第14話 山小屋
内藤たち特別捜査班が火影蓮を追う中、復讐に燃える一人の男がその影を追い始めていた。涼介だ。彼はかつて火影蓮の手によって家族を失い、怒りと悲しみで自分の人生を賭けるように、この組織を壊滅させることを誓っていた。彼は独自のルートで情報を収集し、どんな小さな手がかりでも見逃さず、執拗に彼らの拠点を探り続けた。
涼介の執念は、彼の周囲にも影響を与えていた。彼は警察とは異なる方法で火影蓮に接触を図り、裏社会の情報屋たちから噂を引き出し、ついに火影蓮の主要メンバーが集まる密会場所を突き止める。そこは岐阜の山中にひっそりと佇む廃工場。夜になると冷たい霧が立ちこめ、辺りは異様な静寂に包まれる。まさに、影に潜む組織が動きやすい場所だった。
涼介は一人で工場に乗り込み、影のように慎重に進んでいった。彼は自分を抑え、確実な復讐の機会を待つ。だがその瞬間、廃工場の中からかすかな声が聞こえてきた。火影蓮のメンバーたちが交わす冷ややかな会話、そしてその中に、涼介の家族を奪った張本人であるリーダーの声があった。涼介の体は無意識に緊張し、握りしめた拳が震えた。怒りが胸の奥から湧き上がり、彼の復讐の炎をさらに燃え上がらせる。
だが、涼介はその場で飛び出すことを自制し、敵の動きを探ることに集中した。火影蓮が次に仕掛けようとしている犯罪計画の詳細が聞こえてくる。彼らはウイルスを使ってシステムを破壊し、大規模なインフラ混乱を引き起こす準備をしていた。その計画は都市全体に甚大な影響を及ぼし、無数の人々が犠牲になることが避けられない。
涼介の復讐の念は新たな決意へと変わる。自らの手で火影蓮を止めなければ、再び大勢の人が悲劇に巻き込まれることになる。涼介はその場を後にし、密かに火影蓮の次なる動きを阻止するための準備を始めた。
彼の心には、家族の笑顔と、その笑顔を奪った火影蓮への怒りが渦巻いている。この戦いはもはや単なる復讐ではなく、罪を背負った者たちへの裁きとなったのだ。涼介の復讐劇は、闇の中で静かに再び幕を開けた。
青龍署の刑事たちは、火影蓮の背後に潜む闇を解明するため、さらに捜査を続けていた。リーダーである日向刑事は、これまでの手がかりを一つ一つ見直し、組織の動きを追うことに集中していた。日向はかつて火影蓮によって失われた人々の無念を晴らすため、自身の信念と職務に賭けて、この凶悪な組織を追い詰める覚悟を固めていた。
チームのメンバー、例えば若手の片桐刑事や情報分析に長けた滝本刑事も、各自の役割を果たしながら共に捜査を進めていた。彼らは連携し、膨大な情報の中から火影蓮の活動に繋がる可能性がある証拠を根気よく集めていった。とある日、片桐刑事が火影蓮の資金ルートに関する重要な手がかりを掴んだ。それは表向きの企業や暗号通貨を使った洗浄ルートであり、組織の資金源がいかに巧妙に隠されているかを示していた。
その一方で、滝本刑事は情報収集により火影蓮のメンバーが定期的に集まるとされる隠れ家の位置を突き止める手掛かりを得た。そこは岐阜県内の小さな町にある古びた山小屋で、外部からは廃墟のように見えるが、実際は内部で様々な不正が行われている可能性があった。
日向刑事は、この情報をもとに現場への突入計画を立て始めた。周到な準備が必要だが、火影蓮の犯罪を一刻も早く食い止めなければならないと感じていた。部下たちと作戦会議を行い、慎重にシミュレーションを重ねる。日向は捜査方針を明確にし、火影蓮のリーダーを捕まえるための最終的な準備を整える決意を固めた。
現場突入の日、青龍署の捜査班は緊張の中、慎重に山小屋へと近づいていった。日向刑事は内心の焦りと決意を抱えながら、部下たちに冷静な指示を出し、目標である火影蓮のリーダーが姿を現す瞬間を待った。彼らの使命感と共に、闇の組織への捜査がついに本格的に動き出したのだった。
山小屋に向かう車内。日向刑事は、静かに窓の外を見つめながら、今夜の作戦について頭を巡らせていた。車内には緊張が張り詰め、微かなエンジン音が響くのみ。隣では片桐刑事と滝本刑事がそれぞれの役割を確認し合っている。
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「日向さん、確認ですが、俺たちは裏手の入口から進入しますね」
片桐刑事が声を潜めて問いかけた。
「ああ、表側は防犯カメラも多く、気付かれる危険がある。裏手にある隠れた入口から少人数で侵入し、奴らのリーダーがいる部屋を目指す」
日向刑事が低く応じた。
「俺は外で監視に当たります。逃げようとする者がいれば、すぐに追いかけるつもりです」
滝本刑事が落ち着いた口調で続けた。
「頼む。今回の突入で、奴らの資金ルートも封じられれば、火影蓮に大きな打撃を与えられる。油断はするな」
日向刑事はじっと前方を見据えたまま、静かに言葉を紡いだ。
「了解です、日向さん」
片桐刑事は少し息をつき、意を決したように頷いた。
滝本刑事が日向を見つめ、ふとその口調を潜めて訊ねる。「日向さん、あんたがここまで全力で動くのには、何か特別な理由があるんじゃないですか?」
日向はその言葉に一瞬反応を見せ、目を伏せた。しばらく沈黙が流れた後、ぽつりと口を開いた。
「……俺には、かつて火影蓮に命を奪われた仲間がいる。奴らに命を奪われた無念を晴らしたい、ただそれだけだ」
重い沈黙が車内に流れたが、片桐がそれを断ち切るように、力強くうなずきながら言った。
「日向さん……俺たちも同じ気持ちです。必ず成功させましょう」
「そうだ、ここまで来たんだ、奴らを根絶やしにしてやる」滝本刑事も深く頷いた。
「ありがとう、お前たちがいるから、俺もここまでやってこれた……」日向刑事は小さく息をつき、ふっと顔を上げた。「もうすぐ到着だ。最終確認をして突入準備を整えよう」
二人は静かに、しかし確固たる意志で頷いた。
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車が停まると、刑事たちは素早くそれぞれの持ち場へと移動していった。日向刑事は一瞬だけ夜空を見上げ、そして心の中でそっと呟いた。「待っていろ、今度こそ、お前たちの無念を晴らす時が来たんだ」
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