第3話

 まさか、あの幼馴染達が同じ高校、更に同じクラスにいるなんて...と、予想外の再会に少しだけ胸が高鳴る。


 実際、彼女たち4人はクラスの中でも完全に浮いており、それは悪い意味ではなく、別次元にいるようなそんな感覚に近かった。


 ちなみに、そのほかのクラスメイトは幼馴染の影響があってか、話しかけてくることはなく、特に友達もできないまま、転校初日を終える。


 これまで転校してきて、馴染めずに友達が1人もできないまま転校することもよくあった。


 幼馴染が4人揃っているとはいえ、昔の話。

変わっていない子も居れば、変わった子もいる。

当たり前のことだが、あれは幼い頃の思い出であり、もういまは違う。


 そんなことを考えながら、机の中から教科書を取り出し、カバンにしまっていると、柏木さんに話しかけられる。


「何してんの?w早く帰るよ?w」と、楽しそうに笑う。


 そこには俺を待つ4人の姿。

それは昔と何も変わっていないように見えた。



 ◇


「どーする?どっか寄り道するー?wほら、つーくんの歓迎会も込みでw」(雪)

「お!いいねいいね!カラオケでも行っちゃう!?」(愛)

「わ、私はいいよ...?予定ないし...」(月)

「...まぁ。みんな行くなら」(舞)

「お、俺も...大丈夫」


 そうして、カラオケに行くこととなり、俺を少し前を歩く4人。

しかし、ちょこちょこ後ろにいる俺にも話題を振ってくれる。


 4人の背中を眺めながら、少し変わった風景をキョロキョロしながら見ている。


「ね、つーくん。つーくんって、彼女とかいるの?w」

「い、居ないよ...てか、居たことないし」

「ふーん?wそうなんだwてか、つーくんって私の中で誰が一番好きだったの?w」と、次々に嫌な質問をしてくる柏木さん。


「そ、それは...」

「別にいーじゃん!w昔のことなんだし!wまぁ、言いたくないならいいけどー?w」


 「...」「...」「...」と、3人目線がこちらに集まる。


「それは...また今度」と、適当はぐらかすと全員から批判を受ける。


「そ、そういう...柏木さんは彼氏いるの?」と、矛先を変える。


「柏木さんwいやいや、普通に雪乃でいいよwさん付けとかキモいし。うちはねー、今はフリーかな!ちなみに先月までサッカー部の部長と付き合ってたよ?wつまんなくてソッコー別れたから」


 確かに久しぶりの再会とはいえ、関係をリセットするような呼び方はあれか...。

てことで、みんなのことは名前で呼ぼうと思う。


「ゆっきーは恋愛体質だもんねー!」と、愛が続ける。


「まぁね!w私、ちょーモテるし」


「ただのヤリマンじゃん」と、舞が無表情で冷たくツッコむ。


「誰がヤリマンだ!」


 そんな少しだけ会話が大人になったものの、関係性は昔のままでただ楽しかった。


 そのまま、4人についていくようにカラオケに到着する。


「...いらっしゃいませー」と、陰気な男の店員が俺たちを見てそう呟く。


 慣れた手つきで受付を終えると、とある一室に案内される。


「いぇーい!wうたっちゃぉー!w」

「おー!!歌いまくるぞー!!」

「...お、ぉー...」

「...」


 4人掛けのソファが3つもある中々広い部屋で、2人ずつ座り、俺だけが1人座る。


 そうして、一人一人歌い始める。


 流行りの曲から懐メロ、バラードから童謡まで、いつも歌っているのかみんなそれぞれ楽しそうに歌う。


 更に歌のレベルは全員高く、俺は手を叩くだけであまり歌いたくなかった。


 すると、隣の席に座ると、「何?w歌うの恥ずかしいの?wんじゃ、一緒に歌おうw」と、雪乃が俺にマイクを渡してくる。


 ち、近い...//と、思いながらも平然とした態度を必死に取る。


 そうして、デュエット曲を入れると、雪乃が歌い始める。


「はい、つーくんの番だよw」と、言われて仕方なく歌う。


【挿絵】

https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/16818093088290629585


 そうして、仕方なくあまり上手くない歌を歌う。


 しかし、彼女たちは楽しそうに乗ってくる。


 そんな風に少し遊んだだけで、すぐに昔の記憶が蘇ってきて、まるであの時からずっと一緒にいたような感覚に陥る。


 あっという間に時間は過ぎて、いい時間になり解散となる。


「うぉ!もうこんな時間!?よし、かえろう!」という、愛の一言で急いで帰り支度をして、それぞれの家に帰る。


 みんなは同じ方向に変えるが、俺の引越し先は昔と違い、少しだけ離れた場所にあったため、途中の道で別れる。


「そ、それじゃあ...みんな、バイバイ」と、手を振ると、「はーいw」「うん!またね!」「...バイバイ」「...」と、いろんな反応を示す。


 名残惜しく思う中、1人で暗い夜道を歩く。


 そうして、マンションに到着したところで「今はここに住んでるんだ」と、後ろから声をかけられる。


 立っていたのは舞だった。



【挿絵】

https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/16818093088291043350

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る