第26話
side 成瀬涼子
やがて車は「大和ホテル」の正面玄関に滑り込んだ。
車のドアが開き私をエスコートしようとした湯島秀人を無視した。
「ふん!女誑しの遊び人が気安く触るな。」
私の声に湯島秀人が眉を下げた。
なんて情けない顔してんの。
言われたくなきゃ女遊びなんてしなきゃいいのに。
「涼子!」
足早に部屋に向かう私を若頭が追いかける。
「だから!気安く呼ばないで。」
「女遊びなんて1年以上してねぇ。
お前と知り合ってからはずっとお前一筋だ。」
うわっ!感動的なセリフだこと。
「私、ついこの間コンビニで絡まれたんだけど。若頭の彼女さんに。」
「あ゛?!」
ふん!知らないと思って嘘ついてんじゃないわよ。
「『みるきぃ』って店の
あれはマジでムカついた。大声で罵られてお客さんみんなに見られたし。
一般人だし、人がいるから蹴飛ばせ無かったし。
なぁにが『秀ちゃん』だ。
『馬鹿じゃないの。あんな女好き
にっこり嘲笑ってやったら猿みたいに赤くなってワメいてたっけ。
あんなのが彼女とかマジで女の趣味が悪い。
「ちょっと待て『みるきぃ』は湯島の経営してるキャバクラだが理名なんて知らねえぞ!」
げっ!キャバ嬢だったのか。確かにOLにしては派手だったな。
お生憎。信じるもんですか。アンタの女癖の悪さは瑠璃子から散々聞かされてますっ。
ふん!と鼻を鳴らしてお袋が待つ部屋に急いだ。
私の話に立ち止まった若頭はスマホを取りだし、どこかに電話してたみたいだけど無視無視。
お袋の重大発表だか何だか知らないけど私はお見合いに励むんだから。
「失礼します。」
私は作法正しく襖を開けて見合いの席に乗り込んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます