聖なる玄武伝説

 突如として現れた闇のバトルアクションを名乗る謎の男【黄龍】、黄龍に攫われた白虎、アリア、レッド・ドラゴンを救うため彼の居城である黄龍城に潜入した玄武、アリア、レッド・ドラゴンを救うことに成功した玄武であったが白虎は既に亡き者になっていた、それから一か月後、玄武は白虎の墓の前に立っていた。


「……白虎、お前がいなくなったことで俺は自分の弱さを思い知ったよ。」


 玄武は自分の力の無さを嘆き悲しんだ。


「だが俺は強くなる、そしてお前を殺した黄龍は必ず俺が倒す、だから安心して眠ってくれ……。」


 そう言って玄武はその場を後にしようとしたその時である、玄武の前に1人の女性が現れた。


「何者だ!!」


 玄武は素早く反応すると玄武水柱拳の構えをとる、しかしそれは玄武が知る人物であった。


「あんたは確か【鳳凰の聖域】の孔雀、どうしてここに? 墓参りってわけじゃなさそうだが」


 玄武の前に現れたのは鳳凰の聖域と呼ばれる場所で、とある騒動があった時に出会った孔雀であった。


「貴方に会いに来たんですよ、バトルアクション玄武」

「俺に?」


 孔雀は真剣な眼差しで玄武を見つめる、その表情から只事ではないと察した玄武は話を聞くことにした。


「実は今朝方、鳳凰の聖域が占拠されたのです」


 それを聞いた玄武は驚きは隠せない様子だった。


「一体誰が!?」

「それはあなたもよく知っている人物です、彼はこう名乗っていました、【闇のバトルアクション黄龍】と」

「何!? 黄龍が!? 鳳凰の聖域を占拠!?」

「私も最初は信じられませんでしたが、彼の配下である【量産型メカ・ファントム】と【黄龍三銃士】によって鳳凰の聖域は制圧されました、幸いにも死傷者はいませんが、皆怯えています。」

「それで俺にどうしろと言うんだ? まさか俺の力を借りたいのか?」


 玄武の言葉に孔雀は大きくうなずいた。


「えぇ、是非ともお願いしたいと思っています。どうか私たちを助けてください。」


 孔雀は深々と頭を下げて懇願する、しかし玄武はその頼みを断った。


「悪いが断る、今の俺が黄龍を倒せるかどうかわからない、俺はやつに親友を殺されてしまったんだ、正直復讐心はあるが俺は自分の力不足のせいで大切な仲間を失ってしまった、そんな弱いままでは奴には勝てん、だからまずは己自身を強くしてから出直すつもりだ。」

「バトルアクション玄武、そんな悠長なことを言っている暇はありません、彼は鳳凰の聖域を占拠したときこう言ったのです、『今度こそ伝説を再演する』と」

「伝説だと……?」

「はい、青龍王国はかつて強大な力を持った拳法家によって闇に閉ざされたと言われています、それは恐らく闇のバトルアクションのこと、その伝説の再現を行うのが彼の目的です」

