第11話 妖しい夜
涼介と綾は、ドライブの途中、少し人気のない静かな場所に車を停めた。周囲は木々に囲まれ、柔らかな日差しが窓から差し込み、二人だけの世界を作り出しているようだった。車の中で流れる音楽が、なんとなく二人の間の距離を心地よく埋めていた。
涼介は、ふとした拍子に隣に座る綾を見つめた。綾もその視線に気づき、はにかむように微笑んだ。涼介は心臓の鼓動が少し早くなるのを感じながら、意を決してそっと手を伸ばした。
「綾…」と優しく呼びかけると、彼女も静かに頷き、涼介の方に顔を向けた。二人の視線が交差し、言葉にしなくても伝わる何かがそこにあった。
ゆっくりと涼介が彼女に近づき、そっと唇が触れ合う。柔らかな感触に、互いの温もりが一瞬で広がっていく。二人は自然に手を重ね合わせ、さらに深いキスへと進んでいった。
車の中の静かな空間で、二人の世界はより一層縮まったようだった。忙しい日常から解放され、ここだけが二人のための特別な場所のように感じられた。
車内の空気が徐々に甘く、妖しい雰囲気に包まれていく。涼介は、少し乱れた綾の髪にそっと触れ、指先で撫でるように絡ませた。彼女の肌に触れるたび、涼介の心臓の鼓動がさらに高鳴るのがわかる。綾も涼介の手に身を委ねるように、ゆっくりと彼に近づいていった。
二人の距離がさらに縮まる中、涼介は綾の首筋に唇を寄せ、そっとキスを落とす。その瞬間、綾は小さく息を漏らし、彼の肩に手を添える。二人の吐息が混ざり合い、さらに熱が帯びていく。
車内の薄暗がりの中で、二人の影が絡み合い、まるで周囲の世界が消え去ったかのような感覚に浸る。外から漏れる微かな街灯の光が、二人のシルエットを浮かび上がらせ、静かな情熱が流れる空間に妖しい彩りを添えていた。
互いに触れ合い、相手の温もりを感じることで、今この瞬間が永遠に続いてほしいという気持ちが、二人の間に流れていた。
火影蓮は、新たな暗躍を進めていた。表の社会には決して姿を見せず、影の中で緻密に計画を練り上げる彼らの目的は、社会の脆弱な部分に突き刺さるような、一撃必殺の犯罪を成し遂げることだった。
今回の標的は、都市の主要インフラと金融システム。火影蓮は、これまでの犯罪手法を進化させ、サイバー空間とリアルの両面で同時攻撃を行う計画を着々と準備していた。特にリーダーは、新しい暗号技術を活用した情報の密売ルートを設け、国内外にわたる犯罪ネットワークを築いていく。彼らは一夜にして大量の個人情報と機密データを奪取し、混乱に乗じて株式市場や仮想通貨の相場を操作し、莫大な利益を得ることを企んでいた。
火影蓮のメンバーは、徹底した隠密行動と偽装工作のエキスパートであり、決して自分たちの存在を表に出すことはなかった。仮想のデジタル・アバターや偽造された身元を駆使し、操作されている情報の発信源を次々に変え、警察や追跡者の手を逃れ続ける。彼らはまるで、火の影が消えないように、追跡不可能な存在として地下世界でその名を轟かせていった。
だが、この巨大犯罪組織の存在は、少しずつ警察にも認識され始め、特別捜査班が結成されることとなる。内藤警部をリーダーとするこの捜査班は、火影蓮の謎を解き明かし、彼らの犯罪活動を阻止しようと懸命に調査を進めるが、証拠のひとつも掴むことができず、苦戦が続く。火影蓮は影の如く消え去り、再び出現する予測不能な犯罪者集団であり、内藤たちの捜査をことごとく裏をかいていった。
火影蓮は次なる一手を狙い、さらに社会の闇へと入り込んでいく。
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