第29話
side 湯島秀人
「それは重大発表ですね。」
しみじみと結城宗也が言う。
「おめでとうございます。お義父さんお義母さん。」
祝辞を述べ
「はじめまして結城宗也と申します。亜紀の夫です。」
俺に笑いかけた。俺より年上だとは思ったがムカつくほど落ち着いてやがる。溢れる気品も俺には無縁のモノだ。
「マジで妊娠したの?」
「何ヵ月よ。」
「高齢出産でしょ大丈夫なの。」
「失礼ね!まだ35よ。」
「「6でしょ!!」」
のほほんと挨拶を交わす男達の間で女達は具体的にお喋りをはじめた。
「頑張りましたねお義父さん。」
「いや、深雪にねだられてね。」
「ありがとうございます。お陰で涼子は解放されます。」
「いやいや、跡継ぎの事さえクリアなら湯島とのご縁は望むところだよ。」
確かに湯島は関東龍聖会ではNo.2。
中堅どころの成瀬からは喉から手が出る程のご縁だろう。
「親父!湯島はダメ。若頭の女癖が悪すぎ。妹の瑠璃子から散々聞かされたんだから間違いないし。あちこちから愛人の子が出てきたらどうすんのよ。」
「「え?」」
涼子の声に成瀬の親父と結城宗也が探る様に俺を見た。
「誤解です。涼子と知り合ってからは品行方正です。調べて頂いて構いません。」
俺がきっぱり言い切ると
「『みるきぃ』の理名ちゃん。」
涼子は冷たい声で言いはなった。
根に持ってやがるな。
「あ、そう言えば私にも有ったわねぇ。婚約した後で貴方のファンに髪切られたこと。」
成瀬の姐が組長に笑いかけて成瀬の組長が真っ青になった。
「み、深雪っ!」
おろおろと狼狽えてるな。疚しい感じがミエミエだ。
「あら、私も有ったわよ。新婚旅行の飛行機の中で!キャビンアテンダントが宗也の元カノで嫌味言われたのよ。ねぇ?」
「…亜紀。」
結城宗也が困惑してる。
「でん!と構えてなさい涼子。
アンタを蔑ろにしたら私が宗也と一緒に湯島の表企業を潰すから。」
鼻高々で言い放つ嫁を愛しそうに見つめる結城宗也。
「亜紀姉。」
「そうね。敵わぬまでも一矢報いてあげる!ねえ貴方。」
成瀬深雪にしなだれかかられ、組長はひきつりながら微笑み返している。
「お袋。」
2人の女の援護射撃に涼子は俺をじっと見る。
「信じて嫁に来てくれねえか。後悔はさせない。」
俺は座布団を外し正座すると涼子の顔をじっと見てプロポーズした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます