ブラックオニキス家の陰謀

 青龍王国から海を隔て西に存在するユニコーン公国、そこの港町【ジェムランド】を統治する貴族【ブラックオニキス伯爵】の館に侵入する1人の女の姿があった、彼女が着ている服は白を基調としたドレスであり、まるで舞踏会にでも行くかのような格好である。しかし彼女の顔には笑顔は無く、その表情は怒りと憎しみで満ちていた。


「ブラックオニキス伯爵……我がホワイトダイヤモンド一族を罠に嵌め、滅ぼした男……絶対に許せない!!」


 白ドレスの女性がしばらく屋敷内を歩くとそこには厳重に鍵がかけられた扉があった、女性はポケットの中から小さな針金を取り出し鍵穴に差し込む、するとカチャリという音が鳴り響いた。そして女性はゆっくりと扉を開ける、そこには純白の宝石が飾られていた。


「これが我が一族の秘宝……これさえあればホワイトダイヤモンド一族を復興させることができる!!」


 女性が宝石に手をかけようとしたその時、突如として部屋に灯りが灯された、その事に驚いた女性は慌てて後ろを振り向くとそこに一人の男性が立っていた。


「クッ!! 誰だ!?」

「人のものを盗んだら泥棒……そう習わなかったのかい? アリス・ホワイトダイヤモンド君?」

「貴様はブラックオニキス伯爵!!」


 女性……アリスは目の前にいる男性……ブラックオニキス伯爵を睨みつける。彼は不敵な笑みを浮かべながら彼女を見つめる。


「フフフ……そろそろ君が我が秘宝を盗みに来る頃だと思っていたよ」

「何が我が秘宝だ!! 元々あれは私たちのものだ!!」

「そうだね、確かに元は君たちのものだったかもしれない……だが今は違う!! 今やあの宝石はこの私の所有物なのだ!!」

「ふざけるな!! あれは元々私たちのものだ!! それをお前のような悪に渡すわけにはいかない!!」


 それを聞いたブラックオニキス伯爵は笑い出す。


「クックック! 悪か!! 私が!!」

「そうだ!! 貴様らブラックオニキス家はホワイトダイヤモンド一族が持っていたジェムランド海域で取れる宝石の権利を奪い取り、不当な利益を上げ続けた!! そんな奴らが悪でないはずがない!!」

「ほう、だがどちらにせよ君は盗みを働こうとした、なので死刑だ!! 死ねっ!!」


 ブラックオニキス伯爵は懐から拳銃を取り出すとそれを構え引き金を引こうとする。しかしそれより早く動いた者がいた。それは先ほどまで怒りに満ちた表情をしていたアリスだった。彼女は素早く懐からナイフを取り出しブラックオニキス伯爵に向かって投げる、すると彼の手にあった拳銃が床に落ちてしまった。その隙にアリスは窓から屋敷の外に脱出した。


