第25話
side 湯島秀人
「呪詛をかけて呪ってやるから。」
涼子はその可愛らしい口から似合わない物騒な言葉を吐き出す。
『呪詛』ってなぁ…。
さすがに呆れて涼子を見るとぷうっとふくれて運転席の山崎を睨んでやがる。可愛いな。
もうお前は俺のモンだ。
俺は躊躇わず涼子を抱き寄せた。
「ちょっと離してよこの女誑しっ。」
もがいても逃がさねぇ。
見初めて1年。俺は直接涼子を口説こうとして何度も拒否られた。
半年が過ぎる頃には、さすがの俺もここまで拒否られると諦めるしかないか…と思い始めたのだが
「『呪いの若頭』と呼ばれてる意味がわかりますか?お嬢は貴方に惹かれてるのに『成瀬の跡取り娘』だからと諦めようとしてるんです。」
俺に声をかけたのがこの山崎勘助だった。確かに涼子は何度もそれを口にした。けどな、素っ気ない態度と言葉。
『あの態度で俺に気があるのか?』
マジかよ?いや好かれて無くても振り向かそうと努力はしたつもりだ。
優しい笑顔と態度で
『跡取りなら俺たちの子供を1人成瀬に養子にだそう!』
とか提案したりもしたが。
『妊娠するかどうかもわからないのに適当な事を言うなっ!!』
罵声を浴びせられた。確かにそうだ。
子供が出来なきゃ出来ないで諦めもつくが、逆に1人しか授からなきゃしこりを残しそうだもんな。
偶然を装い接近を図っても、持ち前の勘の良さでことごとく逃げられた。
八方塞がりの俺に知恵を授けたのがこの山崎勘助。
後に成瀬の軍師と言わしめる逸材だった。
『深雪姐さんもお嬢のことを随分案じてらっしゃいます。何しろ半端ない数の見合いをこなしてますから。』
あれはもうヤケクソのレベルです。
山崎の声に苦笑した。
確かに。俺が知るだけでも既に10回はやってるよな。
『普段醒めたお嬢がここまであから様にSOSを出せば姐さんも心を痛めます。』
俺は成瀬の姐さんである深雪さんと相談してこの日を迎えたんだ。
「暴れると着物が着崩れするぞ。綺麗なのにもったいねえ。」
少し大人しくなった涼子の頬に口付けして
「惚れてんだ。手放して堪るか。」
耳もとでささやけば涼子は真っ赤になってうつむいた
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます