第12話 中小企業メーカーの定跡

中小企業にとって、そもそも、有能な人材が集まって来ないという悩みがあるが、本当にそうだろうか?

たとえば、中小企業にも見本市があって、その世界的な拡大版が「万国博」というものである。地元にも唯一、出展すると聞いて、原案を見たことがあるが、展示そのものが薄すぎて、魅力に欠けていた。

ぼくは、製造業の町工場で働いたことがあって、期間的には短かったので、稀少な経験になったが、まず、地場産業の戦略が、ISOから変わっていないのだ。

歯ブラシ工場であれば、地元の歯科医師会と連携して、デンタルクリニックと組み合わせれば、営業部門が縮小しても、業務を維持できると分析している。これを自治体に提出して、大阪万博に展示すれば、「健康」というテーマにも直結したものになる。さらに、思い浮かぶ改革案としては、医療書の発行で行政手続きを簡素にするといったことなどが考えられる。

これは「医工連携」といって、むかしから政府が発破をかけていたが、形式上のアイディアなので、誰も見向きもしなかった。

そして、「地域医療」の停滞は、この辺りから模索できるわけなのだ。そこで、市民病院に連絡が取れるようにしないと、肝心な時に、救急搬送(ER)が、税金を納めていない隣りの町という命取りの失政が続くことにもなる。

ここから、産官学の連携に持ち込むためには、自治体のコミットも必要になっていくと思うわけで、それなら、地方債は、国家が責任をもって返却するのが道義上の義務である。ありきたりな産学連携が、爆発力を欠いているのは、そのためだ。

さらには、医療スタッフを増やすためには、地域の「私大戦略」をアソシエートしていって、医学部の卒業生が、地域医療に流れ込むようにしないと地方は消滅してしまう。これを成功させれば、無医村の問題や、葬式や墓が消滅する危機もクローズできると考えられる。

少子高齢化が進む人口減少社会にとって、病院は、生命線なのだ。

たとえば、関西圏であれば、関関同立よりも、ぼくの近所に近畿大学が立地していて、夜学から出発した総合大学だったけれど、実は、医学部の設立によって、名門大学に仲間入りを果たした。ちなみに、通信制の大学という側面もあって、通信教育部が存在している。流石、夜学から出発しただけのことはある。

従って、難関大学よりもブランドが下がった私立大学(新設など)は、医学部を設立することで、優秀な生徒を募集することが容易になる。

また、近畿大学は、マグロの養殖だけでなく、プレイステーションの父である久夛良木健と、iモードの発起人だった夏野剛が組んで、工学部に優秀な生徒が集まる思惑である。その前は、スポーツで、オリンピック選手を輩出することにも、精を出して、ボクシングの赤井英和や水泳の山本貴司といった才能を並べて、コーチングメソッドを蓄積した。

今度は「ターミナル戦略」を考えて生きる時代で、近畿大学は近鉄の沿線に立地されており、多くの進学校も同じ戦略であった。電車通学はストレスではあるが、大学生の場合はラッシュアワーを避けて、登校する姿も見受けられる。

ところで、先日、南海電鉄が、通天閣を買収したニュースで、関西空港に接続した南海線が、新今宮の周辺にある新世界のランドマークと合体していくことで、インバウンド景気が見込めるといったシナジーが考えられる。但し、通天閣の防災にとっても責任は重大で、消防など自治体との連携がないと避難もままならない。そもそも、通天閣の「ビリケンさん」を触りに行ったり、フォトスポットとしても面白いと思うけれど、近鉄のあべのハルカスに加圧されていて、防災のリスクをケアしながら観光名所に仕立て上げるには、相応の経営力が問われる。

しかし、関西空港は大きなアドバンテージだと思うわけで、JRの西九条に乗り継げば、ユニバーサルスタジオに遊びに行けて、ホグワーツエリアに加えて、先日も任天堂の「ドンキーコング・カントリー」エリアがオープンしたばかりだ。

任天堂は、京都に通じており、大阪と組んで世界と勝負してゆくポテンシャルは、計り知れない。

カクヨムも同じで、「はてな」の本社は京都にあり、ニンテンドーと組んだ際には、上手く行かなかったけれど、これからはSNSの時代ではなく、圧倒的にMMOのサーバー・テクノロジーが問われる。

事業提携するかどうかは兎も角、目と鼻の先なので、基本的な経営陣の付き合いくらいは度々あって、ディナー(ランチでもいいけれど)を一緒に食べるくらいのフレンドシップは当然である。

中小企業にとって、人脈は太い方がいいと思うわけなのだ。



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