「つまり黄龍は青龍王国を闇に閉ざすつもりなのか……!」

「恐らく」


 孔雀の話を聞いて玄武は決心を固めた。


「わかった、引き受けよう」

「ありがとうございますバトルアクション玄武」

「礼を言うのはまだ早いぞ孔雀、とりあえず鳳凰の聖域に行くぜ!!」

「わかりました」


 2人は鳳凰の聖域に向かい、そしてたどり着いた、そこにはアリアとレッド・ドラゴンの姿もあった、レッド・ドラゴンが大声で玄武に話しかける。


「玄武!! なんだか大変なことになってるぜ!! 鳳凰の聖域が黄龍三銃士に占拠されてんだよ!!」

「あぁ知ってる、ところでアリア、レッド・ドラゴン、2人に聞きたいことがある」

「なんだい?」

「何かしら?」

「お前たちは俺と一緒に戦ってくれるか?」


 2人の答えは決まっていた。


「もちろんだぜ!!」

「当然よ」


 玄武は孔雀に視線を向ける、すると孔雀は静かにうなずく。


「用意は整ったようですね、私はここを見張っています、くれぐれも気を付けて」

「任せてくれ!! 黄龍は必ず俺が倒す!!」


 3人は鳳凰の聖域の中へと入っていった、そこには量産型メカ・ファントムが沢山いた。

「ここは俺に任せろ」


 そう言うと玄武は水柱拳で量産型メカ・ファントムを次々と蹴散らしていく。


「玄武、俺も戦うぜ!!」

「あたしだってやるときはやるんだからね!!」


 アリアとレッド・ドラゴンは量産型メカ・ファントムを相手に立ち向かう、しかしそこに黄龍三銃士の一人が立ちふさがった。


「ここから先は通さん、私の名は朱雀、久しぶりだな玄武!!」


 玄武は驚いた、何故ならかつて玄武たちが壊滅させたはずの朱雀衆の首領である朱雀が黄龍三銃士を名乗っていたからだ。


「どういうことだ朱雀!! なぜ貴様がここにいる!! 答えろ!!」

「答える必要はない、ここでお前たちを倒すだけだ」

「そうかい、だがこっちはお前に構っているほど暇じゃないんでな、さっさと片付けるぜ!!」


 玄武は水柱拳で攻撃するが、朱雀はそれを軽々とかわす。


「何!?」

「遅いな、その程度か?」

「まだまだこれからだぜ!!」


 玄武は再び水柱拳を放つ、今度は先程よりも威力を高めている。


「その程度の技が通用すると思うな!!」


 しかし朱雀は水柱拳を弾き飛ばしてしまう。


「嘘だろ……」

「ならば次はこちらから行くぞ」


 朱雀は高速移動しながら連続で蹴りを繰り出す。


「ぐはっ……!?」

「まだ終わりではないぞ」


 さらに追い打ちをかけるように炎をまとった連続パンチを繰り出していく、あまりの速さに目で追うこともできない。


「ぐあああっ!?」

「これでとどめだ」


 強烈な一撃を食らわされ、吹き飛ばされる玄武、その隙を逃さず朱雀は必殺技を発動させる。


「【朱雀流波動砲】!!」


 朱雀は両手を突き出して強力なエネルギー波を発射する、まともに食らえばひとたまりもない。


「くそぉおおおおっ!!」


しかし玄武は諦めずに立ち上がり反撃する。


「玄武水柱拳奥義!!玄武螺旋衝!!」


 玄武は全身を回転させながら勢いよく突進する、2つの水流がぶつかり合う。


「はああぁぁぁぁぁぁーッ!!」

「ぬうぅうううううううっ!!」


 やがて二つの水流は爆発を起こし相殺された。


「なんというパワーだ……!!」

「へぇ、少しはやるようになったじゃないか、だがこの程度で私を倒せるとは思わないことだ」

「いやまだ終わってない、いくぞ!!」


 玄武は朱雀に向かって駆け出す。


「無駄なことを」

「どうだろうな?」


 次の瞬間、突然地面が割れて巨大な岩石が出現して玄武を呑み込んだ。


「これは……!?」

「これが私の能力、大地を操る力、【青龍藍月拳】」


 アリアが青龍藍月拳の構えをとっている、彼女は藍月拳の力で玄武に岩石を使ったアーマーを身にまとわせたのだ。


「く……! 小賢しい真似を……!」

「玄武、俺もいるぜ!!」


 レッド・ドラゴンは玄武に呼びかける。


「玄武、俺とお前のコンビネーションを見せてやるぜ!!」

「いいぜ、やってみようじゃねえか!!」


