─新たな力─
「なぎなぎ。はい、あーん。」
「ん。うまいッ!」
「凪先輩これもおいしいですよーッ」
凪達は、避難場所から少し北に移動し、途中で見つけたコンビニで、梓と橘から御奉仕タイムであった。
「凪様。なんですかこの美味しい食べ物は!!」
「チョコレートおいしい。」
「旦那様わたくしにもあーんをしてください。」
「主様よ、このコーラ?とかいうやつ喉がくーっとなるぞ!」
これから魔王軍の四天王と戦うのになぜこんなのんびりしているかって?
「おい、そうゆうのはよそでやってくれないかな?目障りだ。」
「あ?てめぇが疲れたとか言ってっから休憩させてやってんだろーが!」
原因はもちろんこのくそ勇者である。坂柳がそろそろ休憩しないか?と10分おきに言ってくるもんだから仕方なく滞在しているのであった。
「僕達は魔王軍の討伐に来てるんだぞ!イチャついてる場合じゃないだろう!」
「こら、辞めなさい。和馬が休憩したいと言ったんでしょうが。羨ましいのはわかるけど、文句を言うのは筋ちがいよ。」
どうやら村瀬が坂柳のストッパーになってるみたいだな。まともな奴がいて助かったぜ。
「がはは。そりゃあ、あんな別嬪さん達を侍らせてたら羨ましいよ。なぁ?和馬!」
「なっ…!?別に僕は羨ましいとか思っていない!」
「はぁ。やれやれですわね。よいしょっと…山本さん。少しよろしいでしょうか?」
「ん?あぁ。早乙女さんだっけか?なんだ?」
「はい。自己紹介が遅れました。早乙女 胡桃と申します。和馬さんが迷惑をかけたようですみませんでした。」
「別にあんたが気にする事じゃねぇよ。そこの元勇者が一人で騒いでるだけだ。」
「おい、胡桃!別に俺は──」
坂柳の言葉を遮るかのように、早乙女がキッと睨みを効かせると、坂柳は大人しく下を向き口を噤んだ。
「和馬さん。私何度も言いましたよね?ここは異世界ではないのだから自重して下さい。と。」
はぁ。まじでこいつら邪魔でしかないな。あまりにもうるさいと殺したくなってくる。
「ほら、なぎなぎ。そんな顔してないで。ツナマヨ食べる?」
「梓ー。蒼波がツナマヨ食べる!」
さしずめ凪のストッパーは梓たちなのだろう。
「じゃあ俺は梅を貰おうかな。」
「旦那様!わたくしがあーんを。」
「ちょっと!ずるい!てゆうかずっと気になってたんだけどさ…この子たちは誰なの?また女の子増えてるじゃん!?なぎなぎー……」
梓はそう言うと、ネーヴェと美蕾を指差しながら思い切りジト目になって、凪を睨みつける。
凪は言った、
「二人とも俺の新しい契約精霊だから仲良くしてやってくれ。」
と。それでもなお、睨みを効かせている梓に向かってこっちおいでと片腕を広げると、梓はパァっと顔を綻ばせ猫みたいに擦り寄って来るのであった。
一方元勇者は早乙女の前で正座をし、お説教をされている最中であった。
~~~~~~
その後、更に北へと進むと、徐々にギガスのものであろう足音が響いてきた。
「近づいてきたな…もうそろそろ見えてもいいと思うんだが。」
「凪様、魔物が寄ってきています。」
「だそうだ。坂柳。行ってこい。」
凪はそう言うと、同時に顎をしゃくり、さっさと行けと言わんばかりの態度を示した。
「僕を顎で使うな!それにさっきからなんで僕達にに戦わせるんだ!君たちは、まだなにもしていないじゃないか!」
「だってお前ら弱いじゃん。ギガスと戦闘になったら一瞬でぺちゃんこだぞ?だから少しでもレベルを上げて役に立ってくれ。」
「なんだと!僕たちは、一度異世界でギガスを倒しているんだぞ!」
「落ち着いて和馬。山本くん、聞いときたいんだけど、貴方のレベルはいくつなの?私達は平均50ぐらいあるし、弱くはないはずよ?」
そーいえば、ヴァンスと戦った以降見てなかったな。
ステータス!