「逃げられたか、まあいい……」


 ブラックオニキス伯爵は落ちた拳銃を拾い上げるとニヤリと笑う、するとそこに2人の男が現れる、1人は身長2mを超える太った男でもう1人は小柄な男であった。


「ケケッ!! 親父ィ!!あいつ逃げたぜぇ!!」

「お父様、あの女の捜索を我ら兄弟に命じて頂けませんでしょうか?」


 2人の男は口々に喋るとブラックオニキス伯爵は首を縦に振る。


「いいだろう、行け!! ただし殺すことは許さんぞ!! 生捕りにするんだ!! あの女は私が殺すのだからな!!」

「ヒャハハッ!! 了解だぜ親父ィ!!」

「承知しましたお父様」


 ブラックオニキス兄弟は部屋を出ていくとその場に残されたのはブラックオニキス伯爵だけとなった。


「さぁてアリスよ、いつまで逃げることができるかな?」



 一方その頃ユニコーン公国の港町ジェムランドのフェリー港では玄武が豪華客船から降りていた。


「ここがユニコーン公国か!! 初めてくるところだが中々良い国じゃないか!」


 玄武はフェリー港の豪華さを見て感心していた。するとそこへ1人の女性が現れた、その女性は白いドレスに身を包んでいた。


「なんだあの女? まるで何かから逃げているかのようだが……」


 玄武が訝しんでいると女性を追って太った男とその取り巻きの黒服たちが現れた、

彼らは必死の形相で女を追いかけている。


「ハハハハハハハ!! もう逃げられないゼェ!! アリスさんヨォ!! 貴様はこの俺!! ウェルダン・ブラックオニキスによって捕らえられるのだ!!」

「くっ!!あんたなんかに捕まってたまるもんですか!!」


 女性はそう言うと振り返り男に向けて拳を振るう、しかしその攻撃は簡単に避けられてしまう。


「ケッケッ!! 無駄だゼ!! その程度のパンチじゃあ俺は倒せねぇ!! 大人しく観念するんだナァ!!」

「くっ!!」


 それを見ていた玄武は2人の間に割って入った。

「おいあんた、どうやら訳ありみたいだな?」「え!? 貴方は一体……!?」

「俺は玄武!! バトルアクション玄武だ!!」


 それを聞いた女性は驚きの表情を浮かべる。


「まさか貴方が噂に聞くバトルアクション? あの朱雀衆を壊滅させたと言う!!」

「ああそうだ!! そしてこいつは今ここで倒す!!」


 そう言って玄武は太った男……ウェルダンと向き合う。


「ケッ!! まさかこんな所で青龍王国のバトルアクション玄武に出会っちまうとはな!!おいお前達!! バトルアクション玄武を殺せ!!」

「「「「「はい!! ウェルダン様!!」」」」」


 ウェルダンの部下の黒服達が玄武に襲いかかる、しかし玄武はそれを難なく避けていく。


「こんな攻撃当たるかよ! 喰らえ! バトルスライディング!!」

 玄武が地面を滑るとそこから衝撃波が発生し黒服達は吹き飛ばされる。


「「「「ギャー!!!!」」」」


 黒服達はフェリー港に飾られていた芸術作品に激突して倒れ込み気絶した。それを見たウェルダンは顔を真っ赤にして怒る。


「クソの役にも立たない奴らだ!! だがなバトルアクション玄武!! 貴様を倒すくらいならこの俺一人でもできるんだよぉ!!」


 ウェルダンは懐から拳銃を取り出す。


「死ね!! 玄武!!」

「させるか!! 玄武流波動砲!!」


 玄武は拳銃を弾き飛ばす、すると今度はナイフを取り出し襲い掛かってきたがそれも軽く避けることができた。


「チクショウ!! なんで当たらない!!俺は最強のブラックオニキス家の人間だぞ!!」

「最強だと? 笑わせるな!! お前の強さはその程度なのか!!」

「うるさい!! 黙れ!! お前に何がわかる!!」


 ウェルダンはやぶれかぶれにナイフを振ってくる、しかし玄武には当たらなかった。


「終わりだウェルダン、これでトドメの玄武水柱拳!!」


 玄武は両手を揃えて構えると必殺技を放つ。


「玄武水流波!!」


 玄武の手から放たれた巨大な水の渦はウェルダンを飲み込む。


「ぐわぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 ウェルダンはそのまま壁に叩きつけられ意識を失った。