 レッド・ドラゴンと玄武は同時に飛び出し、左右から攻撃を繰り出す。


「くらえ!! ダブル・ドラゴン・キック!!」


 レッド・ドラゴンと玄武の同時攻撃が炸裂し、朱雀はダメージを受けるが、すぐに体勢を立て直す。


「こんなもの効かんな」

「ちぃっ!!なんて硬さだ!!」

「だがこれならどうかしら? 青龍蒼牙脚!!」


 アリアは空中に飛び上がり、両足に水をまとい回転しながらの連続回し蹴りを繰り出して朱雀を攻撃する。


「うおおおおっ!! ぐうううううっ!!」


 2人の攻撃を同時に受けた朱雀は地面に倒れ込む。


「やったか!?」

「いえ、まだよ!!」


 朱雀はすぐに立ち上がる。


「まさかここまで強いとは、予想外だった、仕方がない、ここは退くとしよう」

「待て!!」

「さらばだ」


 朱雀は姿を消した。


「逃げられたか……」


 玄武は悔しそうな表情を浮かべる。


「でも倒したことに変わりはないわ」

「そうだぜ玄武、今は喜ぼうぜ」

「……そうかもな」


 3人は無事に鳳凰の間までたどり着いた。


「ついに辿り着いたぜ!!」

「そうね、早く黄龍を止めないと!!」

「ああ、行こう!! 黄龍の元へ!!」


 3人が扉を開けるとそこには朱雀を含む黄龍三銃士の姿があった。


「来たか、待っていたぞ玄武」

「こいつが玄武か、俺は黄龍三銃士のファイア・タービン!! 貴様たちを我が黄龍火炎拳で焼き尽くしてやる!!」

「僕は黄龍三銃士のグリーン・フォレスト、僕の黄龍森林拳で君たちを倒す!!」

「そして私は黄龍三銃士のリーダー、イエロー・サンダーだ、玄武、お前には因縁がある、ここで決着をつけてやる!!」

「お前たちが朱雀、それにファイアにグリーンにイエローか、面白い、かかってきな!!」


 玄武は水柱拳を構える。


「さあ行くぜ!!」


 まず最初に動いたのはグリーン・フォレストだ。


「【黄龍森林拳】!!」


 彼は両手から木の枝を伸ばして玄武に襲いかかる。


「そんなもんでやられるほど甘くねぇぞ!!」


 玄武は水柱拳で応戦する。


「まだまだぁっ!!」


 グリーン・フォレストはさらに腕を変形させて巨大な樹木を出現させ玄武を押し潰そうとする。


「何度やっても同じだ!!」


 玄武は水流を纏った連続パンチで樹木を破壊していく。


「ならばこれでどうだい!? 【黄龍火炎拳】!!」


 今度はファイア・タービンが炎をまとった右ストレートを放つ。


「玄武、私の技を受けてみろ!! 【黄龍雷神拳】!!」


 続いてイエロー・サンダーも強烈な拳の一撃をお見舞いする。


「ぐはっ!!」

「今だ!! いけぇ!!」

「よし!! いくぜ玄武!!」


 レッド・ドラゴンは玄武に呼びかける。


「おう!! 俺に任せな!!」


 玄武は水柱拳を連続で突き出す。


「うおおおおぉぉぉぉーッ!! 玄武流波動砲!!」

 凄まじい勢いの波動砲が次々と放たれ、ファイアとグリーンに命中する。


「くそ……! この程度……!」

「僕たちは負けない……!」


 2人は倒れることなく立ち上がった。


「なかなかタフな奴らだな、だがこっちだって負けられねえ 連続玄武流波動砲!!」

 さらに玄武の放った無数の波動砲が2人に襲い掛かる。


「ぐああぁぁっ!!」

「ううぅ……!」


 レッド・ドラゴンとアリアが追撃を加える、レッド・ドラゴンはレッド・ドラゴンパンチを放ち、アリアは藍月拳の連続突きを叩き込む。


「く……! なんてパワーだ……!」

「だけどまだ終わらないよ……! 【黄龍緑葉連弾】!!」


 グリーン・フォレストは全身から大量の植物を発生させ、その植物の種子を大量に飛ばしてきた。


「うおっ!!」

「きゃあっ!!」

「ぬおおおぉっ!!」

「何をするグリーン・フォレスト!!」


 玄武、レッド・ドラゴン、アリア、それと巻き添えを喰らった朱雀の4人はダメージを負う。


「やったか?」

「いや、グリーン・フォレストよぉ!! 奴らはまだやる気みたいだぜ?」


 グリーン・フォレストの視線の先には種子を飛ばされてなお立ち上がる玄武たちの姿があった。

 

