第24話

side 成瀬涼子




おかしい!

何時もなら、私の皮肉に鼻白らんで引き下がる湯島秀人が今日はやけに強気だ。

おまけに、


「開けろ!」


山崎に命令してるし。

しかも山崎が言うこと聞いてるしっ!!


「ちょっと山崎っ!あんた成瀬の組員じゃない。なに湯島の若頭に従ってんのよ。」


ドサリ。私の隣に当然の様に湯島の若頭が座った。


「なんなのよっ!!」


この男、私の見合いについてくる気?

私が睨みつけるのを軽くスルーして


「出せ。」


湯島秀人は山崎に命令した。


「ちょっと、この若頭を放り出しなさいよ!」


山崎は私の言葉を無視して車を走らせた。こいつっ!自分の組のお嬢より他所の組の若頭を優先しやがった。


「…クビにしてやる。晴明神社で呪詛をかけて呪ってやるから。」


呪詛のかけ方とか知らないけどさ。

私が怨念を込めて言うと、初めて山崎は青くなった。


「勘弁して下さいお嬢。今日のこれは姐さんからのお達しです。」


は?姐さんからって…


「お袋が?なんで。」


私の問いに湯島秀人が笑いながら答えた。

相変わらず無駄にイケメンだ。

呪いが強化されちまうな。


「言ったろ?状況が変わったって。

今日は成瀬の姐さんから目出度い報告がある。」


目出度い?あんたの頭がオメデタイんじゃないの。


「お袋が何の報告をするのか知らないけど、あんたには微塵も関係ないじゃん!」


お袋の報告なんてどうせ、韓流スターに会いに韓国旅行に行くだとか

志藤兼のファッションショーを見にミラノに行くだとか

豪華客船の旅がしたいからひと月留守にするとか

そんなレベルだ。

私は今までのお袋の行動を振り返って鼻を鳴らした。そんな報告に立ち合ってどうすんだか。

私が睨みつけるのにも構わず湯島秀人は私の肩を抱き寄せた。


「ちょっと!いきなり何すんのこの女誑しっ。」


暴れるんだけど、びくともしない。

くっそう!これでも護身術は極めてるんだけど。私の抵抗を歯牙にもかけず


「暴れると着崩れするぞ。せっかく綺麗なのにもったいねえ。」


余裕で私に笑いかけた。

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