第28話 力が欲しい?
ウィッチの自爆攻撃は失敗に終わった。アマテラスが無事なのは良かったが、どういうからくりだろうか。
あんな膨大な魔力を暴発させた一撃は、僕なんかが当たれば木っ端微塵になることは間違いない。
この状況に既視感を覚える。あれは確か、僕とアマテラスが初めて出会った時。
あの時は『改造人間』の代わりに、組織で調教済みの魔物を十数体連れていた。
初対面でアマテラスに固執する前の僕は、彼女が僕にとっての
当時は魔法少女に成り立てであったアマテラスが、使い捨て前提の低級とはいえ、無数の魔物に敵うこともなく、あっさりと死んだ。
そう判断した。そうとしか判断できなかった。
だって、そうだろう。数十体の魔物に肉体を喰われて、生きているはずがない。
だけど、アマテラスはこうして生きている。
その時、何があったのかをよく思い出せ。アマテラスに群がっていた魔物達はどうなったのか。
アマテラスを中心とした巨大な爆発で全滅したのだ。しかも、基点となったであろう彼女は無事であった。
奇しくも、
もちろん多少の差異はあれど、アマテラスには何かとんでもない力――それこそ死から蘇る力、またはそれに近いことを可能とする魔法があるようだ。
その力の対象とできるのが自分だけなのか、それとも他者にも有効なのか。
普通であれば、そんな反則級な魔法の効果は自分にしか作用しないはずだ。
けれども、アマテラスなら、僕の推しの魔法少女であるのなら。
もしもの奇跡を起こせる。そんな予感がした。
第三者が見れば、止めを刺そうとしているようにしか見えないが、通常ではありえない展開が起こる確信があった。
――例えば、『改造人間』として尊厳や精神が壊されたウィッチを完璧に救う。そんな奇跡が。
(――それなら、面白い演出ができるかも)
良いことを思いついてしまった。それを仕込む為に、アマテラスがウィッチに、大きく振りかぶった刀を振り下ろそうとした瞬間。
『シャドウ』さんに心の中で一つの指示を出した。
『シャドウ』さんの体の一部を触手のように動かしてもらって、拘束されているダイヤモンド・ダストの口だけではなく、目を塞いでもらった。
今までダイヤモンド・ダストには、体も動かせない、口も利けない状態で、アマテラスとウィッチの戦闘を見てもらっていた。
一切の抵抗ができない状態で、自分が助けると誓った少女が他の誰かに救われようとする場面を見せつけられる。
痛みが伴わない、一種の拷問ではないだろうか。
戦闘の最中、ダイヤモンド・ダストはアマテラスに対して嫉妬のような、憧憬のような感情が籠もった視線を送っていて。
可愛いらしい百面相を横目で堪能できて、僕は満足だ。
特にウィッチが負傷すると、面白い具合に抵抗が大きくなり、『シャドウ』さんの拘束を打ち破ろうと無駄な努力をしていた。
それほどまでに、ウィッチを助けたいと思っているダイヤモンド・ダストがこの光景を――アマテラスがウィッチに止めを刺そうとする直前の場面で、視界を遮りその続きを見せなかったら。
一体どうなるだろうか。
「――!? ――!?」
怒り狂ったかのように、『シャドウ』さんに抑えつけられた状態で暴れようとしていた。
口は塞がれていても、ダイヤモンド・ダストが言っていることは想像できる。
――何故、ウィッチを助けると言った人間が彼女を殺しているのか。許さない、許さない! 殺してやる!
そんな所だろうか。そして、これが正しければダイヤモンド・ダストは、アマテラスがウィッチに止めを刺したと
視線は、僕の『生体改造』の支配から解放されて気絶しているウィッチを抱き止めるアマテラスから外すことなく、激情に狂っているダイヤモンド・ダストの耳元に近づき、彼女を堕とす為の言葉を小声で囁く。
「あーあ。貴女の力不足で哀れなウィッチは、正義の味方気取りの魔法少女に殺されてしまいました。
自分の無力を嘆くなら、僕が力を授けて上げるよ? ダイヤモンド・ダスト」
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