─オークジェネラル2─



  ……強いな。 対峙しただけでわかる。魔石を食べ進化をした事でステータスも大幅に上がっているのだろう。


  凪は小太刀の先を常に当てられている感覚に襲われ、身動きが取れないでいた。


 オークジェネラルはこちらが動かない事に痺れを切らし、大きな地響きを立てながら凪へと近づき、身の丈ほどある大きな斧を振り上げ凪の頭目掛けて振り下ろした。


「ちょ!!危なッ。」


  ギリギリの所で後ろに飛びのき、なんとか躱すとドゴォンと爆音を響かせ廊下の一部を破壊した。


 ッ…!?

 

 くそっ。でかい図体してるだけあって動きは早くないみたいだが、こんなの食らったらひとたまりもないぞ…


「ハァァァ!」


  地面を蹴り上げ飛躍── 刀を振り上げオークジェネラルの頭を狙いそのまま振り降ろした。


「グォォオオ!!」


  しかし、オークジェネラルの片腕に攻撃が防がれてしまう。


「チッ!!かてぇな」


  一度体制を整えるか…


  凪はその場から飛び退き、後ろへ下がった。


  身体が軽い。これもレベルアップの恩恵か。……よし、行ける。


  再度地面を大きく蹴り上げオークジェネラルの腹元へと剣を横に振り抜く──


「ブガア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!」


  その瞬間、オークジェネラルが突然叫び声をあげ、空気ががわめき、同時に凪の身体が硬直した。


  ッ…!!!


  身体が動かない…なんだこれは。


゛くッ…威圧だと…!凪、様早く体制を…゛

 

オークジェネラルはこの絶好のチャンスを逃さなかった。凪が身動き取れない隙をついて、拳を振り下ろした。


 ヤバッ……!!

「グッ…」


  それは凪の腹に直撃し、バキバキと骨が折れる音が響き、そのまま廊下の奥へと吹き飛ばされていった。


「か…はっ…」


  凪は血反吐を吐きながら膝をついた。


゛凪様!!゛


 ステータス…

────────────────────

山本 凪 17歳 レベル7 人族

HP7/70 MP 36/60

攻撃  33+50

防御  28+50

素早さ 39+50

運   50

侵食度 8%

スキル 精霊召喚、精霊武装

    -神楽


称号  世界を壊す者

────────────────────

  やべぇな…HPが残ってねぇ。


「凪様。一度退避します!」


  神楽は勝手に武装化を解き人型になると、オークジェネラルに手をかざし火柱をあげた。


  その間に凪の肩を抱え逃げようとするが…


「ブモォァァァ!!」


  火に包まれている事など気にも止めず、斧を引きずりながら、凪たちへと迫った。


  すると、神楽は凪の身体を押しのけ、オークジェネラルの前に立ちはだかった。


  くそ。凛鳴たちはまだ来ないのか…?さすがにもうもたないぞ。


  神楽は上手く攻撃を避けながら立ち回ってはいるが、時間の問題だろう。


 どうする?このままでは神楽が…全力を出せばやれるか…?MPは少ないが一振りするぐらいの時間はある……


「神楽ァ!…全力で行くッ!!」


  神楽を武装化し、魔力を全開にする。


「はぁぁぁ!!」


  刀身は150センチ程になりこれでもかと熱気を放っていた。

 

  オークジェネラルは神楽が消えた事で凪へとターゲットを変えた。


 

  凪は腰を低くし、刀を右斜め下辺りに置き、構えをとった。


「ここだぁぁぁぁ!!」


  その刀は右下から左肩へと振られた。しかし、オークジェネラルもそれに負けじと斧を振り下ろす──


 二人の激しい戦いの中、剣と斧がぶつかり合う音が響き渡った。



 ガキーンッ!


「なッ…!?」


  凪が振るった刀はオークジェネラルの斧に弾かれらその反動で体制を崩す。


  単純に力負けであった。瀕死の状態である凪にオークジェネラルの斧を弾くだけの力はなかったのだ。


  オークジェネラルはそのまま横に斧を薙ぎ払った。凪はギリギリで刀で滑り込ませ身体を庇うが、そのまま壁へと吹き飛ばされた。


「ガァッ…」


  やばい意識が……。 神楽…大丈夫か?


