─勇者パーティ─
「はぁ。絶対やりすぎだろ……」
爆発音を頼りに歩いて来たが、音に近づくにつれ、轟音へと変わっていった。その音は、途切れる事無く、常に響き渡っていた。
「梓様は一体なにと戦っているんですかね?」
神楽の言う通りである。2.3発打てばある程度の魔物は倒せるだろう。しかし、ここに来るまで一回も音が止むことはなかった。それ程強力な魔物と対峙していると言うことだろう。
「さぁ?とりあえず新宿の皆さんにも謝る事になるだろうな。」
「凪様。やはり梓様です!見えてきました!」
ッ……!?
「なんだあれは、スライム…か?」
「ほぅ。珍しいな。エルダースライムじゃないか!」
「エルダースライム?強いのか?」
「見ての通りだな。私の敵ではないが、物理、魔法耐性があるから普通に倒すと苦労するかもしれんな。」
梓は一匹のスライムに向かって魔法を放っていた。しかしスライムも負けじと酸らしき物を飛ばし魔法を相殺したりしていた。
「よし、梓の攻撃に気を取られてる今がチャンスだ!゛一閃 ゛」
「おう!゛破砕連撃 ゛」「了解よ。゛アイスキャノン ゛」「私は怪我をした方を見ていますわ。」
ん?誰だあいつら。梓の事名前で呼んでる奴いなかったか?なんかどっかで見た事あんだよなぁ…
ぴきーーーっ!ぴきぴきっ
「ぎゃー酸飛ばしてきやがる!!」
「なんで俺らの攻撃が効かないんだ!」
「もぉー!2人とも邪魔するならどっか行ってて!」
……なんか苦戦してるし、手貸してやるか。
「ネーヴェ、お前の腐食はあれに効くのか?」
「当たり前だろう。」
「わかった!じゃあ頼む、ネーヴェ。」
手の甲へとキスをし、武装化させる。
今回はネーヴェ一人なのでマスケット銃の姿だった。
凪はエルダースライムへと銃口を向け
キュィィーーーン
魔力を貯め引き金を引く。
カチン。パシューン。
マスケット銃から放たれた魔弾はエルダースライムを貫き。内側から腐食していく。
「戻っていいぞー」
゛あっけないのぉ゛
「なっ…!?」
「なにがおきやがった?」
「今のは魔法…なの?」
突然、エルダースライムが腐っていき、灰になる姿を見て皆が驚きを隠せずにいる中、たった一人そんな光景には目もくれず、走ってくる姿があった。
「ふっ。気付くの早すぎだろ。」
「なぎーーーーーーっ!!!!」
梓である。大声を上げ両手をこれでもかと広げ凪へと飛びかかった。
そんな梓を受け止めしっかりと抱き抱え「ただいま。梓。」と伝えると、嬉しいそうに頬を染め「おかえり!凪。」とキスをした。
「待たせちまったか?よく頑張ったな」
梓の頭を撫でてやると「遅いのよ」と、胸の辺りをポカポカと叩いてくる。
「落ち着いたか?」
「うん。」
「それで、あいつらは誰なんだ?」
「知らない。」
えぇ…。絶対知ってるじゃん。君の名前さっき呼んでましたよね?
「梓。一旦離れ…」
「嫌。」
……しばらくダメっぽいな。甘えん坊モード入ってるし。
…ほら、なんか睨んでるやついるじゃん。
絶対に離すもんかと抱き着いている梓を引き剥がすのを諦め、凪は視線を先程のやつらに向けた。
するとその中の一人が顔を顰めながら、凪へと詰め寄った。
「君は誰だ?そもそもいつまでくっついてるんだ!!」
なんかめんどくさそうな奴だな。くっついてるのは梓なんだが。俺に言われても困る…… てゆうかこいつあれじゃん!よくよく見たらテレビに出てた元勇者だかってやつ!
