第6話 日本経済の生命線
つい先日、今年9月にアメリカのFRBが利下げを表明して、私は、あれっと拍子抜けを経験した。政策金利を上げることで、貸し付けた銀行から融資を巻き上げて、シリコンバレー銀や、クレディスイス銀など、次々と金融機関を潰してきたのに、FRBの金利政策の転向は、何か大きな前兆のようにも思えた。
これまで、米連銀の利上げと共に、日銀の利上げを読み解くときに、日米の共同歩調だとして日本は、必死に、北米戦略を維持してきた。
北米戦略の基本的なロジックは、円安ドル高の時代に戻して、日本企業が、メジャーリーグで活躍する野球選手のように、ビジネスマンも北米に舵を切り、西側社会の一員として資本主義を営むことを指していた。
だから、大谷翔平のニュースは売れに売れたのである。
その背景には、日経平均(上場企業から選び抜かれた225銘柄の動向)が、4万円を前後して、株高を維持してきたからだった。それは、為替で円の暴落を通じて、物価高に苦しみ抜いた裏返しでもあった。
なぜなら、ノスタルジックな円安ドル高に引き戻すということは、日銀の機能的な回復が必須であったからだ。ポスト・コロナを睨んだ動きは、大企業を中心に債権を中心にして金融市場をリーディングするという1点にフォーカスされていた。
戦後に起きた日本経済の復活は、家電産業からは松下幸之助、自動車産業からは本田宗一郎という風に、名経営者を列挙してきて、ゲーム産業からも山内溥を輩出して、ポケットモンスターを皮切りに、シアトル・マリナーズのスポンサーに名を連ねることで、イチロー戦略を成功させてきた。その名残もあって、大谷翔平が世に現れたわけなのだ。
また、京セラの創業者だった稲盛和夫も同じくして、アメーバ経営で、無借金経営を会計的にシステム化して、銀行の直接融資を批判してもいた。これは、日本人が銀行に預金をして、その銀行が企業に貸し付けるので、間接金融とも呼ばれている。やや面倒な用語でもあった。
こうした経営者は、銀行を、基本的に信用していなかったともいうべきだ。その背景には、日銀の動きが鈍いという批判が隠されている。
そもそも、なぜ、日本の経営者が、アイディアをベースに事業を回すかというと、その背景には、間違いなく、エネルギーの存在があった。日本には資源がなくて、戦争にも負けたのだから、知恵を振り絞るのがビジネスである、というくらいの意味合いである。それで、不景気になれば、銀行が貸し付けを回収するのを嫌う経営者が多かったのである。その為、自前の資本金に拘っていた。
ところが、最近、ニュースが流行してきて、中曽根の頃に、世界各国のトップリーダーが同時に現れたことも、若者たちが知るようになった。
材木屋から警察官僚を経て、首相になった中曽根と、アナウンサーから大統領になったレーガン、鉄の女として世界で初めて首相になったサッチャーという風に、日米英の考え方が民間経済を重視する路線を歩んでいった。
しかし、世界経済の曲がり角は、もうひとつ前に存在していた。
金脈問題、ロッキード事件で法廷に立たされた田中角栄と、ウォーターゲート事件を追求されたニクソンは、日米同時に職を追われている。世界経済は、変動為替相場制に移って行って、金兌換を停止したが、これはドル本位制だと教わることになっている。私はこれが、間違いの始まりであって、ドルというFRBが発行する紙切れに、実態など、あるはずがなかった。
現代の偶像崇拝とは、仏像が金属の塊であって、金箔を貼り付けて、黄金色に輝かせたものであり、金塊を背景に財貨として崇められた、紙幣の拝金主義と何ら変わりがなかった。
むしろ、金地金の値段という金相場の動きよりも、原油相場が価値を握って、ドルに絶対的な貨幣価値を与えているという側面が、少なからず存在した。
原油相場をネットで読むと、中東のドバイ、欧州の北海ブレント、そして、アメリカのWTI原油先物が有名である。ちなみに、西テキサス地方といえば、アメリカ大統領選でも、不可解な動きをすることで有名で、この地方の石油企業に関わってきたのがブッシュ家でもある。