「ふうっ、終わったぜ……」


 玄武はアリスの方を向き手を差し伸べる。


「大丈夫かい? お嬢さん?」

「ありがとうございます、助かりました。私の名前はアリス・ホワイトダイヤモンド、ホワイトダイヤモンド一族の者です。ありがとうございますバトルアクション玄武」

「礼なんていいさ、それよりどうして追われていたんだ?」

「それは……」


 アリスは話し始める、ブラックオニキス伯爵に宝石を奪われてしまいそれを取り返そうとしていたこと、そしてその途中で玄武と出会い助けられたことを。


「なるほどそういうことか……それでこれからどうするつもりなんだ?」

「私はブラックオニキス伯爵の屋敷に向かいます、そこで奪われた宝石を取り戻すつもりです」

「そうか……だったら俺も一緒に行こうじゃないか、1人で行くより2人の方がいいだろう?」

「本当ですか!? とても心強いです!! 是非お願いします!!」


 2人が握手を交わしたその時である、フェリー港にブラックオニキス伯爵の部下である黒服たちが騒ぎを聞きつけ大量に現れた。


「見つけたぜぇ!! アリスさんよぉ!!」

「もう逃がさないぜ!!」

「さぁてお楽しみの時間だゼェ!!」

「くっ!! まだいたのか!!」

「どいつもこいつもしつこい連中だ!! アリスさん、ここは俺に任せてくれ!! 玄武水柱拳!!」


 玄武は黒服達に水を浴びせる、するとその衝撃で彼らは次々と倒れていった。


「今のうちに逃げるんだ!!」

「はい!! ありがとうございます!!」


 こうして2人はフェリー港を後にした。



 玄武とアリスがフェリー港から立ち去った後、そこに黒服たちを連れた小柄な男が現れていた、ブラックオニキス兄弟の長男ネイル・ブラックオニキスである。


「ここにアリスがいたようだが……しかしこの戦闘の後は一体……」

「ネイル様!! ウェルダン様が気絶しています!!」

「なんだって!!」


 黒服の言葉を聞き驚く、すぐに駆け寄り確認するが確かにウェルダンは気絶していた。


「一体誰がこんな事を……この傷のつき方は玄武流波動砲……まさかバトルアクション玄武か!?」

「うう……兄貴ィ……」


 ウェルダンは目を覚ました、それを見届けたネイルは安心すると同時に怒りを覚えた。


「良かった……無事で本当に……だがよくもブラックオニキス家に恥をかかせてくれたな!! バトルアクション玄武!! 今度は弟と二人で決着をつけてやる!!」


 そう言って彼は部下を連れて走り出す、目指すはバトルアクション玄武の元であった……。



 その頃、玄武とアリスはフェリー港を離れ酒場にいた。


「とりあえず一息ついたし、まずは腹ごしらえでもするか」

「はい、私も空いてきました」

「マスター、何か美味いもの頼むよ」

「はいよ!!」


 しばらくして注文した料理が運ばれてきた。


「お待ちどうさま!!牛丼定食だよ!!」

「おお!! これが牛丼か!!」


 玄武は目の前の肉に釘付けになる、アリスはそれを見てクスリと笑う。


「ふふっ、まるで子供みたいですね」

「仕方ないだろ!! こんな物見た事がない、青龍王国には牛を食べる習慣が無いからな」

「そうなんですか? それでは私が食べさせてあげましょうか?」

「え? いや……いいのか?」

「もちろんです!! はいあーん」


 アリスは箸で掴んだ牛肉を玄武に差し出した。


「じゃあお言葉に甘えて……はむ!!」


 玄武は差し出された牛肉を口に含む。


「うん、うまいな!!」

「それはよかったです、次はどれを食べたいですか? 何でも頼んでくださいね!!」

「おう、ありがとよ!!」


 玄武は次々に料理を平らげていく。


「すごい食欲ですね、そんなにお腹が減っていたのですか?」

「ああ、実は乗ってきたフェリーの中で殺人事件があったから昨日から何も口にしていなかったんだ……」

「まぁ大変!! そうだ!! 私の分をあげますよ!!」

「おっ!! 悪いな!!」


 アリスは自分の分のステーキを差し出し玄武はそれを食べた、その時である、ブラックオニキス兄弟のネイルとウェルダンが酒場の中にやってきたのだ。


「見つけたぞバトルアクション玄武!!」

「覚悟しろバトルアクション玄武!!」

「またお前たちは!! とりあえず名を名乗れ!!」

「俺はブラックオニキス家のネイル、そしてこっちは弟のウェルダンだ」

「お前たちに受けた屈辱は忘れていないぜぇ!!」

「そうだ!! 弟が受けた屈辱!! ここで晴らしてもらう!!」


 ネイルは自らの手にかぎ爪をつける、ウェルダンは両手に炎を纏わせる。


「ふん、やる気か!! いいだろう、相手になってやる!!アリスさんは下がっていろ、ここは俺に任せてくれ!!」

「はい!!」


 玄武は構えを取る、それは水柱拳の構えである。


「行くぜぇ!! 玄武流波動砲!!」

「効くか!! 喰らえ!! 火炎波!!」

「燃え尽きちまえ!! 業火弾!!」


 2人の技がぶつかり合う、その衝撃で酒場は大きく揺れた。


「ぐっ……この二人なかなかやるな……」

「へっ!! どうしたバトルアクション玄武!? 動きが鈍くなっているんじゃねぇのか!?」

「どうしたどうした!? さっきまでの威勢の良さはどこに行ったんだよぉ!?」

「まだまだこれからだ!! 玄武水柱拳!!」


 玄武は水柱拳を繰り出す、だがネイルとウェルダンは余裕の表情でかわす。


「おいおい、同じ攻撃はもう通じないって言っただろ!!」

「馬鹿め!! 油断しているからだ!!」

「なんだって……うわっ!?」


 突然玄武が放った水流がネイルに命中した。


「どうだ!!」

「くそっ……一体何が起きたんだ……?」

「ふっ、どうやら気づいていなかったようだな、俺の玄武流波動砲はただの水の柱じゃない、高圧の水流によるカッターでもあるのさ、つまり俺の波動砲を食らうたびにお前は少しずつダメージを受けるのさ」

