─四天王 ギガス2─




「見えてきたぞ!ギガスだ。」

「おっきいねぇー!」


  いや、でかすぎるだろ!というかコイツ、どこに向かってんだ?俺らに見向きもしねぇな。 とりあえず鑑定っと…………見れないじゃねぇか!


「ネーヴェ、アイツに鑑定使ったけど、なんも見えないんだけど?」

「ん?そりゃそうだろうね。自分よりレベルが高い相手の事は見れないよ。」


  まじかよ、意外と不便だな…


「なぁ坂柳、あんなのどうやって倒したんだ?」

「以前戦った時は普通に斬ったりしてたら倒せた。」


  はぁ…。やっぱり使えねぇ。 全然参考にならねぇじゃねぇか。


「ネーヴェ、あれに魔法物理体制とかあるのか?」

「いや、特にないはずだよ。やたらでかいのが特徴かね。後は殴られたら…主様は大丈夫だけど、他は死ぬかもね。」

「ひぇー。アタシら魔法班は、後方から撃ちまくるから、物理班は、前方をお願いします!」

「そうね、私達はそうした方が良さそうね!頼んだわよ。」

「なぁアンタらも後衛待機でいいぞ。守ってる余裕ないし。」

「なんだとっ!バカにするなよ!当たらなければいいだけだろ。」

「そうだな、坂柳の言う通りだぜ!当たらなければいいだけってもんよ!」


  まぁ聞くだけ無駄だな。片方は馬鹿だし、片方は脳筋。まぁ危ないようなら蹴っ飛ばすか。


「ネーヴェ。最初から全力で行くぞ。」

「ふむ。いいだろう。では。」


 ネーヴェが光を発すると神楽や蒼波、美蕾が光の粒子へと変わりネーヴェの元へと集まっていく。すると少女の姿から大人の姿へと変わったネーヴェが現れた。


「え?え!?なにそれどーゆー事!?」

「あぁ。そういえばこの姿を見せるのは初めてだったね。元々解放していた魔力を全部回収したようなものだよ。」

「ねぇ、ちょっとネーヴェちゃんマジ綺麗じゃん!」

「ずるいです!私と同じぐらいのサイズだったのに……」


  そこ気にしてたんだ…いじってごめんよ。


「ほれ、どうだい?主様よ、惚れ直したかい?」

「お前は元から整った顔してただろ。そもそも惚れてないからね。」

「なぎなぎー。」「凪先輩ー。」

「ふふ。主様に褒めてもらったし頑張るとするかね。」


  梓と橘がジト目を向けてくるが、凪は何食わぬ顔で、ネーヴェの手を取り、キスをして、武装化する。


゛主様よ、今のステータスならしばらく私を維持出来るはず。存分戦うといいよ ゛ 


「ああ、わかった!梓、まずはあいつの頭の上に全力で魔法打っていいぞ。」

「まっかせて!゛アトモス・レイン ゛」


  梓が魔法を放つと見えない核が次々にギガスの頭上へと落ちていき轟音を轟かせる。



「グァァァァァ!!人間共ガァァ!!」


  うわッ…あいつ喋ってるじゃん…怖ッ!


「梓!効いてるみたいだから、撃ち続けていいぞ!村瀬さんも頼む!」

「おっけー!撃ちまくるよッ!」

「了解よ!゛アイスキャノン ゛」

「俺らは今の内に近づいて攻撃するぞ!」

「よっしゃあ!行くぜー!!」


  君たち気合い入ってるのはいいけど、まじで避けてね…?死ぬからね?