「人に名を聞くならまず自分から名乗れって教わらなかったか?」
「ッ……。
「俺の名前は
「
凪がそう言うと、それぞれ自己紹介を始めた。
「別に構わない。俺の名前は山本 凪だ。元勇者が居るって事はあんたらが勇者パーティって所か?」
「えぇ、そうよ。元々、各地方に別れてたんだけど、和馬が戻ってこいって言うもんだから。今はここ、新宿を拠点にさせてもらってるわ。」
村瀬とか言ったか、どうやらこいつらも苦労しているらしい。やれやれと言わんばかりの表情をしている。
「お、おい。余計な事は言わなくていい。」
「梓と一緒にいた奴らは無事なのか?」
「みんな無事よ。梓ちゃんの様子を見る限りだと助けたかったのは貴方ね!」
「ん?あぁ。俺だろうな。ちと魔族の幹部と鉢合わせてな。先に逃したんだ。」
「ここに居るって事は倒してきたんでしょ?さっきのエルダースライムもそうだけど、貴方かなり強いわね。元勇者だったりするのかしら?それに…」
村瀬は俺の後ろに居る彼女たちへと訝しげな視線を向けた。
そーいえばこいつらに鬼人の息子ってバレたらまずいって言ってたな…さっさと切り上げるか。
「いや、俺は普通の一般人だ。」
「…まぁいいわ、散策はしないであげる。みんなはあそこのビルの中に居るわ。」
そう言われ凪は視線をビルに向けた。元々なんかの会社だったのか、20階ほどありそうな大きな建物なのが見て取れる。
「ほら、梓。そろそろ行くぞ。」
「…うん。」
「おい!待て。彼女とどうゆう関係なんだ!」
「あ?お前に関係ないだろ?」
「ある!彼女には勇者パーティに入ってもらう。」
なんなのコイツ。うぜぇな。ぶっ殺してやろうか。
凪から少しずつ殺気が漏れ出している事に気付かずに坂柳は話を続けた。
「後ろの君たちもだ。僕たちと入れば安全を保証しよう。これでも元勇者だからね。大船に乗った気持ちでいるといいよ!」
あぁ、だめだ。殺そう。
凪は足元を蹴り、殴り掛かろうとするが
「さっきっからごちゃごちゃとうるさいんだけど。パーティに入ってもらうとか安全だとかさぁ…アタシ断ったよね?いい加減耳障りなんだけど。」
「本当に耳障りですね。灰にしてしまいましょうか?」
「蒼波は溺死体作るの得意だよー!」
「わたくしを、旦那様から引き離そうとするなんて、万死に値します。」
「では、私が身体の中から腐らせてやろうかね。」
「ヒッ……」
坂柳は梓たちから無数の殺気を浴び、その場にへたり込んでしまった。
あ、やばい…俺以上に殺気立ってらっしゃる。
「落ち着けお前ら。ほら、梓も久しぶりに会ったんだからそんな顔するな。いつもの笑顔でいてくれ。みんなもこっちに来い。」
梓を抱きしめた後、みんなの頭を撫でてやり、気持ちを落ち着かせ、話題を変える。
「梓、鈴木さんや橘も無事か?」
「うん!みんな中に居るよ。」
「じゃあ顔見せに行くかー。」
凪たちがビルの中に入ろうと歩き出し始めると、突然肩を掴まれ、足が止まる。
「お、おい!僕を無視するな!」
「あ゛?さっきっからうるせぇんだよ!てめぇは!」
凪はそう言うと坂柳の頭を掴み。そのまま地面へと叩きつけた。
「ぐはッ!?」
「仮にも元勇者なんだ。この程度じゃ死なんだろ。」
「おいおい、あんちゃん。うちのリーダーが悪かったにしろ、こりゃあやり過ぎじゃねぇか?」
「なんだ?お前も同じ目にあいたいのか?」
「おもしれぇ、やってみろや!」
その場で睨み合い。辺りは静けさを増し。お互いに臨戦体制を取ると、突然、両手を合わせたかのようにパァン!!と音がしたかと思えば、村瀬が凪と国嶋の間に入ってきた。
「はい、そこまで!悪かったわ山本くん。今のは此方が悪かったわ。ちゃんと言い聞かせておくから許してちょうだい。国嶋も引きなさい。」
「チッ!でもやられっぱなしじゃ」
「でもじゃない。今のはどうみても坂柳の女癖の悪さが原因でしょうが。」
村瀬が国嶋の頭をペチンとはたいて落ち着かせ、凪はまるでガキだな。と言わんばかりの冷ややかな視線を向けその場を後にするのであった。
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