「そうか!! だから俺たちの攻撃をかわした時、わずかに動きが遅れていたのか!!」

「そういう事だ、だが安心しろすぐに楽にしてやる、玄武流波動砲!!」

「そうはいくか!! 炎神黒縁陣!!」



 再び放たれた水の渦と2つの炎が衝突する、その衝撃で周囲の壁が崩れ落ちる。


「ぐうううううううううううう!!」

「ぬおおおおおお!!」

「兄貴ィ!!」

「大丈夫だウェルダン!! こんな奴らに負けてたまるか!!」


 ネイルは歯を食いしばり耐え続ける、一方玄武は少し焦りを感じていた。


(まずいな……この二人は思っていたよりも強い、なんとかしなければ……)


「ならこれでどうだ!! 玄武流大旋風!!」


 玄武は回転しながら風を起こす、それにより周囲が竜巻に包まれる。


「ぐっ……なんてパワーだ……」

「でもこれくらいじゃあ……」

「ふっ、確かにお前たちの力は素晴らしい、だがお前たちが本当に優れているのはその力だけなのかな?」

「なにぃ……?」

「お前たちの戦い方を見て気づいた事がある、お前たちは互いの長所を活かしきれていないんじゃないか?」

「なに……?」

「お前たちは互いに相手をフォローする事を考えすぎて自分の力を100%発揮できていない、それでは本当の強さは得られないぞ!!」

「うるせえ!! 黙れ!!」

「ふざけやがって!! 俺達兄弟は最強なんだよ!!」

「そうか……ならば証明してみろ、己の強さを!!」


 玄武は構えをとる、それは水柱拳ではない、それはかつて玄武の友であった白虎が使っていた白虎新橋拳の構えであった。


「なんだ? 何をするつもりだ?」

「どうせハッタリに決まっている!! 喰らえ!!」

「喰らい尽くせ!!」


 2人は同時に攻撃を仕掛ける、だが玄武はそれを片手だけで受け止めたのだ。


「ば、馬鹿な!?」「な、なんという腕の力だ!?」

「どうした? これがお前たちの本気なのか? だとしたら拍子抜けだぞ!!」

「調子に乗るんじゃねえ!! ウェルダン!!」

「おうよ!! 燃え尽きろ!! 業火弾!!」


 ウェルダンは両手から巨大な火球を放つ、だが玄武は慌てる様子もなく両手を前に突き出す、するとそこから強力な水流が吹き出し火球を飲み込んでしまったのだ。


「こ、これは!?」

「水柱拳はただの水の柱じゃない、高圧の水流によってあらゆるものを切り裂く刃にもなるのさ!!」

「そ、そんなバカな……!!」

「ウェルダン!! 一旦引くぞ!!」

「了解!!」

「逃すか!! 玄武流大旋風!!」


 玄武は再び風の渦を巻き起こす、そしてその中心にはネイルとウェルダンがいた。


「うわああぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「ぎゃあああ!!」

「くらえ!! 玄武流波動砲!!」

「ぐっ……おのれ……バトルアクション玄武……!!」

「覚えていやがれ……必ずお前を倒す……!!」


 ネイルとウェルダンは気絶した。


「ふん、いつでも来い、返り討ちにしてくれる……さてアリスさん、怪我はないかい?」

「はい、ありがとうございます」

「気にしないでくれ、当然のことをしたまでさ」

「ふふふ……」

「ん? どうしたんだい?」

「いえ、やっぱり玄武様は素敵だなって思って……」

「はっはっは、照れるじゃないか、だがこんなことをしている暇ではないぞ、君の宝石を取り戻すためブラックオニキス伯爵の館にいかなければならない、早速出発しよう」

「はい!!」