「シッ!」

  凪は力強く地面を蹴り、一気に、ギガスの足元へと距離を詰め、勢いを殺す事なく薙ぎ払った。


 スパン


  片脚を切断されたギガスは、バランスを崩し木々などを、なぎ倒しながらその場に倒れ込んだ。


  倒れた瞬間、隕石が落ちたような爆音と共に地面を揺らした。


゛主様よ、どうやらうまく使えてるみたいだね゛


「あぁ。これはすごいな…ギガスが豆腐かと思ったぞ。どうゆう仕組みなんだ?」


゛私の武装化は銃にもなるし剣にもなる。剣を使ってる時に銃を使わないと勿体無いだろう?だから剣を振るう際にトリガーを引いてシリンダー内の魔力の銃弾を爆発させているんだよ。爆発させた振動で斬っている感じかな。いわゆる高周波ブレードってやつだよ。゛


「よく考えたもんだな。よっと!」


  そう言うと凪は、力強くも軽やかにその場を飛び上がる。そのまま身体を回転させながら、落下の勢いを利用し、ギガスの右腕へ剣を振り下ろした。


 ザシュ。

「はい、右腕もらいー!」

「グォォォォオ!キザマァァァ!」


  空中で身動きが取れなくなった凪に対してギガスは、左腕を薙ぎ払わんとする、その時、坂柳が凪に向け斬撃を飛ばした。


「゛一閃 ゛」


  飛んできた斬撃をネーヴェでガードしながらギガスの拳を上手くかわす。


「悪い!助かった!!」

「ふんっ!」

「おいおい、あんちゃんやるじゃねぇか!もう脚と右腕落としたんか!」

「あぁ、後はみんなで畳み掛けて終わりだ。」

「よし、行くぞ!゛一閃 ゛」

「おっしゃぁ!くらえぇ゛破砕連撃 ゛」


  なんかたいして強くないな?ネーヴェが言ってたのとは話が違うな。


゛主様よ、ギガスが弱いのではない。君が強すぎるんだ。私はヴァンスの力を継承する前に勝てなくはないと言ったんだ。゛


  その通りであった。ギガスは決して弱くは無い。そもそも四天王の一柱が弱いわけがないのだ。


  事実、坂柳と国嶋の攻撃はビクともしていないようだった。


「なぁ、あいつらの攻撃って効いてるのあれ?」


゛ふむ。効いてないだろうね。゛


  はぁ。ですよね…仕方ない。俺がトドメを刺しますか。


  地面を蹴り上げ飛びあがろうとしたその瞬間


 キュイン。


「は?なんだ…?今なにか飛んできたぞ。」


 ギガスの腹の辺りに丸く溶け落ちたかのような穴があいていた。


 キュイン。キュイン。


「グギャァギギャガガ!!」


  どこからか無数のレーザーのようなものが、ギガスに向け一直線に放たれているのだ。


 キュイン。キュイン。キュイン。



  あーわかった…これ梓のプロミネンスだ。 あいつ少しは自重しろよ…


゛主様の彼女はおっかないね。魔王軍のNo.4がまるで赤子だ。゛


  いやほんと…俺の出番ほとんどなかったじゃん。でもって彼女じゃないからね?まだ。


「帰ろうか。戻っていいぞ。」




  梓達の元に戻る間ずっとプロミネンスを撃たれ続けてたギガスは既に灰になっていた。


  はぁ。後で魔石だけは回収してやるからな…


「あ、なぎなぎー!!終わったよー!」

「梓、ご苦労様。それと少し自重しような。後ろに居る子達引いてるからね?」

「はーい。」


  凪は梓の頭をぽんぽんとしてあげていると、橘が顔を綻ばせながら走ってきた。傍目から見たら小型犬が尻尾振ってるようにしか見えないだろう。


「凪先輩、お疲れ様でした!回復しますね!゛聖光の癒し ゛」

「俺は怪我してないから大丈夫だよ!多分後から来る二人のが怪我してるかも。」

「山本くん。お疲れ様!なんかあっというまだったわね…」

「あ、あぁ…」


  村瀬はなにか言いたげな目をなぎへと向けていた。


 言いたい事はわかるぞ。ちょっと梓がぶっ壊れすぎてたからな…


 梓は言った、

「ちょっとなに辛気臭い顔してるのよ?四天王を倒したのよ?もっと喜びましょう!」


皆はその言葉を聞くとやれやれと肩を窄めた。


  貴方のせいだからね!?とは言わないでおこう。


