第27話

side 湯島秀人





涼子は自称『俺の彼女』を名乗る女と出くわしたらしい。

誰だよ。理名なんてしらねえぞ。

俺はホテルの広い廊下の端で中井に電話した。


『若頭。首尾は?』


首尾と言うのは勿論涼子との事。急かすような声を無視して


「理名っつう女が『みるきぃ』に居るか?涼子にチョッカイ出したらしい。」


『は? お待ちを。』


不具合があった事を感じたらしい中井は『みるきぃ』の従業員名簿を検索していた。


『…若頭、該当者は1人だけ。源氏名は理名。本名は安本明奈やすもとあきな。』


スマホに彼女の履歴書のらしい画像が届く。狸みたいな顔だな。


「知らねぇ。」


『店のNo.1ですが。』


「…ああ!無駄に胸がデカイあの女か。」


世間話くらいはしたかもな。なのに俺の彼女を名乗ったのかよ。


『彼女がなにを?』


「俺の彼女を名乗って涼子を罵倒したらしい。」


『…そりゃあ、また。』


何だよ?言いよどむ中井に苛つく。


『信憑性がありすぎて否定し辛い…』


「ああ゛?!」


『冗談です。若頭が改心したのはわかってますから。』


「‥‥‥」


『至急彼女を呼んで事情を聞きます。』


「任せた。」


人違いならいい。だが真実なら


「容赦すんな。」


『…うす。』


俺は電話を切りあわてて涼子の後を追う。


「失礼します。」


涼子は襖を開けて中に入る。


「何で?亜紀姉も!」


部屋の中で驚きの声を上げていた。

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