「ちっ、しぶてえ野郎どもだ」

「だが俺たちは諦めない!!」

「そうよ!! 私たちが力を合わせればきっと勝てるわ!!」

「ふっ、そうだな」

「なら俺はお前たちの援護をするぜ」

「頼んだぞレッド・ドラゴン」


 玄武はグリーン・フォレストとファイア・タービンと向き合う。


「いいだろう、相手になってやるぜ」

「かかってこい」


 それぞれの拳法の構えをとるグリーン・フォレストとファイア・タービン、しかし玄武はそこに起死回生の一発を放った。


「【玄武水柱拳】!!」


 玄武は右腕から水流を放ってグリーン・フォレストを攻撃する。


「ぐわああぁっ!!」 


 水流を受けたグリーン・フォレストは後方に吹き飛び壁に激突した。一方、ファイア・タービンのほうにも異変が起きていた。


「な、なんだこれは!?」


 イエロー・サンダーはファイア・タービンの体を見て驚く。


「どうしたファイア・タービン? 一体何が起きているのだ?」


 ファイア・タービンの身体には黒い霧のようなものが現れ、徐々に彼を包み込んでいった。


「ファイア・タービン!! お前、まさか闇属性の力を……」

 イエロー・サンダーはファイア・タービンに起こったことを理解していた。 


「ぐあああぁーッ!!」


 そしてファイア・タービンは完全に闇のオーラに包まれてしまった。


「な、なんということだ……!!」

「お、おい、大丈夫かファイア・タービン!!」

「大丈夫ですよ、彼には私の新たな力の実験体になってもらっただけです」


 そこに現れたのは闇のバトルアクション黄龍であった。


「黄龍……!! お前の仕業だったのか……!!」


 玄武は黄龍と相対する。


「はい、あなた方と戦う前にどうしても確かめたいことがありましてね、そのために彼の闇属性の力を借りたのです、さて、これで邪魔者はいなくなった、後は朱雀さん、あなたの命をいただくとしましょう」

