─精霊召喚─
「力を………寄越せ。この世の全てを……」
【世界を壊す意思を持つ者を確認。山本 凪に称号を付与します。】
【一定数のレベル到達を未確認。スキルをロックします。】
「壊す力を俺によこせぇぇ!!!」
【外部からの操作により、強制解除を確認】
【レベルが上がりました】
【一定数のレベルを確認。スキルをアンロックします。】
「来い。
︎︎ 凪の声に反応し、ふわりとした赤い髪を肩ぐらいまで靡かせ、鮮やかな緑色の目をした女が現れる。
「ッ……!? これが俺の力。なのか?」
︎︎手を握ったりしながら感触を確かめると、なぜか普段よりも力が湧いてくるのがわかる。
︎︎ 赤い髪の女は言った、
「……凪様。ご命令を」
「そこにいるゴブリンを倒せ」
「かしこまりました。殲滅します」
︎︎凪が命令するとその女は冷静な表情のまま、ゴブリンに向けて手をかざした。
︎︎ その瞬間── 炎が燃え上がり、ゴブリンを包み込みんだ。
「凪様。終わりました」
「あ、あぁ。すごいな」
「すべて凪様のお力です。他にご命令はありますか?」
「いや、とりあえず大丈夫だ」
「では。」
︎︎一言だけ言い残すとその女はその場からすぅ。と姿を消した。
︎︎凪はあまりにも突然の出来事に唖然としつつ、近くの冷蔵庫からペットボトルの水に手を伸ばし、一気に飲み干した。
︎︎「ぷはぁ。」と吐息を漏らし、心を落ち着かせ、色々と頭の中を整理しようとする。
︎︎まず最初に聞こえた機械みたいな声はなんだ?それにさっきの赤い髪の女……。
「くそっわけわかんねぇ」
︎︎ 色んな事が重なりすぎて頭がパンクしそうだと頭を掻きむしる。
︎︎すると突然目の前にウインドウらしき物が表示された。
────────────────────
山本 凪 17歳 レベル2 人族
HP 30/30 MP10/20
攻撃 14
防御 13
素早さ 18
運 30
侵食度 3%
スキル 精霊召喚
-神楽
称号 世界を壊す者
────────────────────
「えーと、HPにMP、攻撃…ってまんまゲームのステータス画面じゃねぇかよ。」
︎︎ HP30……MPは20だけど10まで減ってるな。さっきの女を呼んだから減ったって事なのか?
︎︎ 攻撃に防御……侵食度?なんだこれ?聞いた事ない項目だな…
︎︎ スキル― 精霊召喚。これがさっきの女のやつだな。
︎︎現状ヤバそうなのはこれだな……
゛称号 ゛
『世界を壊す者』
︎︎多分。というか…絶対やばい。断言するわ。いや、確かに壊すとは言ったけどさ、こんなあからさまにしなくてもいいじゃん…。
︎︎この画面って他人からも見えたりするんかな?大丈夫だよな?見つかったらやばい奴扱いされるぞ、なんなら逮捕されるまでありえそうだ。
「ふぁ……ぁ」
︎︎ そーいえば今何時だ?外が暗いから今が昼間なのか夜なのかすら見当もつかないんだよな…
︎︎凪は台所を離れ自分の部屋へと向かった。
︎︎壁などには棍棒で叩いたような後がありボロボロになっていた。
︎︎ そして、ベッドだが
︎︎ 凪は布団の上に散らばったホコリをバサバサと払い横になる。
「さすがに疲れたな…」
︎︎ 色々あったからなのか、布団に入った途端にゲームの電源を切ったかのように凪の意識は途切れるのであった。
~~~~~~
︎︎ジリっじィジジリィジリィっぃぃぃ
「……ん…ぅ……ッ…!?」
︎︎ 独特なテンポで音を鳴らす目覚まし時計は健在であった。
「お前生きてたのかぁぁ!!」
︎︎ 子供をあやすかのように目覚まし時計を止め、視線を窓の外に向けるが、空は相変わらず真っ暗であった。
︎︎目が覚めたら全部夢でした。みたいなテンプレ機能はなかったらしい。
︎︎ベッドから身体を起こし、ゴブリンさんの被害者第一号であろうボロボロになったタンスを開け、着替えを探していると、ぐぅー。と腹が減ったぞ!食べ物をよこせ!と言わんばかりに腹の虫が騒ぎ出した。
︎︎全くやれやれだぜ。と独り言を言いつつ、なにか食べられる物を探しに台所まで足を運び周辺を物色する。
「んー……食パンはあるんだが、これ焼いたら匂いでゴブリン寄ってきそうだよな…」
︎︎ 少し嫌な予感がした凪は、そのまま焼かずに近くにあったジャムを塗りパンを頬張った。
︎︎ パンを頬張りつつ視線を移動すると、キラリ。と光るなにかが落ちている事に気が付く。
「ん?なにこれ?光る石…?」
︎︎ 河原にでも転がっている石に見えなくもない。しかし石にしては綺麗すぎる。そして少し光を帯びていた。
︎︎凪は特に気にもせずそれをポケットに仕舞い込んだ。
「ふぅ。食った食った。さて、少し外の様子でも見てみるか。」
︎︎懐中電灯を片手に玄関のドアを少し開け、外の様子を確認すると、見える範囲だけでも相当な数のゴブリンがうろうろとしていた。
︎︎バラバラバラバラバラ
︎︎空を見上げるとヘリコプターが飛んでいた。テレビ局辺りが飛ばして撮影でもしているのだろう。
︎︎ッ…!?テレビ!!
