第30話
side 成瀬涼子
あのプロポーズから半年。
「お嬢、またですか?」
私は山崎のうんざり顔をにらみ返す。
「うっさいわね!こうなりゃ意地なのよっ。」
最近私は意地になって続けていることがある。私にプロポーズした湯島秀人。でも過去の彼の素行は悪すぎた。
ぶっちゃけ『彼の女』だと名乗る女は次々に私の目の前に出てきた。
その女の中で元カノは山崎の調べではゼロ。それもどうかと思うけど。
元々ちゃんとお付き合いしたことが皆無らしい。
サイテー男だな。
セフレ紛いの一夜の関係って女性が半分くらい。残り半分は彼のファンとか彼に恨みがある奴の嫌がらせとか。
いくら『ドン!と構えてなさい』と言われても…いくら何でもこれは酷いじゃん。
と言う事で私は今夜も繁華街に繰り出す。成瀬のシマだし危険は少ない。少し離れて山崎も付いてくるしね。
私は願掛けをしたんだ。
もちろん願掛けだから誰にも内容は内緒。
繁華街を歩いてる私に『湯島秀人の女』だと名乗る人が声をかけて来なければ、彼のプロポーズを受けようと。
かくして3ヶ月。
夜、気紛れに外出する事10回。全戦全敗。私と湯島秀人の関係はかなりオープンになっていて婚約寸前だと噂されている。湯島秀人が隠そうとしないからなんだけどさ。
「過去は過去。良いじゃありませんか。今は品行方正なんですから。」
確かに私は彼に惹かれてるし山崎の言葉に頷きそうにはなるが
一度始めた願掛けを途中で辞めるとかしたくない。
てか、最近私が願掛けをしてる事に山崎が気付いた気がするんだよね。
私に声をかけて来そうな女を前もって排除とかされたら願掛けも意味無いし。
どうしたものか。
考え込む私のスカートの裾がくん!と引っ張られた。振り向けばそこには可愛い女の子。
「え?」
「成瀬涼子ちゃん?」
私は彼女と目線を合わせる様にしゃがんだ。
「うん。」
幼稚園児位かな。可愛い。
「どうしたの?」
何かあったのかと慌てて駆け寄る山崎を笑って制する。
「あのね。パパと別れて欲しいの。」
ピクリ。眉がつり上がる。
「パパってもしかして?」
「ゆしまひでと。」
だよね。ついに隠し子まで出てきたか!
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