「なに!? 裏切ったのか!! 黄龍!!」

「ええ、あなたはもう用済みです、それに私は最初から仲間になったつもりなどありませんよ」

「貴様……! 許せん!!」


 朱雀は怒りに任せ黄龍に向かって突進する。


「無駄です、【黄龍黒曜連弾】」


 黄龍の両手から放たれた無数の弾丸が朱雀を迎撃する。


「ぐあぁっ!!」

「これで終わりです、朱雀さん」

「ぎゃああああああああ!!! 私は何度でも復活……あああああああ!!!」


 朱雀は消滅した、だがすぐに再生して復活する。


「無駄な足掻きですね、ならば永遠に消え去るといいでしょう、はあっ!!」

「ぐはっ!!」


朱雀は今度こそ消滅した。そして黄龍は残った三銃士を吸収する、すると黄龍の肉体は巨大化し、その身に纏っていた鎧も禍々しいものへと変わっていく。


「ふふふ……素晴らしい……これが私に秘められた本当の力ですか……!」


 巨大な姿となった黄龍は玄武を見下ろしながら言う。


「玄武、貴方は実に役に立ってくれた、だがそれもここまでです、せめて最期くらいは楽しませてあげましょう」

「ふざけるな……! 俺は負けない……! 俺が負けるわけがないんだ……! うおおぉぉーッ!!」


 しかし玄武の攻撃はことごとく避けられてしまう。


「ふんっ!」

 黄龍は玄武の顔面を掴み、そのまま地面に叩きつける。


「ぐああぁっ!!」

「無様なものですね玄武、所詮は人間、我々のような神には勝てないのです」

「何!? 貴様!! 神だったのか!!」

「ふふ、では冥土の土産に教えてあげましょう、私はかつてこの世界を闇に閉ざした闇のバトルアクションそのものなのです」

「何!?どういう意味だ!!」

「言葉通りの意味ですよ、私が闇に染まりきった時、世界は闇に支配されることになる、その時こそが神の降臨の刻となるのですよ」

「なんだと……! そんなことさせるか!!」

「無理ですよ、玄武、貴方はここで死ぬのです、それともまだ抵抗しますか?」

「当たり前だ!! 俺は最後まで戦う!!」

「ふふ、ならば見せてみなさい、あなたの力を」

「うおおぉぉーッ!!」


 玄武は全身全霊の気合いで攻撃するがやはり当たらない。


「【玄武水柱拳】!!」


 玄武が放った水柱は黄龍には届かなかった。


「ふっ、こんなものですか、まあいいでしょう、そろそろ終わらせますよ」


 そう言って黄龍は玄武の頭を掴む。


「ぐっ……!!」

「死になさい、玄武」


 その時である、玄武の前に突如として鳳凰が現れた。


「何ッ!? 鳳凰!!?」

「なんだと!?」

「馬鹿な!?」

「どうしてここに……」

「フェニックス……?」


 突然の出来事に一同は動揺していた、鳳凰は玄武にテレパシーで語り掛ける。


「玄武、あなたの力はそのようなものではないはず、あなたは伝説なのです、いまこそあなたはバトルアクションのあらたな伝説を刻む時なのです!!」

「俺が……伝説!?」

「そうだ!! 君がやらなければ誰がやる!! 君の拳は人々の希望の光なのだ!!」

「みんなの……希望……」

「そうだ!! 君は人々に勇気を与える存在でなければならないのだ!!」

「わかった……やって見せるぜ!! 【玄武伝説拳】!!」


 玄武の身体から凄まじいオーラが発生し、黄龍を吹き飛ばす。


「ぐおぁっ!! な、何だと……!!」

「玄武!! 頑張れ!!」

「負けるなよ玄武!!」

「いけえぇ!! 玄武!!」


 仲間たちの声援を受け、玄武は立ち上がる。


「みんな……ありがとう……!!」

「玄武!! 私は信じています!! あなたなら必ず勝てると!!」

「ああ!! いくぞ!! 【玄武流波動砲】!!」


 玄武の渾身の一撃が黄龍に炸裂する。


「ぐあああぁーッ!!」

「やった……のか……?」


 しかし、黄龍は倒れていなかった。


「くくく……見事です、まさかこれほどの力を隠していたとはね、ですが、私を倒すことはできませんよ、なぜなら、私の力はまだ完全ではないのですからね」

「なんだって!?」

「私の完全なる力を見せてあげましょう、ふん!!」すると黄龍は巨大になった肉体をさらに巨大化させていく。

「なっ……!?」

「これが私の真の姿でございます、さしずめ名前は【バトルアクション・黄龍パーフェクト】といったところでしょうね」

「ふっ、それなら俺は【バトルアクション・玄武レジェンド】といったところか」

「完全と伝説ですか、いいでしょう、どちらが強いか勝負といきましょうか」