 こうして玄武とアリスは街を出た。



 その頃、ブラックオニキス邸では……。


「おい、まだあの女は見つからないのか!?」


 ブラックオニキス伯爵は執事であるオリオン・コールドマンに怒鳴っていた。


「申し訳ございません旦那さま、どうやらアリスはバトルアクション玄武と偶然出会い、行動を共にしているようでして……」

「なにぃ……バトルアクション玄武だと? まさか奴がこの街に来ていたとは……」

「そして奴らは秘宝を奪うためこの館に侵入しようとしているようです、しかし問題はありません、我が白冬氷像拳をもってすればあんな小童どもなど一捻りでしょう」

「ふむ、確かにそうだな、だが念のためこちらも戦力を増やしておくか、おい、あれを持ってこい」

「かしこまりました、少々お待ちくださいませ」


 そう言って執事は部屋を出ていった。


「ふう……まったく、バトルアクション玄武がこの近くにいるとなると、いつ私の事がバレるかわかったもんじゃないな……まあいい、どんな手段を使ってでも手に入れるまでは……」

「失礼します、旦那さま、例のものをお持ちしました」

「おお! 待っていたぞ!」

「ええ……こちらが……」



 その頃玄武とアリスはブラックオニキス伯爵の館の前に来ていた。


「警備が厳重だな……どうする?」

「私に任せてください、少し待っていて下さいね」

「うん?」


 すると突然門番が倒れてしまった。

「ふふ……眠り薬を塗った針を刺しておきました、これでしばらく起きないはずですよ」

「な、なるほど……すごいな……」

「さあ行きましょう!!」

「ああ!!」


 二人は館の中に入る、だがそこにいたのは白冬氷像拳の使い手のオリオン・コールドマンだった。


「ほう……よくここまで来たな、褒めてやるぞ、バトルアクション玄武よ!!」

「なんだ貴様!! 一体何もんだ!!」

「私はブラックオニキス伯爵の執事であり白冬氷像拳の使い手、オリオン・コールドマンだ、そしてお前たち2人を始末するためにここに来た!!」

「なんだと!?」

「どうして私たちがここに来るって知ってたの!?」

「それは秘密だ、さておしゃべりはこれくらいにして始めようではないか!!白冬氷像拳!!」

「なに!?」

「きゃっ!?」


 2人は一瞬で凍ってしまった。


「はっはっは!! 愚か者め!! 私がお前たちの動きを読めないとでも思ったか!!」

「くっ……動けねえ……」

「くぅ……」

「さて、それじゃあゆっくり殺させてもらうとするかな……」

「させると思うか?」

「何!?」

「はあっ!!」


 するとどこからともなく炎が吹き出し、2人の氷が溶けていく。


「なに!? これは……まさか!?」

「これはレッド・ドラゴンの技だ、知ってるかコールドマン、氷は炎に弱いんだぜ?」

「くそっ……バトルアクション玄武!!」

「おうよ!! 燃え尽きろ!! 業火弾!!」

「ぬうううううううう!!」

「よし!! 今のうちに!!」

「ええ!! 急ぎましょう!!」


 こうして玄武とアリスはなんとか無事に脱出した。


「アリス!! ホワイトダイヤモンド家の秘宝はどこにあるんだ!!」

「はい!! この先です!!」

「よし!! 急ごう!!」

「はい!!」

「見つけたぞバトルアクション玄武……ここで死んでもらう!!」


 警備の黒服たちが玄武たちの前に大量に現れる、その数はざっと100人程だ。


「ちっ……邪魔だ雑魚どもが……くらえ!! 玄武流大旋風!!」

 

