第13話 ナイトハンター

 岐阜の街並みを背景に、若者たちの間で密かに話題になっている位置情報ゲーム「ナイトハンター」がある。このゲームは、現実の地図と連動し、特定の地点でミッションをクリアすることでポイントが貯まる。だが、ただのゲームと思われていたこのアプリには、実は危険な裏の顔が隠されていた。


 凱斗は「ナイトハンター」を始めてからというもの、ゲームが進むたびに現実世界で奇妙な力を得ることに気づき始めた。初めは「偶然」だと思っていたが、レベルが上がるごとに新たな魔法のような能力が開花していくのだ。


 最初は岐阜の象徴的な場所、岐阜城の麓で行われた「レベルアップミッション」だった。謎の指示に従い、夜中に城の周りを歩いていると、視界が異様に鮮明になり、遠くの物音まで聞こえるようになる「超感覚」が芽生えた。驚きと興奮で胸を躍らせた凱斗は、その後もゲームを続け、他のミッションにも挑戦していく。


 岐阜市内の神社や旧町並み、さらには洞窟や廃トンネルなど、岐阜の歴史的な場所や怪しげなスポットに誘われるようにして、次々とミッションをクリアするたびに、凱斗は新たな魔法を手に入れるようになった。たとえば、川沿いの祠でクリアしたミッションでは「水の操縦術」を覚え、気を集中すれば水を自在に動かせるようになった。また、山中の洞窟での挑戦では「影に潜む」能力を得て、影の中に身を隠し姿を消せるようになった。


 だが、ゲームの進行とともにミッションの内容が次第に危険で犯罪めいたものへと変わっていく。例えば、商店街に設置された宝箱を「盗む」よう指示されたり、一般人に「見えないように」特定のオブジェクトに触れるよう求められたりと、法を犯しかねない指令が増えていく。凱斗も最初は不安を覚えたものの、得られる魔法の力が増すごとに、自分の中でその不安は次第に薄れ、次第にゲームに依存するようになっていった。


 ある晩、岐阜城の最上階に辿り着くと、ゲーム内で「最後の試練」と呼ばれるミッションが現れた。その内容は、他のプレイヤーを見つけ出し、魔法の力で倒すこと。プレイヤー同士が争い合い、最後の生き残りだけが真の力を手に入れるという、ゲームの本当の目的が明かされた瞬間だった。


 凱斗は戸惑いと恐怖に苛まれたが、すでにゲームへの依存と力への欲望は後戻りできないところまで達していた。彼は岐阜の夜の街に潜む、他の「ナイトハンター」プレイヤーたちを探し出し、ひとりずつ追い詰めていく。街中の誰も気づかない場所で、凱斗と他のプレイヤーたちの戦いが激しさを増していく中、凱斗は岐阜の歴史や伝説に基づいた魔法を次々と覚えていく。


 やがて、岐阜の伝説に語り継がれる神秘的な魔法が、凱斗の中で目覚める。だが、それは力に溺れた者にとっては呪いにもなりかねないと知らされるのは、もう少し先の話であった。


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