 黄龍と玄武は互いに向かい合う。


「いくぞ……黄龍……!」

「かかってきなさい……玄武……!」


二人の究極のバトルが今始まる。玄武VS黄龍の戦いが始まった。

「はあっ!!」


 玄武は黄龍に攻撃を仕掛けるが、黄龍は簡単に避けてしまう。


「無駄ですよ、私は完璧です、隙などありません」

「ならば……これだ!!」


 玄武は黄龍の背後に回り込み攻撃するがそれも避けられてしまう。


「どうしました? そんな攻撃では私には当たりませんよ」

「それはどうかな?」


 すると玄武の身体を黄金の光が包み込む。


「なに!?」

「俺の新たな技だ!! くらえ!!【玄武超神速移動術】!!」


 玄武は一瞬にして黄龍の背後へと回る。


「何!?」

「これで終わりだ!! 【玄武流波動砲】!!」


 玄武の放った渾身の一撃が直撃したかに思えたが、黄龍は平然と立っていた。


「ば、馬鹿な……!!」

「ふふ、今のはかなり効きましたが、この程度ですか?」

「くそ……!!」

「玄武!! 諦めちゃダメよ!!」

「そうだぜ!! お前は俺たちの英雄なんだろ!? こんな奴に負けてんじゃねえよ!!」


 仲間たちは必死で玄武を応援するが、玄武の心は既に折れかけていた。


「玄武!! あなたはもっと強いはずです!! 自分の力を信じるのです!!」

「フェニックス……俺は……!!」

「そうよ!! あなたには仲間がいるじゃない!! あなたは一人なんかじゃ無いのよ!!」

「そうだったな……ありがとう、みんな……!!」

「ふっ、まだやる気ですか、もう勝敗は見えているというのに」

「いや、違う、俺の勝利は決まったも同然だ」「なんだと……!?」

「なぜなら、これから起きる奇跡が、この戦いを終わらせるからだ!!」

「何を言って……」


 その時である、突然、空から無数の光の矢が降り注いでくる。


「なにっ!?」

「これは……!?」

「いったいなんだよ……?」

「見て!! あれ!!」



 フェニックスが指差す方を見るとそこには朱雀の姿があった。


「朱雀!!」

「いっただろ、俺は何度でも復活するってな」

「まさか……あんたは……」

「ああ、その通り、俺の本当の名は【バトルアクション・朱雀ゴッドフェニックス】!! そして、俺は不死鳥を超えた存在となったのだ!!」

「なん……だと……!?」

「玄武!! 待たせたな!! ここからは私たちが戦う番よ!!」

「みんな……」

「さあ、玄武!! 反撃開始よ!!」

「みんな……ありがとう!! いくぞぉーッ!!」

こうして、玄武たちによる最終決戦が始まった。

「みんな!! いくぞ!!」

「ええ!! 【四聖獣合体】!!」


 すると4人の身体が光に包まれる。


「うおおおっ!!」

「すごいパワーを感じるわ!!」

「これが【四聖獣合体】か!!」

「なんていう力だ!!」

「これなら勝てる!!」

「いくぞ!! 【玄武流波動砲】!!」

「くらいなさい!! 【朱雀火炎放射】!!」

「はああああああ!!」


 二人の必殺技がぶつかり合う、黄龍は必殺技は受けて立つつもりなのか回避しようとしない。


「ぐぬぅーッ!!」

しかし、さすがの黄龍も二人分の攻撃を受け止めることはできず吹き飛ばされてしまう。

「くくく……見事です、ですが……この程度では私は倒せませんよ」

「ふん、なら試してみるか? 【玄武流波動砲】!!」

「【青龍水龍拳】!!」

「【朱雀螺旋撃】!!」

「【鳳凰烈火斬】!!」


 次々と放たれていく必殺の一撃、黄龍はそれを全て受け止める。


「無駄ですよ……私を倒すことは……ガハッ!!」


 黄龍の口から血が流れる。


「ふっ、どうやら限界のようだな、黄龍よ」

「どうやらそのようですね」

「だが、安心しろ、すぐに楽にしてやる」

「ふっ、やってみなさい」


 黄龍と玄武の戦いは最終局面を迎えようとしていた。


「これで終わりだ……黄龍……!」

「玄武……私はあなたを認めましょう……ですが……私はまだ負けていない……!!」

「往生際が悪いな、いいだろう、ならば俺の手で引導を渡してやろう」

「できるものならね……!!」


 黄龍は最後の力を振り絞り、玄武に襲いかかる。


「これで本当に終わりだ!! 【玄武流波動砲】!!」

「【黄龍陽陰拳】!!」


 玄武の放った一撃が黄龍の心臓を貫く。


「ぐはぁっ……!!」

「どうだ? 俺の勝ちだ」

「ふふ……確かにあなたの勝利でしょう……ですが……私の敗北ではありません……!!」

