─四天王 ギガス─



「ねぇ!どうして起きないの!治療は済んでるんでしょ!?」


  梓は二人が悪いわけではないと分かってはいるが、心とは裏腹にどうしても声を荒らげてしまう。


  それもそのはず、梓の中で凪と言う存在はもはやなくてはならないものであった。


  もはや精神安定剤の変わり、と言ってもいいだろう。


「はい、治療は済んでます…」

「一応スキルを掛け続けてはいますが、後は山本さん次第。と言った所でしょうか…」

「主様よ!お願いだ。闇に呑まれないおくれ…」



「……ん。」

  段々意識がはっきりとしてくる。なんだか身体が暖かい。凪はゆっくりと目を開き、辺りを見渡した。


「凪様!」「ご主人様!」「凪先輩!」「凪の言葉を遮るかのように、梓が飛びついたのである。言葉を遮るかのように、梓が飛びついたのである。

「おい、梓。俺のHPが……」


  いや、辞めておくか。こんな顔見たらなにも言えねぇわ。


「梓。心配かけて悪かった。もう大丈夫だ。」


  梓の背中をポンポンと叩き、大丈夫だから、と何度も言い聞かせるが、彼女は声にならない嗚咽をもらすだけだった。


「主様よ…私が軽率だった。本当によかった。私は自らの判断で君を失う所だった。よく戻ってきてくれた。ありがとう。」


  ネーヴェは顔を曇らせ、気丈にも涙は見せなかったが、全身は小刻みに震えていた。


「ネーヴェ…大丈夫だったんだし、あまり自分を責めるな。お陰で強くなれた。」


  右手は塞がっている為、左手をネーヴェの頭の上に置きぐしゃぐしゃっとしてやると、なにをするんだ!と怒っていた。 


「ははっ。お前はそーゆう顔してた方が似合うぞ。」

「まったく主様は女心をわかっておらん!」

「橘と早乙女さんもありがとうございました。治療してくれたんですよね?」

「凪先輩!よかったです。できれば私も梓先輩のように……」

「いえいえ、ご無事でなによりです。」


  橘がなにか言いかけたが、聞こえなかった事にしよう。それよりもステータスの確認しねぇとな。


────────────────────

山本 凪 17歳 レベル285 人族?

HP 2170/2170 MP 2090/2090

攻撃  1845

防御  1791

素早さ 1812

運   75

侵食度 79%

スキル 精霊召喚、精霊武装

    -神楽-蒼波-星雷-ネーヴェ

    闇の一閃

    冥闇

    幻影

    鑑定眼

    

称号  世界を壊す者

────────────────────

 ………。


「ネーヴェ。俺人間辞めたっぽい。」

「ふむ。おめでとう。とでも言えばいいのかな?」

「いや、全然おめでとうじゃないからね!?」


  そもそも人族?ってなんだよ!ん?……鑑定眼?あいつそんなものまで持ってたのかよ!どうやって使うんだ?鑑定したい相手を見れば勝手に発動すんのか?


  凪の腰辺りにずっと抱きついて離そうとしない梓に視線を向ける。

────────────────────

神崎 梓18歳 レベル72 人族

HP 212/212 MP 620/620

攻撃  52

防御  60

素早さ 89

運   42

魔力  340

スキル アトモス・レイン

    プロミネンス

────────────────────



  ……レベルたっか! え、なにこの子まじで世界滅ぼそうとしてる? MPとかバグってんじゃねぇか…?てゆうか魔力ってなんだよ!俺にそんな項目ないんですけど!?しかもやばそうな名前のスキルあんじゃん…これ絶対都市なくなるやつ…


「あのー梓さん。そろそろ……。聞きたいこともありまして。」

「ん………。わぁ。なぎなぎの左眼きれい…。」


  左眼?なんかついてんのか?


「主様は気付いてないみたいだが、左眼までヴァンスから継承したのかい?」

「あ、私鏡ありますよ!どうぞ。」

「ありがとう!どれど……なんじゃこりゃあ!」


  これじゃただの中二病じゃねぇか! ヴァンスの野郎…


  凪の左眼は金色に光り、さらには紋章みたいなものが浮かびあがっていた。

 

「うんうん。なぎなぎカッコいいよ!似合ってる。てゆうか人じゃないの?子供……作れる?」


「「「ブッ!?」」」


  ちょっと梓さん?いきなりなにぶっ込んで来てるの?精霊さん達があらあら、まあまあとか言っちゃってるからね!?


「い、一旦落ち着こうか」

「そうですよ!梓先輩いきなり何言い出すんですか!?次は私ですからね!?」


  橘ー!?お前も便乗してんじゃねぇ!!


「ふふ。梓よ心配しなくてもいいよ。人族でなかろうと子は成せる。」

「そっか。よかった。」


  だから梓さん!?俺のお腹の辺りで顔をぐしぐししないでくれる!?


「おい、気が付いたんならそろそろ行くぞ!」


  すっかり忘れてたよコイツの存在。


「あ、あぁ、悪い」

「がはは。あんちゃん達はあんな事が合ったのに何も変わんねぇな!」


  国島が俺の背中をバンバンと叩いてくるんだが、地味に痛いので辞めて貰いたい…


「村瀬と早乙女にも迷惑掛けたな。」

「別にいいわよ。魔石を食べ始めた時はびっくりしたけどね。」

「私はヒーラーですので、自分のできる事をしたまでです。」


  コイツら割といい奴らなんだよなぁ。一人さえ除けばだけど。一応ステータス見とくか。


────────────────────

坂柳 和馬 19歳 レベル51人族

HP 210/280 MP 160/270

攻撃  135

防御  100

素早さ 102

運   25

魔力  106

スキル 一閃



国嶋 武史 23歳 レベル53人族

HP 380/430 MP 100/120

攻撃  168

防御  157

素早さ 75

運   39

スキル 破砕連撃

   


村瀬 奈津美 20歳 レベル53人族

HP 200/210 MP 280/350

攻撃  60

防御  52

素早さ 120

運   40

魔力 170

スキル アイスキャノン、フレイムスピア、ウインドカッター、アイスウォール



早乙女 胡桃 18歳 レベル49人族

HP 180/180 MP 300/390

攻撃  35

防御  42

素早さ 104

運   57

魔力  200

スキル ヒーリングリング、浄化の光



橘 小春 16歳 レベル31人族

HP 120/120 MP 100/180

攻撃  23

防御  27

素早さ 61

運   34

魔力  81

スキル 聖光の癒し

────────────────────


  んー。弱くはないが強くもないな…ギガスと戦うのは俺と梓がメインだなぁ。橘は…やばいな紙装甲だ…この子は早乙女さんと一緒に後方待機だな。


「梓さんや。新しいスキル無闇に使っちゃだめよ?」

「え?なんでバレてるし…」

「なんかこの眼のおかげで見えるようになったぽい。」

「むー。わかりましたよ。でかいの相手には使ってみてもいい?」

「あぁ、あいつになら使ってもいいぞ!」

「やったねん!たくさんぶっ放すぞー!」


  なんかこの子性格変わってきてないかい?大丈夫?俺のせいとか言わないよね…


「あのぉ、梓さん?性格…変わりました?」

「わかる!?アタシもそれ思ってたの!なんかなぎなぎに染まって来てる気がするー!」


  やっぱり俺のせいでしたか…すみません。悪気はないんです。


「ほら、行くぞ。お前ら!」

「仰せのままに、勇者様。」

「ぷぷぷ。なぎなぎ似合わないよそれ。」



  凪はそのままそっぽを向き、坂柳に着いていくのであった。

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