第13話 休耕期に、ポスト・データを培う

年末の多忙な時期に意味深な小説を掲載して、申し訳なく思っているが、手加減してイシューを出し絞っているということではなく、英語講座で書いている連載の方向性が見えないだけだ。

田んぼディレクターにとって、長年、世界のトレンドというものが疑問だったが、それが最近、ITビジネスと交差して読めるようになってきた。

たとえば、クリエイティブ・ディレクターが、主に広告畑の垣根を割り込んでいった。そして、音楽や出版のプロデューサーにも影響を与えてきたが、本当は、もう少し、大きな流れに入っている。それがITビジネスだというのだ。

そもそも、「アンガーマネジメント」という概念が正しく理解されていないのは、正直、機会の損失だと考えている。なぜなら、「いやぁ、監督と怒鳴り合いだったんですよねぇ」みたいな事柄は、情報の伝わり方には不必要だからだ。

これを踏まえた上で申し上げると、「アイスブレイク」というコンセプトも、基本的には、ユーモラスな現場というイメージだろうけれど、まちがいだ。なぜなら、命の取り合いになりそうな真剣勝負の場でも、空気感が和やかになることで起きる心的な交流によって、情報の伝播がスムーズになり、仕事が捗るという側面が発見されてきたからだ。

国際会議では、コーヒーブレイクで話題が弾んだほうが、交渉力が高まるというのは、「アイスブレイク」において、心温まるエピソードである。

矛盾するようだが、その上で結論から申せば、ポスト・データは、グラマーである。それはそれとして、丁寧に文章に起こしていくので、ノンフィクションで遊んでいる訳はない。順を追って説明していく。

田んぼディレクターにとって、今の時点で求められるのは、ビッグデータの効果的な活用であって、主に気象データにおいて顕著である。

天候不順といっても、降水量の予測にはスパコンが用いられているわけで、台風の進路を予報する際には、主に気象庁で、人工衛星の画像を気象予報士が分析した結果がリリースされ、マスコミに伝達される。

これらはビッグデータの為せる業であって、田んぼディレクターにとって、明日の天気をチェックすることは、体組成計に乗るより重要な仕事となった。しかし、当たらずも遠からずという場面があるのは、当たり前であり、週間予報と農作業のスケジュールをダブルチェックするには、手帳も欠かせない。

ぼくは、その意味では、まだ、未熟なのである。

ところで、防災監と共に重要になるのが、気象庁の長官人事であって、むしろ、防災省の設立は、国土の安全と共に、農業の被害にとってもカナメである。縦割り行政を打破するには、横串となる防災のキーコンセプトが、地震が多発する時節にとって、歳時記のように防災立国と共に防災士の運命を決定づける。

たとえば、能登の復興にとっても、防災予算が足りないことが、われわれ日本人にとっての有事を演出している。

このようにビッグデータ・ディレクションが、農業にも前面に現れてきたのは、社会制度のデジタル化が進んだためである。また、AIを用いたディープラーニングによって、画像(イメージピクチャ)の検索が取り入れられている。

まるで犯罪捜査のように、画像の解析を元にすれば、新しいインテリジェンスが得られるわけだ。だとすれば、行方不明になった被害者や、指名手配された容疑者を探し当てるには、防犯カメラの映像をスライスして、画像を検索すればいい。

これは、医療にも応用でき、胃カメラを飲むために全身麻酔をするけれど、造影剤のバリウムと共に、使い捨てカメラの付いたナノマシンを飲むことで、ディープラーニング技術の適用によって、病気の早期発見、早期治療が加速すると思う。

ところで、カーボンニュートラルや脱炭素の流れから読むと、SDGsの延長上に現れたとしか思えない「エコトラック」(EcoTrack)というのは、農業の側面からは、バイオマス発電とは、単なる火力発電所でしかない事実を物語っている。

農業の資材を燃やすのは馬鹿げているので、元にあった田んぼに返すのが、もっとも適した利用法である。

ぼくの地元(近所より遠いけれど自転車で行ける範囲)では、ゴミの分別で可燃ゴミについては、焼却炉で燃やすわけだけれど、その際に生じた電力は、隣りにある温水プールに使用され、スポーツジムやエアロビクスなどにも奨励されている。

こうした事実を背景にすると、ダイオキシンが発生した際には、個人的に、科学的な根拠は薄弱ではあるけれど、プラスチックごみの分別に意識が低かった頃の名残であると分析できるのだ。

バイオベンチャーなど、誰も研究費を無駄遣いするだけで、真面目に働いてなかったと結論付けるのは、間違いである。たとえば、身近なパナソニックの食洗器にも、「バイオ除菌」のランプが点灯している。しつこい汚れを落とすのにも、一役買っているので、重宝する機能だ。これにはエコナビと共に、節水の効果があるので、脱炭素の文脈を確実に捉えている。

この食洗器は、バイオ家電でもあったわけだ。

以上のように、ビッグデータやディープラーニング、それに書き切れなかったけれど、ドローンによる農薬の散布といったことで、農業にもITビジネスの余波が訪れている。また、バイオテクノロジーを議論する際に、コンピュータのエキスを注ぎ込む準備が進んでいることがわかる。そして、情報やデータは、零細農家のような事業主をエンパワーメントするけれど、電話やスマホは、これから、もっと画期的なスマート農業の進化として考えられていく。しかし、われわれは、ポスト・データであるグラマーについて、もっとよく研究しなければならない。

言語の文字列でグラマーといえば、そのまま文法を指すが、われわれ日本人は、英語圏に住む人々にとって外国人であり、日本語と逆の状況が生じている。従って、彼らの特殊な状況に対して、まっさきに気付くのは、むしろ、私たちなのである。そのうええで、日本語圏の社会的なコンテキストを読み込むことと、英語圏のグラマーによく通じることは、われわれの仕事を充実させ、イノベーションから立ち遅れないように生存競争を取り図っていくのに強力な武器となるであろう。また、或いは、英語のグラマーから学べるのは、単なるサイエンスでなく、ライフサイエンスのような付加価値の高い情報が多く埋蔵しており、逃さない手はない。


※この連載では、あまり大別しても仕方がないけれど、基本的に理工系の内容を扱っていきます。



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