─帰還─
「親父……なのか…?」
「あぁ、そぅだ。凪……お前の嫁は……強すぎねぇか?」
「………。このくそ親父!!なんで何十年振りかに会った息子に対しての第一声がそれなんだよぉぉぉ!!もっと選べやぁ!!」
何故こんな事になっているのか……時は遡る。
~~~~~~
「そー言えばパパさんは……??」
凛鳴が顎に人差し指を当て首を傾げると、
「「「あっ!」」」 と。皆が思い出した。
「大変です!!私が回復して来ますー!」
橘はそう言ってグリザードの元へと駆け寄った。
「大丈夫ですか!?゛聖光の癒し ゛」
手の平をグリザードにかざすと緑色の光が包み込んでいく。その光はまるで森の妖精が宿るかのようだった。
「…ぅ……。」
グリザードは目を覚ますと意識を確かめるかのように頭を横に振った。そして、
「くそ、気絶してたか…。助かった!さんきゅーな。」
「いえいえ、無事でなによりです!」
橘はお礼を言われると遠慮がちに顔の横で両手を振った。
「なぎなぎ、パパだよ。会ってきたら?」
「え?親父!?あの人角生えてんだけど……」
「何言ってるの?凪くんも生えてるじゃん。」
そう言われ、凪は自分の額へと手を持っていった。すると、確かに角のような感触があった。
「マジかよ……。」
「ほら、そんなの気にしてないでほら、行った行った。」
梓に促され、凪はグリザードへとゆっくりと歩みを進めた──
そして冒頭に戻ります。
はい、俺悪くないー!!
「いやだってよ、お前の嫁たちは、インパクトが強すぎてよ!」
「待ってくれ、嫁たち??たちってなんだよ……」
凪は嫌な予感に顔を引き攣らせた。
「あ?そのまんまだが?梓嬢ちゃんだろ。そして、橘嬢ちゃん。もしかして……結界の嬢ちゃんもそうなのか!?」
「違うからね!?そもそもまだ誰とも付き合ってもいないんだけど!?」
どうやら嫌な予感が的中したらしい。どーしてそんな話になってるんだよ…。
そして、また一人。話をややこしくする女が…
「そうですよ。グリザード…。貴方は間違っています。」
イリスだった。彼女は言葉を続けた。
「だーりんの正妻は、この私です!!」
イリスは自信に満ちた微笑みを浮かべながら、胸を張って宣言した。
「なんだと!?まさか双刃が正妻…。おい、凪!コイツはこんなだが一応女神だぞ!!」
「おい、イリス!話をややこしくするんじゃねぇよ。」
「私は事実を言ったまでですー。」
「どこが事実な──」
そこで、凪の言葉を遮るかのように、肩をトントンと叩かれた。
あーやばい…これ振り向いちゃダメなやつ……。もう振り向かなくてもわかる。絶対に梓…。でもなぁこれ無視したら更にヤバそうなんだよな…さて、どーするか。
凪がそんな事を考えていたら、「なぎなぎ?」と、声が掛かった。
おや?声が普通だな…怒ってないのか。あーよかった。
「どーしたあず──」
凪は振り返った事を後悔した。
そこにはいつも以上に笑顔を振り撒いた梓が立っていた。しかし、その笑顔が逆に恐怖を引き起こした。気のせいだろうか、背後に般若のようなものまで見える。
「これは誤解だぞ!こいつが勝手に言ってるだけでなにかあったとかそうゆう事じゃないぞ?」
「ふーーん。」
そんな言い訳も虚しく、梓はご立腹であった。
しかし、凪の不幸はこれで終わりでは無い。
「へぇ……。凪くんは私と離れてからそんなに沢山のお嫁さん作っちゃったんだ。もしかして、私は蚊帳の外なのかなぁ?知らない女の子も増えてるし。どうなのかなぁ?」
凛鳴であった。もう既に彼女の瞳からはハイライトが消え失せていた。
そして凪は考える事を放棄した。
~~~~~~
「ほ、ほら、このドラゴン肉の串焼きが凄く美味いんだよ!!……イリス。早くお金。」
「どうぞ。」
凪たちはその後、少し観光してから帰ろうという話になり、イリスの転移魔法により、帝都へと場所を移していた。そして、ご機嫌取りの為、皆へと串焼きを配るが逆効果であった。
「……ねぇ、なぎなぎはヒモなの?」
「それ、私も思った。イリスちゃんからお金貰ってたよね?」
「先輩……。私日本に帰ったらたくさん働きますね!!」
「主様よ。二人はいつもそんな感じなのかい?」
「あぁ。そんな勇者様も素敵です。」
「ガハハ!!たしかに正妻と言うだけはあるな!」
凪はもう、どうしたらいいんだよ。と長い溜息をついた。
梓と凛菜は相変わらず怒ってるし、橘は訳分からん。そして、アリシアはなぜだか、助けたのが俺だと分かった途端これだし、お家帰りたい……。
~~~ 閑話休題 ~~~
「それにしても、梓と凛菜だったか、あの詠唱魔法は見事だったぞ。」
「梓先輩、あれ敵さんが使ってたやつですよね?聞いただけで覚えたんですか?」
「そうだよ!アタシ記憶力には自信があってね。なんか出来そうだなって思ってさ!」
え、なんの話?俺見てないんだけど……
「主様を助ける為に、梓と凛菜が一肌脱いだって話だよ。」
「……そうか。悪かったな、二人共。橘とネーヴェも。みんな助けてに来てくれてありがとう。」
凪は皆へと振り返り恭しく頭を下げた。
「気にしないで。アタシたちは今までの借りを返しただけだよ。」
「そうそう。梓先輩の言う通り。凪くんには今まで散々迷惑かけちゃったからね。」
凪は謙虚な態度で二人の言葉に頷き、感謝の気持ちを込めて微笑んだ。
「それで。これからどうしますか?正直に言えば皇帝陛下に報告に行きたいのですが……どうせ、断られるでしょうし。それにあまりこちらの世界にも居られないでしょうから。戻るようでしたら私がゲートを開きます。」
凪はイリスの言葉を聞いて、そうだな。と顎に手を当てなにかを考え始めた。
「梓。今俺らの世界はどうなってるんだ??それに凛菜はどうして?」
「あっちはとりあえずは大丈夫だと思うよ。四天王のベルベットって人も倒したし。」
「私はクラスの子たちを安全な所に預けて、一人で修行してたんだけど、なんか街が空に浮かび上がってくのが見えて、そこに向かってたら梓先輩たちが居たって、感じかなぁ。」
「なるほどねぇ…。そういや、邪神が四天王ぽいやつ倒してたな……。そうなるとあとは魔王だけって事か??」
「なんかアタシたち魔王討伐の旅に出たわけでもないのに、魔王軍と縁があるよね…。」
たしかにそうだ……神楽からは会うなと言われてたぐらいだしな。
そう言えばヴァンスが俺を連れて行くとか言ってたな…魔王が仕向けて来てるって事なのか?
チッ。お望みなら、こっちから出向いてやるよ。
「イリス。ゲートを開け!魔王を殺しに行くぞ。」
「かしこまりました。では、アリシア。貴方には皇帝陛下への報告は任せます。」
「わかりました。では、お気をつけて。」
「一度、森へ転移いたしますね。」
イリスの言葉と共に、華やかな景色から森の中へと瞬時に移動した。そして、到着と同時に、イリスはすぐにゲートを開いた。
「よし、帰ろう。日本へ!」
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