────────────────────
山本 凪 17歳 レベル135人族
HP 670/670 MP 590/590
攻撃 345
防御 291
素早さ 312
運 75
侵食度 79%
スキル 精霊召喚、精霊武装
-神楽-蒼波-星雷-ネーヴェ
称号 世界を壊す者
────────────────────
ッ…!?レベル上がりすぎだろ…
「135だ」
「「「「ッ……!?」」」」
「135だと?嘘をつくな!」
「嘘なんかついてどーするんだよ。なぁ、ネーヴェ。ヴァンスってそんなレベル高かったのか?倍以上になってるんだが」
「そうだね。推定150ぐらいじゃないかな?そう言えば魔石は食べたのかい?ギガスと戦う前に準備をしておいた方がいいと思うよ。」
「いや、まだだ……そうだな、試しに食べてみるか。」
魔石を取り出してみるが、改めて見るとやはりでかい。それに禍々しさを放っていた。
ホントに食べてもいいやつなのこれ?
「なんかあったら頼むな!」
「任せたまえ。」
凪はそう言うとガリッボリッとお煎餅でも食べてるかのように少しずつ嚙り始めた。
相変わらず味もそっけもないな…味があればもっと食べてもいいんだけどなぁ。
平然と食べる姿に周りはドン引きである。さすがに梓もこれには苦い顔をしていた。
「ふぅ。んー。特になにもな…ッ…ガハッ…。」
食べ終えたかと思えば喉から血反吐を吐きだした。それと同時に凪の目、耳、鼻からも溢れんばかりの血が地面へとこぼれ落ちた。
まずい…これ食べちゃダメなや…つ…
「まずい!!闇に呑まれている。橘と早乙女だったか、二人とも治癒魔法を頼む。急いでくれ!すまない主様よ、私の認識が甘かった。お願いだから耐えてくれ……」
「ッ……!?凪!また…アタシ、を置いて行くの…」
凪は意識が途切れそうな中そっと梓の湿った頬に手を添え
「だい…じょうぶ…だ。泣か……」
と、凪の言葉は最後まで届かず、ここで意識を失うのであった。
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「はぁ。またここか…」
以前来たであろうなにもない部屋。 いや、ネーヴェの時とはちがうな。
真っ白な部屋に椅子がポツン。と置かれていた部屋とは違い。真っ暗なのだ。
「誰かと思えば君か。グリザードの息子よ。」
ッ…!? 突然暗闇の中から声がすると同時に、額から汗が滲み出す。そいつは話を続け
「さしづめ私の魔石でも食べたのでしょう。くく。本来であれば、このまま乗っ取ってあげてもいいのですが。それでは面白くない。」
何故こいつが……と思いながらも、凪は、そいつ、の名を呼んだ。
「………ヴァンス」
「そう警戒しないで下さい。どうせ貴方の身体を乗っ取った所で、あの精霊に私は勝てません。そうですね……貴方の行く末でも見守りましょうかね。」
「どうゆうつもりだ?」
「いやいや、貴方は実におもしろい。もしかしたら、魔王様さえも倒してしまうかもしれない。それを私は見てみたいのですよ。あ、そうそう私を倒した褒美を差し上げましょうか。」
パチン。とヴァンスが指を弾く。
「私のスキルと能力全てを差し上げます。これで少しはまともに戦えるでしょう。」
ヴァンスが指を弾いたと同時に、身体に力が溢れてくるのがわかる。ネーヴェを呼んだ時と同格か。いやそれ以上だな…
「では、あまり長くここに居ると外がうるさいのでね。私はお暇させて頂きましょう。貴方が魔王様を倒してくれる事を願っていますよ…切実にね。」
「待て!!」
ヴァンスがそれだけ言い残すと凪の意識は段々と薄れていった。
凪の意識が途切れた頃、ヴァンスはボソッっと呟いた。
「貴方が憎悪に呑まれない限りはですがね…ククッ。」
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