 玄武は風の渦を巻き起こす、100人いた黒服たちは全員吹っ飛んでしまった。


「ふん、こんなものか」

「さすが玄武様!!」

「ああ、だがまだまだ敵は残っているようだ、気を引き締めて行くぞ!!」

「はい!!」


 玄武とアリスは秘宝の元へ走る、そしてついにたどり着いた。


「あったわ!!」

「よかった、無事だったんだな」

「はい、でも玄武様に守っていただいたおかげです」

「いいや、君が頑張ったからだ、さぁアリス、秘宝を」

「はい、わかりました」

「させん!!」


 オリオン・コールドマンが目の前に現れた。


「しつこい野郎だ……」

「玄武様、ここは私にお任せください」

「ん? 大丈夫なのか? あいつはかなり強いぞ」

「はい、だからお願いします」

「わかった、なら俺の分身を連れていけ」


 そう言って玄武は3人に分裂した。


「なに!? バトルアクション玄武が3人もだと!?」

「ああ、俺はお前を倒す、だがアリスが心配だ、だからこの分身を向かわせる、頼んだぞ」

「はい、おまかせください」

「では行くぞ!! 白冬氷像拳!!」

「来い!! 玄武水柱拳!!」

「「「いくぞ!!」」」

「「「「はあー!!」」」」


 玄武とアリスは同時に攻撃をする、しかしコールドマンは素早く回避した。


「ふふふ、そんな遅いパンチが当たるものか!!」

「どうだかな?」

「なに!?」

「はあっ!!」


 なんと白冬氷像拳の技であるはずの白冬氷像が爆発した。


「な……なぜだ!? どうして爆発したのだ!?」

「玄武流波動砲の応用だよ、自分の攻撃に波動を流し込み相手の体の中で爆発させた、ただそれだけの事さ」

「なに!? くそっ!! 白冬氷像拳!!」

「無駄だ!! 玄武流爆裂波!!」

「ぐあああ!!」


 オリオン・コールドマンの体は粉々に砕け散った。


「ふう……これでよし、あとは……あれ?」


 玄武の足元にはコールドマンの死体はなかった。


「なんだ……一体どこに……うおっ!?」


 すると突然コールドマンが現れ、玄武の腹を思いっきり殴った、そしてそのまま地面に叩きつける。


「がはっ!!」

「はっはっは!! 油断しすぎだな!! バトルアクション玄武!!」

「くっ……まだ生きてたとはな……だけどもう終わりだ、お前は俺の拳を喰らって倒れた、それで決着がついたはずだ」

「そうだな、確かにお前の攻撃は効いた、だが私の体に衝撃を与えればダメージを与えられるとでも思ったか?」

「なんだと!?」

「私は全身を氷で覆っている、その程度の打撃など全く意味がない」

「くっ……なんて奴だ……」

「さて、それじゃあ今度はこちらから行かせてもらおうか!!」

「くっ……」


 コールドマンの手が光り出す、そして次の瞬間、コールドマンの姿が消えた、そして一瞬のうちに玄武の背後に現れた。


「なにっ!?」

「くらえ!! ダイヤモンドダスト!!」


 コールドマンが手を振ると大量のダイヤモンドの破片が出現し、それが玄武に向かって飛んでくる。


「くっ……玄武水流壁!!」


 玄武は水を操り盾を作り出す、しかしその盾はあっさり壊れてしまった。


「うおお!!」

「はははは!! ダイヤモンドダストの威力は凄まじいだろう!! さっきのように防げると思うなよ!!」

「ちぃ……ならこれならどうだ!! 玄武流竜巻!!」


 玄武は回転しながら風を巻き起こす、その勢いは強く、ダイアモンドダストを弾き飛ばした。


「よし!! これで……」

「はっはっは!! 甘いぞバトルアクショ……ぬっ!?」

「玄武流旋風脚!!」


 玄武はコールドマンの周りを高速移動して蹴り飛ばす、コールドマンは吹っ飛び壁に激突し気絶した。


「やったわ玄武!! さあ秘宝を……」


 アリスが秘宝に手を伸ばしたその時、突如として部屋が動き出した。


「きゃああああああ!!!!」

「なに!? これは一体!?」


 そしてアリスは部屋の奥へと消えていった。


「アリス!!」


 玄武はアリスを追いかけようとするが、扉が閉まってしまい追いかけることができなかった。


「くそっ!! どうすれば……」

「お困りのようだね、玄武」

「誰だ!?」

「私の名前はブラックオニキス伯爵、貴様の敵だよ」

「あんたがブラックオニキス伯爵か……」

「そうだ、さぁかかってきたまえ」

「言われなくてもやってやる!!」


 玄武は構えをとる。


「玄武流爆裂波!!」