「なに……?」

「見ていてください……私が……本物の神であることを……!!」

すると、玄武の身体を黒い炎が包み込む。

「まさか!! 俺を取り込む気か!?」

「そうです、あなたと一つになるのです……!!」

「ふざけんな!! 誰がお前なんかと同化するかよ!!」

「くくく……残念ながらあなたの意思は関係ありませんよ……!!」

「くそ……離しやがれ……この野郎……ッ!!」

「無駄ですよ……あなたはもう逃れられない……さあ、我が肉体よ……今こそ復活の時……!!」

「させるかよ!!」


 玄武は必死で抵抗するが、徐々に意識が薄れていく。


「ちくしょう……こんなところで俺は……!!」

「ふふ……さよなら、玄武……あなたとの日々は悪くなかった……」

 その時、玄武の体が黄金に光輝いた。

「なっ!? これはいったい……!?」

「玄武……!! お願い、目を覚まして!!」


 フェニックスの声が聞こえてくる。


「ここは……俺はいったい……」

「良かった……やっと正気に戻れたのね……」

「そうだ……俺たちは黄龍と戦って……それで……」

「ええ、そうよ、私たちは負けたの……」

「そうか……でも、なんで俺は生きてんだ……?」

「それは……」


 フェニックスが何かを言いかけた時、突然、地面が揺れ始める。


「な、なんだ!?」

「玄武!!あれを見て!!」


 フェニックスが指差す方を見るとそこには巨大な黄金の龍の姿があった。


「あれは……いったいなんだよ……」

「あれこそが黄龍の正体です、彼の神としての姿、そして、あの方の本当の姿……」

「あの方……? 誰だよそれ……っておい!! 待てよ!! どこに行くつもりだ!!」

「私はいかねばなりません、この世界を終わらせた者を裁きに」

「そんな……!! じゃあ、俺たちはどうなるんだよ!!」

「ご心配なく、またいつか会えるはずです、では、さらばです」

「ま、待ってくれ!! 頼む!! 行かないでくれ!! 一人にしないでくれぇーッ!!」


 玄武の叫びも虚しく、鳳凰と黄龍は空の彼方へと行き、そして爆発した。「うわああああああッ!!!!」


 玄武の絶叫が響き渡る。


「玄武、しっかりして!!」

「玄武、お前は一人なんかじゃない!! 俺たちがいるじゃないか!!」


 アリアとレッド・ドラゴンが玄武を励ます。


「アリア……レッド・ドラゴン……? 俺は……一体何をしてたんだろう……? どうしてここにいるのかも思い出せない……」

「大丈夫、今はゆっくり休みなさい、戦いが終わったら全部話すから」

「そうなのか……わかった……ありがとう……みんな……」


 玄武は眠りについた。


 そして一か月後、玄武は青龍王国の港にいた。


「本当に行くのか、玄武」

「寂しくなるわね、玄武」


 アリアとレッド・ドラゴンが話しかける。


「ああ、世話になったな、二人とも」

「別にいいのよ、仲間なんだし」


 すると、玄武は急に頭を下げる。二人は驚いた。まさか玄武が自分に対して謝るとは思わなかったからだ。


「本当に世話になった、俺は外国に行く、青龍王国はアリアとレッド・ドラゴンが守ってくれ!!」

「えっ……?」

「ちょっ……!?」

「俺がいなくてもちゃんとするんだぞ、いいな!!」

「ちょっと待ちなさいよ!! いきなり何言い出すのよ!!」

「そうだぜ!! 俺だってまだ強くなってねえのに!!」

「安心しろ、すぐに戻ってくるさ」

「どういうことなの? 説明してくれないとわからないんだけど?」

「俺にはやるべきことがある、だから一旦別れるだけだ」

「そのやることってなんだよ……?」

「それは言えない……だけど必ず戻る、約束する」

「そう……わかったわ、私、信じてる」

「マジかよ……俺はまだ納得できねぇよ!!」

「お前ならできるはずだ!! それにお前は強い!! もっと強くなる!!」

「くそ……仕方ないか……」

「そういうことだ、それじゃあな!!」


 そして、玄武は船に乗り込んだ。


(これで良かったんだ……俺はもう……大切な人を失いたくない……)


「玄武、また会いましょう!!」

「玄武、早く帰ってこいよ!!」


 二人の声が聞こえてくる。玄武は振り返らずに手を振った。船は出航していく。


「さようなら、玄武……どうか無事で……」


フェニックスの呟きが波の音と共に消えていった。


~続く~

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