染症の発生源になることは避けられ、有効な対策だと思う。籠城戦に持ち込めるわけなのだ。しかし、われわれ日本人に必要なのは、地域に点在するロケーションであるべきで、それがEV充電スタンドであると考えられるのだ。この施設に、ローカル鉄道に加えて、各地にある高圧線を水系の分析と合わせて、水力発電所が牛耳っていれば、日本の防災は盤石だと思っている。

従来は、防災ステーションといえば、公立学校であり、赤十字の義援金に頼るだけだったが、それを活用したまま、各家庭のバッテリーカー、各地域のEV充電スタンド、それに水力発電所による迂回送電によって、早期に被災地をローンチすることは十分できるはずである。


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