第33話 地雷
「手短に済めば良いんだけど……」
そう呟きながら、とぼとぼと無駄に長い廊下を歩いていく。『ボス』に魔法を与えられたことで、それ以前に比べて身体能力や体力は多少は上昇はしている。
けれど、その魔法が後衛? サポートタイプであるせいか、他の幹部よりも上がり幅は小さい。
具体的に言えば、一般人に毛が生えた程度。そんな体力で、建造的欠陥を抱えるアジトを移動するのは一苦労だ。
前の集会で「エレベーターをつけて欲しい」と提案したのだが、それが実現する様子もない。
(……あれ? そういえば、最後に集会に出たのっていつだったかな? 最近はアジトに来ても、ラボに引きこもって『調整』しかしてなかったような気が? ……まあ、気のせいか!)
「早く用事を済ますとしようか!」
気を切り替えて、僕は再び歩き出した。
■
「はーい。命令通りにやって参りましたよー、『ボス』」
「ようやく来たか、フランよ」
あれから更に時間をかけて、玉座の間にたどり着いた僕。奥で玉座に腰をかけていた軍服姿の少女――『ボス』に声をかける。
「早速で悪いが、今日の件についてお前に聞きたいことがあってな」
「……別に構わないですけど、報告書は既に送ってますよね?」
「ああ、もちろん確認はさせてもらったが、直接聞きたくてな」
そう言う『ボス』は一見普段通りに見えたが、どこか興奮しているように感じられた。基本的に冷徹な性格の彼女の姿しか見たことないが、何かあったのだろうか。
『ボス』の外見も相まって、まるで欲しい玩具を目の前にお預けをされた子供のようだ。
いや、僕や他の幹部達でも『ボス』の本当の年齢を知らないので、強ち間違いではないかもしれないが。
しかし、大体のことは報告書に載せていたはずだが、一体何を聞きたいのだろうか。
『ボス』が気になるようなことで、ぱっと思い浮かぶのは
あれの性能は『ボス』も褒める程の出来だったので、回収が可能かどうかについてと推測する。
それか次の『改造人間』の完成、もしくは僕の『生体改造』がどれだけ成長したのかを確認したい。
この辺りだろうか。
そんなことを考えていると、『ボス』は何かの魔法を発動させて、空中に映像を投影した。その映像は、僕が報告書に添付したもののようだ。
ちょうど、新衣装に身を包んだアマテラスがウィッチを、僕の『生体改造』の支配から解放する場面であった。
(流石は僕の推し! 生で見るのも最高だけど、映像で見てもその輝きに一切の曇りなしっ! あの姿をいつか意のままに汚せると思うと……ぐへへへ)
「……で、本題に入っても大丈夫か?」
「……はっ!? はい! 問題ないですよ」
少々醜態を晒しってしまったが、すぐに取り繕ったのでダメージはなし。家に帰ったら、録画した分をもう一度見ることにしよう。
気を取り直して、『ボス』に向き合う。
ん? 『ボス』が聞きたいことって、アマテラスについてということになる。理由は分からないが、何時間でも語ってみせるとしましょう。
手始めに、アマテラスの好きな人のタイプから――。
「そういえば、どうしてアマテラスについて聞きたいんですか? 以前、僕が彼女を話題に挙げた時には興味がなさそうでしたのに。
確かに、この映像でアマテラスが使ってる魔法は特別そうですけど、別に『ボス』だったら自力で同じことができるでしょう? 何か理由でも?」
気がつけば、『ボス』の普段以上に厳しい視線が突き刺さっていた。いつもの乗りでは、最悪の場合殺されかねない。それぐらいには、『ボス』が纏っている雰囲気は、先ほどまでとも異なる。
それほどまでに、アマテラスに『ボス』の興味を惹くものがあったのだろうか。
それを探る為に、軽く尋ねてみた。
「――ああ、そうだな。理由なら、当然ある。あの魔法少女を贄に捧げることができれば、儂の――『アクニンダン』の願いが叶うのだからな。
その前段階である捕獲作戦を計画するにあたって、あの魔法少女に一番詳しいお前に助言をもらいたいというのが理由だ」
よくぞ聞いてくれた、と怖い表情を引っお込めて意気揚々と話し出す『ボス』。それに対して、僕は反射的に抱いた感情を口から吐き出していた。
「――は?」
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