「無駄だ」


 なんと玄武の技は発動しなかった。


「なに!?」

「言っただろう? ここは私の世界だと」

「初耳だぞ!!!」

「ふふ、ならば教えてやろう、私が作り出したこの空間では全ての攻撃は無効化される、つまりここでは君は無力というわけだ」

「なんだと……ふざけるんじゃねえ!!」

「いいぞ、怒りに身を任せろ、そうすれば君の中にある力が目覚め、より強い力を使うことができる」

「何言ってんだこいつ?」

「さあいけ!! バトルアクション玄武!!」

「ちっ……玄武流波動砲!!」

「はっはっは!! 効かないと言ったはずだ!!」

「玄武流波動弾!!」

「だから無駄だと言っているだ……なにっ!?」


 玄武の放った波動砲が直撃する、しかしブラックオニキス伯爵の体には傷一つついていなかった。


「馬鹿な!! なぜだ!?」

「ふっ、やはりまだ覚醒しきっていないようだな、だがそれでもお前の力はなかなかだ、あのお方が見込んでいるだけのことはある」

「あのお方だと!!? 何者だ!!」

「いずれ分かるさ、それじゃあまた会おう」

「待て!!」

「さらばだ」


 そして玄武は気を失ってしまった。



「ん……ここは……どこだ?」


 玄武が目を覚ますとそこは秘宝があった部屋だった。


「くそっ……確か俺はブラックオニキス伯爵と戦っていて……」


 すると突然部屋の明かりがついた。


「うおっ!? なんだ!?」

「玄武さん!! 無事ですか!?」

「アリス!? 」


 そこにはアリスがいた。


「よかった……玄武さん……突然気絶してびっくりしましたよ」

「すまない……ところでブラックオニキス伯爵は?」

「それが……」

「おお、目覚めたかバトルアクション玄武」


 そこに現れたのはブラックオニキス伯爵だった。


「てめえか!! よくも俺を閉じ込めたな!!」

「何を言っている? 私はまだお前たちに何もしていないぞ?」

「嘘をつくな!! お前が何かしたのは分かってんだよ!!」

「玄武さん落ち着いてください!!」

「アリス……悪い……少し取り乱した……」

「それで、玄武よ、私はどうするつもりだ?」

「決まってるだろ!! てめえを倒す!!」


 ブラックオニキス伯爵はそれを聞くとポケットから薬を取り出した、そしてそれを飲み込む。


「うおおおおおお!!!!!」


 突如として叫び声をあげるブラックオニキス伯爵、その体は巨大化していく。


「なっ……なんだと……」

「ふはは!! 驚いたか!! これが私の最終形態、超巨大戦闘型ロボット、その名もバトルロボだ!!」

「そんなもんぶっ壊してやる!!」


 玄武はバトルロボに向かって走り出す、しかしバトルロボの拳によって簡単に吹っ飛ばされてしまった。


「ぐあっ!!」

「はっはっは!! 無駄だ!! このバトルロボに物理攻撃は通用しない!!」

「なんだと……」

「さあどうする? 降参するか?」

「誰が……諦めるか!!」


 玄武は再び立ち上がる。


「ふむ……なかなか根性があるな……ならば見せてくれよう、バトルロボの真の姿を!!」


 バトルロボが光に包まれていく。


「くそっ……どうすれば……」

「玄武さん!! これを飲んでください!!」


アリスが差し出したものは謎の液体が入った小瓶だった。


「これは……なんだ?」

「いいから早く!!」

「分かった……」


 玄武はその小瓶を飲み干した。


「よし……これでどうだ……」


 玄武の体が輝き始める。


「なに!? 一体何が起こっているのだ!?」

「はああああああ!!!!」


 玄武の体を覆っていた光が消えていき、その中から姿を現したのは……


「な、なんなのだその姿は!?」


 バトルロボは玄武の姿を見て驚く、なぜなら玄武が亀のような姿のロボットになっていたからだ。


「玄武流波動砲!!」


 玄武の放った波動砲はいつもよりも数倍威力が高くなっていた。


「ば、馬鹿な!?」


 そしてそのまま直撃し、大爆発を起こした。


「やったぜ!!」

「やりましたね!!」

「いや、まだだ」

「え?」


 玄武は爆発したバトルロボを見る、それはボロボロになりながらもなんとか立っていた。


「ふふ……まさかこんなことになるとは……」

「しぶてぇ野郎だ……」

「だがもう終わりだ……バトルロボ最終奥義発動!!」


 するとバトルロボの目が赤く光り始めた。


「まずいな……アリス逃げるぞ!!」

