第4話 社用車と契約する編集工学のマジック

鳥越俊太郎さんが、著書の中で、日本は高齢化社会になっても「人材派遣庁」を設立すれば、(当時)自分が長官になってもいいと豪語していた。あれから、時を隔てて、考え方を改めてみると、「人材派遣庁とは、中小企業庁のことだった」という白眉の部分があって、イメージも変わってきたのである。中小企業庁は、クレーン車のように錆びた工事現場のようだったが、USJのクリスマスツリーのように骨組みに肉付けされ、枝葉末節まで血が巡り、装飾品で加工される運命だった。

だとすれば、都市部に必ず支部がある商工会議所との連絡も、ひそかに密にする必要もあったわけだ。

ここまでは経済の分析から得られるインテリジェンスである。

ところが、編集工学で物語の蝶番に気付きなさいという極意があるが、要するに、からくり人形のようにドンガラになっている。

たとえば、野球の情報群(Ⅹ)とサッカーの情報群(Y)は、基本的に何の関係もないと思われている。ドンガラに気付くというのは、XとYの秘密の隠し扉が存在するから、そこを通って、方法を出入りさせなさいというのだ。そのときに初めて、平面的な座標系が現れるのであり、第3の情報群(Z)との関係性が3点セットの様相を呈するようになる。それは立体的な高さを意味していて、いみじくも奇才と称される所以である。

団体競技の場合は、野球とサッカーと、そして、ラグビーである。それなら、野球とサッカーがリンクする結節点とは何だったか、今から振り返れば、明白でもあった。野球の基本的なコンセプトは、走・攻・守の3拍子に分けていたが、どうやら「走る野球」というものが、サッカーというフットボールに対して本質的に相通じるようだと日本人が叫び始めた。そこで、ラグビーにも持ち込んで、ジャイアント・キリングを成し遂げて、プロリーグの発足まで、走り切ったわけなのだ。

実に、高度な編集工学である。

野球とサッカーは、一対の情報群であり、マスターキーによって出入り自由になっていた。FFとドラクエと考えれば、キングダムハーツが想定できるわけだ。文字通り、キーブレードによってアクションRPGの世界が開かれていった。そして、ドラクエやFFと相互に乗り入れたことで、アクションゲームがオープンワールドに変貌する糸口にもなっていった。

したがって、編集工学は、二項対立した情報を列挙することから始まっていく。

ぼくは、中小企業庁の人材派遣に対して、モビリティの貸し出しや、お気に入りになった場合の買い取りについても、一過言があり、ここが大企業とのドンガラになっているわけなのだ。レンタカーでも構わないけれど、中小企業が要求するモビリティとは何かといえば、基本的に、電気で動くフォークリフトやパレットであって、今まで放逐されてきた中小企業にとって、新幹線や乾燥機のようにITで動くモビリティということで、世界的な自動車産業の雄であるトヨタとの結節点になっている。

実は、トヨタのフォークリフトは、中小企業にとって有名だったが、その狙いは、シームレスな大企業の動き方でもあった。ビジョンは、東北や能登にも通じていたが、むしろ、イケアのクリスマスツリーのように、貸し出しされるべきだったのだ。派遣するのは社員だけでなく、社用車も同じであった。

大企業と中小企業という二項対立に矛盾が生じていたけれど、これで利害関係の対立が同居できるように調和に向かっていく。即ち、同じ方角に向かって戦力を総動員できる状況まで回復しつつある。そこで初めて、零細企業というスタートアップにも考えが及ぶように、日本に不足していたベンチャーキャピタリズムの補助線が引かれることにもなっていく。

しかし、まだ、ここ数年間の内に対処を迫られる人口減少と高齢化の問題があった。人口が減ることと、年齢層が上がることのダブルパンチが日本経済を襲っていたわけなのだ。

ぼくは、やや焦りながら、河合雅司が書いた「未来の年表」(業界大変化)を手に取って、読み始めたが、ぼくの編集工学も、妥当な線を描いている。なぜなら、各章の節目、節目にモビリティさえ動けば、この経済状況は何とかなるけれど、実際は動かないから仕方ないという編集方針になっているからだ。

実際、読んでみれば分かる。

ぼくには、詳述する体力はないので、ここで示唆するだけになるが、河合雅司の人材や知財にシフトするという意見にも合致する。

このような理由で、ぼくは、多死社会や人口減少にも、日本人は上手に対処していくだろうと考えている。




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