 ッ……!!

  刀は真っ二つに折れてしまっていた。驚愕する凪の前で、刀は粒子になり、次第に消えていった。


「チッ…ここまでか。」


  凪は壁に寄りかかりながらオークジェネラルを見据えた。

  目の前には斧を振り上げたオークジェネラル。


  凪はそのまま目を瞑りその時を待った──






  ………??ん?痛くない?


  ゆっくり目を開けるとオークジェネラルは斧を振り上げた状態で止まっていた。




゛……やれやれ。今回は特別だぞ ゛


  突如。頭の中から声がした。


 ッ……!?


゛……こんな所で死なれても困るのでな、少し手助けをしてやろう。 ゛


「お前は…誰だッ…」


゛……ほれ、前を向け。そろそろ動くぞ。 ゛


  パチン。という音と共に斧が振り下ろされる。


  しかしそれはスローモーションのように遅かった。


  周囲を見渡すが遅くなってるのはオークジェネラルだけであった。正確に言えば凪の思考が早くなったと言える。


  凪は右手に違和感を感じ、視線を向けた。


「なんだこれは……銃……なのか?」


  銀と緋色の装飾品が付いていて、神々しいオーラを放っている。世間一般ではマスケット銃と呼ばれている物だろう。


  なんでもいい。今はコイツを殺せる力がほしい!


  凪はオークジェネラルの頭に銃口を向け引き金を引いた。


 キュイィィィン。


  なんだ?魔力を溜めているのか?

 

 カチン。パシューン。

 

  オークジェネラルの頭を銃弾が貫いた。


  貫いたと思えばその傷口からオークジェネラルの体は徐々に腐食していき、あっという間に灰なってしまった。


 …………いや、これは反則だろ。

  呆然としていると、頭の中に聞き慣れた声が聞こえてきた。


【レベルが上がりました】

【レベルが上がりました】

【レベルが上がりました】

【レベルが上がりました】

 ……


  倒した……のか?


  持っている銃に目を向ける。


「これは新しい精霊か…?」


゛………今回は緊急時だったから助けただけ。契約前の召喚は身体への負担がひどいからね。今度はきちんと召喚してほしいかな。それじゃあまた後でね。主様。゛


  そう言い残すと次第に粒子になっていき、消えてしまう。


「ちょ、待ってくれ!聞きたいことが。」


  既に手元からは消えていて返事はなかった。


「とりあえず助かったのか…」


  ふぅぅぅ……。


 凪は大きく息を吐いた。


  結局凛鳴達来なかったな…なにかあったのか?しかしレベルアップの恩恵はすごいな。骨折まで治るのかよ!さっきまでの激痛が嘘みたいだ。


  凪は立ち上がりオークジェネラルの魔石を回収し、食べ残してあったオークの魔石を食べ、ステータス画面をチラリと見ながら呟いた。


「全然足りねぇな。アイツが居た教室に落ちてねぇかな?」


  凪は先程オークジェネラルが居た教室へと向かった。


「お、結構あんじゃん!!ステータス。っと。」

────────────────────

山本 凪 17歳 レベル20 人族

HP 150/150 MP 100/140

攻撃  62

防御  58

素早さ 72

運   69

侵食度 15%

スキル 精霊召喚、精霊武装

    -神楽-蒼波



    

称号  世界を壊す者

────────────────────

  ッ…!! レベル上がりすぎだろ…それ程強い相手だったのか。……おっ!新しい精霊が増えてる。 神楽はしばらく呼び出せないし試してみるか。


「来い。蒼波あおば


「ご主人様。初めまして。蒼波はね…蒼波ってゆーの。よろしくー」

「あ、あぁ。よろしくな」


  なんか個性的なのが出てきたな…


  青い髪の毛をしており、そこかしこに白いメッシュが入っている。空色の目をしており、横に髪の毛を縛っていた。ワンサイドアップ?と言うのだろうか。


  とりあえず教室に所に戻るか。 先輩が戻ってこないのも気になるしな…


「蒼波。みんなに紹介するから一緒に戻ろうか!」

「はーい、りょうかいだよぉ。」


  蒼波は嬉しそうに頷き、凪の袖をちょこんと掴んで一緒に歩き出したのだった。



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