第4話 ネコ荘ビル
「ネコ荘ビル」
車で、佐賀町から永代橋を行く時、左側に見える建物が、
午後の陰影の中に浮かび上がる。
そんな時、ネコ荘ビルが出現する。
北向きの日の当たらない出入り口に〈ネコ荘ビル〉と書かれたプレートのある、年季の入った建物だ。
茶のハチワレ、顔の下半分白地に茶トラ柄マントを着た猫が、
脇道からネコ荘ビルの薄暗い中へ。
軽い足取りで、瞬間見えたかと思うと、もう、いない。
‥似ていた‥チャポンタに。
車で通り過ぎる一瞬の景色のひとつだ。
私は、この景色を忘れたくないと思った。
暗くなっての帰り道、永代橋から佐賀町へ。
もうネコ荘ビルがどこにあるのか、分からなくなっていた。
それらしき建物には、雨風で汚れたプレートに〈不二荘ビル〉と
書かれてある。
見まちがえたのか。思い違いなのか、錯覚か、夢か、
どれでもいい、ちょっとでも、会えたのだから。
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