第16話 チュー(忠)誠心

「チュー(忠)誠心」


事件、ネズミ。

目を八分目あけて、こちらを見ている。

その顔が、もはや猫ではない。

私の前では、声を出してなく事のなかった猫。

いつも口を小さく下の方につぐんでいた。

アパート二階の扉前に、とってきたばかりの死んだネズミを

そのまま置いた。

汚いと言って、上から水を流し、下階の部屋は

物置がすっかり水びたしになる。普請の問題、安アパートだ。


どこの猫なのか、車にひかれて死んだ。

アパートの目の前の駐車場での出来事だ。

身の回りの不都合は、猫を世話している者の方へ向けられる。

色々ある。やるべきことはやっておく。

少しの我慢で、やり過ごす。

猫は、いつもよく見ていて、優しい目を向けて、

私のうしろを、ついてくるのだ。

物かげにかくれながらも、後に先に、気遣うように、

黙ってついてくる。

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