神を目指す道



バルゴの発言を受け、勇者たちは討伐派と静観派を超えて、新たな分裂を迎えた。


「俺たちは虚無と戦うべきだ!」

討伐派の中心人物、オスカーが拳を握り締めて叫んだ。

「こんな怪しい使い魔の言葉を信じられるか!虚無が神を疑わせようとしているだけだ!」


一方で、静観派のリーナは落ち着いた声で反論した。

「落ち着いて、オスカー。私たちは事実を確認するべきよ。もしバルゴの言う通り神に何か意図があるのなら、それを無視するのは危険だわ。」


議論は再びヒートアップしたが、ある瞬間、リカルドが鋭い声で割り込んだ。

「待て!」

全員の目がリカルドに向けられる。


「俺たちは勇者だ。それぞれの使命は異なるが、世界を守るために存在している。ならばまず、真実を探り、神と虚無のどちらが敵なのかを確かめるべきじゃないか?」


その提案に、両派の一部が頷いた。だが、全員が納得したわけではない。


「リカルド、お前は神を疑うのか?」

オスカーが睨みつけるように問い詰める。


リカルドは堂々と答えた。

「疑うわけじゃない。ただ、真実を知りたいんだ。それが俺たち勇者としての責務だと思う。」


この言葉に、勇者たちはそれぞれの立場を見直し始めた。



最終的に、多くの勇者たちが「まずは神に真相を確かめる」という方針に合意した。討伐派の一部は依然として不満げだったが、神と虚無の双方の意図を確認することに同意した。


バルゴは嬉しそうに羽を広げる。

「決まったようだな。よし、俺について来い!」


しかし、リーナがすかさず質問した。

「そもそも、神に会うなんて可能なの?私たちは直接接触したことがないけど。」


バルゴは悪戯っぽい笑みを浮かべた。

「ふふん、普通の人間なら無理だろうな。だが、虚無様の使いである俺には特別な通路がある。『神域』への扉を開ける術を知ってるのさ。」


オスカーが警戒する。

「罠じゃないだろうな?」


「罠ならもっと手っ取り早くお前らを消し飛ばしてるさ。信じるか信じないかは自由だが、時間は限られてるぞ。」


そうして、勇者たちはバルゴの案内で行進を始めた。討伐派と静観派が混じり合うぎこちない雰囲気の中、彼らは「神域」へ向かう未知の道を歩き出した。



進行中、勇者たちの間で緊張が高まった。


「そもそも、こんな使い魔の言葉を信用してるのが間違いだ!」

討伐派の一人、タールが声を荒げる。


リーナが冷静に応じる。

「私たちが知りたいのは真実。虚無が敵ならそれでいい。でも、神を盲信するのも危険よ。」


「信じることが勇者の本分だ!」

タールは憤慨したが、その場でリカルドが手を挙げて制止した。


「喧嘩している場合じゃない!」


だが、その直後、遠くから低い音が響いた。

「ドン……ドン……」


突然、バルゴが空中に飛び上がり、羽を広げた。

「おいおい、何だこいつらは……こんな早く現れるなんて聞いてねぇぞ!」


森の中から現れたのは、黄金の甲冑を身にまとった巨大な騎士たちだった。目には神々しい輝きが宿り、その威圧感に勇者たち全員が息を呑んだ。


リカルドが剣を構える。

「あれは……敵なのか?」


バルゴは緊張した様子で呟いた。

「ああ。奴らは『天軍』だ。」


「天軍?」リーナが眉をひそめる。


「神域を守る神の配下さ。俺たちがここを通ろうとしてるのを知って、排除に来たってわけだ!」



勇者たちは「神域」にたどり着く前に、予想外の強敵と対峙することとなった。討伐派と静観派、それぞれが対立していた中で、目の前の敵にどう立ち向かうのか。


バルゴがサンドイッチを片手に、にやりと笑った。

「さて、ここからは腕試しだ。虚無様の力を使うかどうかは自由だが……これを乗り越えられないなら、神と話す資格はないぞ。」


勇者たちは、神の意図と虚無の真実を知るための道を切り開く覚悟を固めた──が、ここから先の選択肢が、さらに彼らの運命を大きく揺るがすことになるのだった。

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各世界を救った勇者たちが続々集う異世界に転移してしまった件… @ikkyu33

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