「は、はい!!」


 二人は逃げようとするが、その時、玄武の体に異変が起こった。


「うっ……な、なんだこれ!?」

「玄武さん!?」


 玄武の体は徐々に小さくなっていき、しまいには元の姿に戻ってしまった。


「な、なんで!?」

「ふはは!! バトルロボの最終奥義は対象を元の姿にする能力だ!!」

「なっ!?」

「さあ、おとなしく捕まるがいい!!」

「ちっ……仕方ねえ……」

「大丈夫ですよ、玄武さん」

「アリス?」

「玄武さんのことは私が守ります」


 そう言うとアリスはバトルロボに向かって歩き出す。


「ほう……なかなか勇敢なお嬢ちゃんだな」

「あなたを倒して、玄武さんを助けます!!」

「面白い!! やってみるがいい!!」


 アリスは剣を構える。


「行きます!!」


 アリスは走り出し、バトルロボに斬りかかる。しかしバトルロボはそれを腕ではじき返した。


「うわっ!?」

「ふっ、まだまだ!!」


 バトルロボはアリスに向かって殴り掛かるが、それをアリスは避けた。


「玄武さん!! 今のうちに玄武流波動砲の力を貯めてください!!!!」

「な、なるほど……了解!!」


 玄武は集中して技を発動させる準備をする、そして玄武は座禅の態勢をとった。


「座禅だと!! ふざけているのか!!!!」

「玄武流波動拳!!」

「ふん、効かん!!」

「くらえ!! 玄武流波動砲!!」

「無駄だ!! その程度の攻撃など私には通じない!!」

「どうかな? 玄武流波動砲・改!!」


 玄武は今までにないくらい大きな波動砲を放った。


「なにぃ!?」

「くらえ!!」

「ぐおおおおおお!!!!」


 バトルロボは大ダメージを受けて倒れた。


「すげぇ……」

「玄武さん、とどめです!!」

「おう!!」

「くっ、おのれ!!」

「行くぞ!! はああ!!」

「うおお!!」

「玄武流波動拳!!」

「ぐあぁー!!」


 そしてついにブラックオニキス伯爵を倒したのだった。


「はあ……はあ……勝った……」

「玄武さん!! 大丈夫ですか!?」

「あ、あぁ……大丈夫だ……」

「よかった……」

「それじゃあアリス、秘宝を手に取るんだ」

「はい……ってあれ?」


 アリスはあることに気づく、それは秘宝がないということに。


「な、ない!! どこにもありません!!」

「なに? どういうことだ? さっきまでここにあったはずなのに……」

「一体どこへ……」


 二人があたりを見渡すとそこには秘宝を手に取ったコールドマンの姿があった。


「コールドマン!!! 貴様!!!」

「ハハハッ!! この秘宝はあのお方が欲しがっているものでね、ブラックオニキス伯爵に取り入ったのもこれを手に入れるためだったのさ!!」

「くそっ……」

「さらばだ!!」


 コールドマンは氷の翼を生やし飛んでどこかへと消えた。


「待て!!」

「くそっ……追いかけないと……」

「玄武さん、コールドマンが逃げた方角は恐らくスノウ・フィールドと呼ばれる極寒地域、そこに行けばコールドマンの居場所が分かるかもしれません」

「よし、分かった……すぐに行こう」


 二人は急いでその場を離れようとした時、バトルロボが話しかけてきた。


「ま、待てっ!! 玄武!!」

「なんだ?」

「お前たちはなぜ戦う!?」

「どうしてか……そうだな……強い奴と戦いたかったからかな?」

「それだけなのか?」

「ああ、友を失った俺にはそれしかないからな」

「そうか……ならいい……最後に聞かせてくれ、玄武、お前は幸せだったのか?」

「……さあな、でも楽しかったぜ」

「そうか……」


 バトルロボは機能を完全に停止した、そして玄武とアリスはブラックオニキス伯爵の館から去る、玄武にはかつての友の声が聞こえたような気がした。


「玄武……俺は今でも後悔している……もしもう一度会えるのならば謝りたい……すまなかった」

「……」


 玄武は涙を流す、だが決して後ろを振り返らなかった。


「玄武さん……泣いているんですか?」

「な、なんでもねぇよ!!」

「……やっぱり泣いてるじゃないですか」

「うるせぇ……」

「ふふっ……」


 二人は笑いながら雪道を歩く、それは新たなバトルアクションの地スノウ・フィールドへと続く道であった。 


~続く~

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