第7話 処世術

「処世術」


かも公園、夕方になると、白いキャップを被ったじいさんが

やって来る。

黒い板壁の家から出てくる猫がいる。

白キャップじいさんから鮪をもらうために、よく言葉を

聞き分けている。

 ほいっ、おいで

 ほいっ、ここ 

と言って、公園の植込みの、じいさんにとってはちょうどいい

高さの所へ決まって猫をすわらせる。

猫は、鮪のためならと言いなりだ。


食べ終わって下に降りた時、

通りかかった自転車のじいさん

両足ついて止まって、ほいっ、トラッ!と声かける。

 トラッ、トラッよっ!

猫は小さく声を出す。

 ほいっ、トラよっ、返事したぞ!

声高くして喜んでいる。

白キャップじいさん、すかさず

 ほいっ、ボスッ! こっちだよっ、ボスッ!

と呼ぶ。


猫は目を細めて、ゆっくり歩き出す。

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