︎︎ドアをそっと閉めリビングへと走った。テレビなら現状を把握できる可能性があった。
︎︎リモコンを取り出し電源ボタンを押す。ピッ、ピッ、っとチャンネルを回すとビンゴであった。
「そうです。あの緑の生物はゴブリンと言って正直あまり強くはありません。包丁でもなんでもいいです。まずは何人かでグループを作りそのゴブリンを倒す事をおすすめします。」
「そのゴブリンとやらを倒してレベル?をあげる事によって身を守れると言う事でしょうか?」
「はい、ステータスと唱える事によって目の前にゲームのようなウインドウが現れます。そこには自身の強さ、スキルなどが表示されます。例えばですね僕のスキルは ゛一閃 ゛。って名前のスキルなんですけど、刀を降れば斬撃が飛びます。」
「そおなんですね!聞くだけですごそうですね。」
「昨日空に翼の生えた生物が出てきましたよね?あれが放った光によってこの世界に魔素。と言えばいいのでしょうか。魔法やスキルを使う事によって減ったMPを自然回復してくれる空気みたいな物が存在しています。」
︎︎ 魔素?そんなものがあるのか…。そもそもなんでこいつそんなに詳しいんだ?
「なんかゲームの世界みたいな話ですね。今もここにその魔素?というものがあるんですよね?それにあの翼の生えた生物についてもご存知なのですか?」
「そおなります。今は午前中ですが、外は夜みたいに少し暗いですよね?それもマナが影響しています。そしてあの翼の奴なのですが、あれは魔族の王です。いわゆる魔王と呼ばれる存在です。突拍子もない話で信じて貰えるかはわかりませんが、僕はまず異世界からの帰還者です。ある日突然異世界に飛ばされて魔王軍との戦いを余儀なくされていました。その時倒したはずの魔王がそれです。」
「そおなんですね、にわかに信じ難いですが実際に見ている以上信じるしかありません。その魔王はこの世界をどうするつもりなんでしょうか?」
「恐らくですが、乗っ取ろうとしてるんだとは思います。倒したと思ったのですが、上手く逃げたのでしょうね。それであちらの世界には戻れないのでこの世界を自分の物にしようとしているのかと思います。既に昨日の件で世界改変が行われています。僕の所にも各支部から魔王と魔物。その両方を確認済みとの連絡が入っています。」
「私達はこれからどのようにすればいいのでしょうか?」
「できるだけレベルを上げてください。魔物を倒せばレベルは上がります。倒せない人は地下フィルターなどへの避難をお願いします。」
「わかりました。詳しい事が分かり次第放送を開始致します。」
︎︎ 番組が終わり真っ暗になったテレビを消す。
「へぇ。異世界帰還者ねぇ…通りで詳しいわけだ。」
︎︎凪は消えたテレビの前でなにをする事もなく、ただ茫然としていたが、ふと思った。
︎︎ 学校に残ってたやつらはどーなったんだ?と。
︎︎ 正直な所、荒木なんかは死んでればいいと思うが、委員長となれば話は変わる。
︎︎ 散々世話になっていたのにいつ恩を返すのだと。
「はぁ。……少し様子だけ見に行くか。」
︎︎凪は小さくため息をつきながら、学校へと向かう決心をするのだった。
「玄関……は辞めといた方がいいか。」
︎︎台所の方へ向かい裏の勝手口からチラッと外に視線を向けるがゴブリンらしき存在はいなかった。
「よし、こっちには居ないな。じゃあ行くか。」
︎︎後にこの判断が委員長の運命を分ける事になる事はまだ誰も知らない。
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