「なんだか、急にレーザーみたいの飛んできてギガスが灰になってしまったんだが。」

「がはは。とりあえず魔石だけ回収してきたぞ!」


  そう言いながら二人は戻ってきた。やはり思う所があるらしい。


  うちの子がすみません……


  ん?なんかギガスの魔石小さくね?キングの魔石より少しでかいぐらいか。四天王のくせに…… そもそもあまりにも弱くないか?本当に一柱か?いくら俺が強くなったと言っても、トドメを刺したのは梓だ。今の梓でもヴァンスを相手にしたら勝てると思えない…………いや、気にしすぎか?


「梓、MPたくさん消費しただろ?食べてもいいぞ!」

「え゛!?あんなの食べるのなぎなぎぐらいだよ!いらない。」

「お、おう。そうか…」


  満場一致で断られてしまった。


  誰も要らないと言うので俺が食べました。スキルとか覚えるかなーって思ってたけど、そもそもアイツなんも使ってなかったわ…


「じゃあ帰るかー。」

「なぎなぎおんぶー!」

「ちょっと!梓先輩ばっかずるいですよー!!」


  先程まで魔王軍と戦っていたとは微塵も思えない雰囲気を醸し出しながら、避難場であるビルまで引き返すのであった。




~~~~~~




  凪達は現在、四天王の一柱であるギガスを倒し、森を抜け、とある住宅街を訪れていた。


  その住宅街は、古びた家々が立ち並び、蔦が絡まり、鳥のさえずり響く幻想的な光景だった。彼女は何故このような場所に凪たちを連れてきたのか……それは、彼女が答えてくれるだろう。


「お兄ちゃん。こっちだよ。」


  見た目は10歳くらいだろうか。艶のあるブロンドヘアーに透き通るような青い目をしており、どこか異国の子供と思わせる風貌をしている。


  ギガスを倒し、森を歩いている時に、早乙女が子供が居ます。と見つけてきたのである。


  名前はイリス。家名もなにもない。ただのイリス。 話を聞けば親はいないらしい。


  こんな森の中、ましてや魔物がうじゃうじゃと居る場所に置いていく訳には行かないと、保護する事になったのだが、なぜか俺に懐いてしまった。と言う訳だ。


「おい、どこまで連れて行くんだ?イリス。」

 

  返事は返ってこない。凪の手を引き、ただひたすらに道を進む。



~~~~~~



「ここ。」


  どうやら目的の場所に着いたらしい。


  そこにはポツン。と小さな祠があった。 


  不思議な事に、祠のある周辺だけは荒らされておらず。手入れが行き届いており異様な雰囲気を醸し出している。


  そんな異様な雰囲気を察知したのか誰一人として声を発さない。


  精霊王と、称えられているネーヴェですらも唖然としていて、声を発せなかったのだ。


  祠の中には、水晶らしき物が置いてあり、少し輝いているようにも見える。


「お兄ちゃん。ここに手を置いて。」


  少女は祠の前まで行き、水晶を指差しながら、そう告げた。


  凪は言われるがままに水晶へと手を置いた。


  なぜ素直に?他の者からしたら迂闊すぎると思われるだろう。身体が自然に動き、気づいたら触れていた。としか言いようがない。


  触れると同時に、祠が光を発し始め、凪とイリスだけを包み込んだ。


「ッ…!?」


  梓が咄嗟に手を伸ばすが既に遅く、凪とイリスはその場から消えたのであった。




~~~~~~




「あら?ギガスの反応が消えたわね…まぁいいわ。目的の物は手に入ったし。魔王様もきっとお喜びになるわ。ふふ。」



  この時凪はもう少し考えるべきだった。


  四天王の一柱である、ギガスがなぜ、こんな所に来ていたのか。そしてなにを、探しに来ていたのかを。


  今はまだ知る由もない。



~~~~~~

ここまで読んでいただきありがとうございます!

処女作になりますので、暖かい目で読んでいただけると嬉しいです!

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