3-4 謎の美女の推理

 休憩時間はリーゼロッテの方が早く終わったので、教室まで送っていってもらった。この後どうするのか、、アルノルトに聞いたところ、「VIPを接待してくる」とのことだったので、大方フリッツ王太子を案内するのだろう、とリーゼロッテは理解した。


 そして数刻後、リーゼロッテの教室に激震が走った。


「誰だあの美女……!?」


 なんと、アルノルトが――――白髪ですみれ色の目をした、ものすごい美女を同伴してきたのである。これにはクラス中、大混乱に陥った。


「アルノルト様の愛人……!?」

「あんな美人敵わないわ!!キー!!」

「リーゼちゃん、大丈夫?」

「ご兄弟かな?お姉さんいたっけ……?」

「すげえ美人。国内で見たことないぞ。傾国レベルだ」

「なんか教室中が、突然いい匂いになった気がする……」


 などなど、意見はさまざまである。これは大変な事態だと思ったリーゼロッテは、「接客は私がするから任せて欲しい」と断言した。


 そして注文されたお茶を用意してサーブしたあと、リーゼロッテは一緒にテーブルにつき、小声で囁いた。


「な、な、なにやってるんでるか……フリッツ王子……!!」


 そう、白髪ですみれ色の目をした謎の美女は――――フリッツの女装だったのである!!

 しかも、この女装にノリノリらしいフリッツは、なんと魔法で声まで女のものにして、可愛らしいぶりっこポーズを取った。


「フリッツって、だあれ?今は、って呼んで?リーゼロッテちゃん♡」

「はあ……」

「私がそのまま行くと、大騒ぎになって楽しめないでしょ?だからこうしたの。なかなか可愛いでしょ?」

「なかなかどころか、可愛すぎて大問題です……」

「うふふ。絵面的には、アルノルトと一緒に美女がいるけど……ヤキモチ妬かないでね♡」

「はあ…………」


 リーゼロッテはげんなりとした。大騒ぎになら、もう十分なっているのだが、この王子は気づいていないらしい。アルノルトの方を見ると、すべてを諦め切った無表情で首を振っている。彼もよほど止めたに違いない。心なしかげっそりしているのは、気のせいではないだろう。


「リーゼロッテちゃん♪とっても美味しそうなハーブティーね♡」

「あ、はい。クラスのみんなで工夫してブレンドしたんです。一応毒味の魔法はかけてありますが、念のためご自分でもかけてくださいね」

「わかってるわ♡飲む直前に毒味の魔法をかけるのは、上位貴族の嗜みだもの。ね、アルノルト♪」

「はいはい……」


 アルノルトは無の表情のまま、自分のカップに毒味の魔法をかけた。結果は白だ。問題ないのでそのまま口をつけて、飲もうとする――――その瞬間、目を見開いたフリッツが鋭く言った。


「待て!!」


 お茶のカップを叩き落とす。カップは割れなかったが、ガチャリと音がしてお茶が半分程度こぼれた。教室は何だなんだと騒ぎになる。


 フリーゼちゃん――――じゃなくてフリッツは、ごく真剣な小声で言った。


「たった今、毒が混入された」

「は?そんな隙はなかったはずですが…………」

「俺の【真実の目】で、時間と時間の繋ぎ目に、妙な違和感が見えた…………無理に繋ぎ合わせたような……。恐らく、お前を狙う犯人は……時間を止めている」

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