第8話 トランプ相場とウォールストリート

合弁会社にとっては、技術力が蓄積される場合、技術ユニコーンの合弁化が起きるので、上場を目指した日本経済の倍加を目論める。まさに合弁の花が咲くわけである。そこで、その花弁というのは、苗があり、株があって、株式会社の比喩の通りに、株式の持ち合わせが焦点になってくる。

ウェブニュースの夕刊を読んでいると、新日鉄がUSスチールを買収することに、トランプ大統領が反対の意を表明して、ビジネスにコミットする姿勢と、バブル期のエンパイアステートビルの所有が二重写しになった。

「国家とは鉄なり」とよくいうけれど、ここでもM&Aが製鉄メジャーを目指して、日米が鎬を削っているのである。持ち株会社の子会社にすると説得しても、アメリカの機嫌を損ねるのは当然だ。

そして、国家は、産業革命の3要素である化石燃料とゴムと鉄鉱石が不可欠だと、出口治明は書いている。日本が鉄を得る、要諦を抑えることは、アメリカが溶鉱炉を失地するという側面を忘れてはならない。つまり、兵器産業は悪だといっても、鉄鉱のカードを失えば、アメリカだけで立ち行かなくなる可能性も出て来る。ウクライナ戦争と大きく関わっているわけなのだ。

ところが、単純には比較できないものの、東芝が、ウエスチングハウスというアメリカの原発企業を買収して経営破綻させたことが思い出される。或いは、日経BPがイギリスのフィナンシャルタイムズ紙を買収しても、未だに新聞界は苦境にあることを物語ってもいる。また逆の事例としては、ソフトバンクがボーダフォンの日本法人を呑み込んだときの快挙は、孫正義の伝説に数えられる。

このように弱肉強食の経済界で、買収される企業のネタは、ハゲタカたちの格好の餌食となってきた。

ぼくは外交カードの動きは、既に出来ないので、その件は放棄しているが、小説家として活動を始めることになった。あまり変わらないような気もするけれど、日本のシナリオを描くという基本方針はそのままである。

そのうえで、アメリカの方角を知ることは、イロハのイであって、にわかにトランプ大統領とウォールストリートの関係が、ずっと気になってきた。ちなみに、イロハのロは、中国経済だろう。その次に、ヨーロッパ経済の動向である。

ダウは最高値から反発したものの、ハイテク株が中心のナスダックは最高値を付け、アメリカ経済史上、基本的に絶好調である。しかし、景況感は、それほど芳しくなく、日米ともに厭戦ムードが曇り空のように覆っている。

日本経済は、半導体ではTSMCの後塵を拝していて、シャープが液晶事業から撤退を決断、太陽光パネルでも同じように失態を繰り返し、リチウムイオン電池でも世界シェアは、テスラの4周遅れみたいな状況と、なぜか、技術力は高いのに負け続けているわけです。若い頃、政商だったイーロン・マスクさんに目の仇にされていたような情勢が窺えます。

これだけ列挙してみると、シャープが台風の目になって、世界市場で独り負けを演じていたという印象が拭えない。実は、ぼく自身も、シャープの城下町に住んでいて、台湾を始め、アジアの突風に吹き飛ばされながら暮らしています。

日経ビジネスを購読していたときに、グラフや数字で世界市場を伝えるのですけれど、ぼくは、宙に浮いた情報が多いと考えていました。というのは、国内市場のことは、取材力が行き届いていて、写真もあって、工場長のインタビューも、目下、厳しいと共感が得られるわけですが、海外の分析が弱すぎて、怖いんですね。

日本は、これまで、製造業を中心に、働き方を柔軟に変えて、建設業に応用してきて素晴らしいと思います。流通システムに突貫工事の旗を立てるのも構わないのですけれど、上滑りのビジネスに鉄槌が下るのも遅かれ早かれで、松本健一さんじゃないけれど、「日本の失敗」が思い浮かびます。

なぜなら、領土を基本とした、国土の考え方、要するに不動産が見えてないからです。それが建設業で多少、新しくなって喜んでいる内は良いですけれど、本当は、防災住宅が普及しなければなりません。不動産の弱点は、災害だけですから、住宅ローンは資本主義のインフレが前提である、という分析よりも、むしろ、地方が栄えるためには、防災を徹底することです。

何度も裏で書いてますけれど、たとえば、洪水で床上浸水するのであれば、高床式の住宅を設計しなければなりません。

危機に強い経済が、砂上の楼閣であってはならないのは、まず、不動産を動かすことでなくて、自分で国土そのものを考えることであり、日本は災害大国なのだと誰でも分かっている矛盾を引き取ることから始まります。

阿倍野ハルカスであれ、麻布台ヒルズであれ、大阪のランドマーク「丸ビル」の建て替えであれ、全部、同じであって、高層ビルがニョキニョキ伸びてくるのは、砂上の楼閣に過ぎません。

ちなみに、ぼくは低層マンションの家賃収入で食べていますが、防災と防犯を基準としたコンセプトで、女性ユーザーをターゲットにしてみたのですが、ファミリー層に訴求力が高く、満室となっています。

闇バイトの被害に遭わないように、最初から民間の警備会社と契約するという女性が安心して暮らせるプランなのですが、実際は、家族連れが多いです。

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