第22話
side 成瀬涼子
湯島秀人にキスされてから1年…
「お嬢、またっすか?今年に入って8回目っすよ。」
山崎のうんざりした声に私は怒鳴り返す。
「うっさいわね!こうなりゃ意地よ。」
お見合い写真は70枚も有ったんだ。
いくらなんでも70回も見合いすりゃ1人くらい眼鏡に叶う男が居る筈。
日曜の午後、さして用事がない日はすべて見合いにあててる私。
翡翠色の振り袖はつい最近未紀叔母さんからゲットした新作。
「で?場所はどちらで。」
「大和ホテル!」
「げっ!高速乗って一時間も走るんですか。」
「るさいっ。今日のはパパのイチオシなの! ×1だけどイケメンなのよ。」
イケメン…その解釈も色々ある。
イケメン擬きとかイケメン風とか自称イケメンとかただの勘違い男とか。
1年の婚活を経た私の正直な感想だ。
去年知り合った湯島の若頭の呪いは絶大で。キスをされてさらに強固になった。
会う男会う男どれもこれもイケメンに見えない。
「晴明神社でお祓いしてもらおうかな。」
陰陽師ならなんとかしてくれるかもしれない。
「なに馬鹿なこと言ってるんですか。」
相変わらず山崎はお嬢の私に遠慮がない。なんと無く、最近湯島の若頭と繋がってる気配がするのは気のせいか。
だって見合いの席に送らそうとして車を出すと必ず…
やっぱり!
前を湯島のベンツが道を塞ぐ。
「もぅ!なんなわけ。」
何処まで暇なんだ!湯島秀人。
日曜でも仕事あるだろ!
私はため息をついて窓を開けた。無視してたら何処からかレッカー車が現れて牽引されそうになったことが有るのだ。車から降りた彼の言葉はいつも同じ。
「無駄足だ。止めとけ。」
「大きなお世話っ。」
苛つく私の返事も変わらない。
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