ニクソンは、佐藤栄作に沖縄返還を果たして、続く、田中角栄と同時期に退陣していったわけなのである。
もちろん、IMFは、SDR(特別引き出し権)を用意して、現在は、米ドル、ユーロ、人民元、日本円、英ポンドの5つの通貨をバスケットしている。しかし、IMFは、世界銀行ではないので、ハイパワードマネーのサプライヤーに過ぎない。すなわち、新自由主義のニュース・マネーを配信する印刷所のようなものだったのだ。
われわれは、目下、日米関係だけを追い掛けてきた。そして、日米は、日中関係でもあり、また、米中関係でもあった。この日米中の3ヵ国のフローチャートを情報群(X)と(Y)に対する第3の軸である(Z)として読み込んでいく。その先にあるニッポンの未来とは何かを考えて、午前の仕事を終えることにしたい。
そもそも、田中角栄が、日中国交正常化を推し進めて、今に至る日中貿易のありかたを形作ったのは、ニクソンが、ブレーンのキッシンジャーに肩を押されて、訪中を模索したからだった。
世界史では、ソ連という、われわれにとっての、もうひとつの(Z)、ゼットダッシュを重く見て考える。当然ながら、冷戦の崩壊は世界史のトピックであり、見逃せないけれど、朝鮮戦争は休戦ラインの板門店で睨み合ったままだ。
そのソ連のブレジネフとニクソンが話し合っていた。
時計の針を進めて、中曽根、レーガン、サッチャーの時代に、中国には誰が座っていたのだろうか?
答えは、胡耀邦ではなく、強かに中国の改革開放経済を推し進めた「鄧小平」(トウ・ショウヘイ)である。また、明らかに多すぎる人口に、一人っ子政策という目玉も持っていた。だから、中国が抬頭した頃、小泉と胡錦涛の冷戦には、中国市場に人民元の切り上げが取り沙汰され、日本海にガス田問題が現れた。ここを念頭に置いて、精査すべきなのは、人民元とドルの関係には、資源の裏付けが存在しているということだ。しかし、統制経済にとって、シティ・オブ・ロンドンのように、自由に取引する余地はなかった。だとすれば、世界の工場として、メイド・イン・チャイナの時代を経て、製造業モデルから脱皮することに成功した暁には、情報産業の旗を振ることになった。これが中国の後塵を拝する日本経済の略年譜だ。冒頭に読み解いた北米戦略とは、裏を返せば、急激なインフレに対応するドル防衛の動きに、令和の株式バブルを締め上げる円防衛で共同歩調を取っていたことで、他方、人民元は、給与など人件費の値上がりに苦しんでいた。しかし、FRBは利下げを表明、トランプ大統領が再選したことで、政府日銀の語り口だった北米戦略が破綻してしまった。それに日本には、今年から来年に引き続いて、食料危機のリスクがひそんでいて、円の裏付けには、資源の存在がない。円の背景にあって、貨幣をエンパワーメントするものとは、米軍基地に他ならない。差し当たって、日米地位協定の見直しで政局を拗らせると、日本経済は風邪を引く。外交力をキャッシュに変えて、債権の踊り場を演出しても、砂上の楼閣である。なぜなら、われわれには、生命線の資源エネルギーが欠如していて、電力に不安を抱えたまま情報産業を国家的なプロジェクトとしているからだ。たとえば、ASEANのマラッカ海峡が封鎖されれば、石油タンカーは即座に止まってしまう。大好きなアニメーション・テクノロジーも、手描きとはいえ、デジタルで編集されてきた。再生可能エネルギー、海洋資源の活用があっても、たちまちガス田問題が火を吹くだろう。海上自衛隊が防ぎ切れるなら、地震の被災地は、復興を遂げているはずだ。
われわれの故郷には、減反された田園地帯に原発が停止して、湾岸エリアの輪郭を縁取り、津波の脅威を前に中国貿易の再開を余儀なくされている。それは、年収の壁よりも、深刻な経済危機が度重なることを暗示している。
6割ちょっとは、アンリアル @heatless
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