第21話

side 湯島秀人




「どういたしまして。」


花のようにふわりと笑う涼子はとてつもなく可愛い。

剛で知られた湯島の強面2人を瞬殺しやがった。


「お前も帰るぞ。」


然り気無く近寄り肩を抱こうとしてふいと避けられた。

ムッ!傷付くなコイツ。


「お先にどうぞ。私は成瀬の迎えを待ちます。」


「あ?」


「さっき豊田保のスマホから山崎を呼んだの。きっと大慌てで迎えに来るわ。」


クスクスと笑う涼子は俺を視界に入れない。優雅に歩くとソファーに座り直す。くそっ、俺を無視する気だな。


「中井、先に湯島に帰りソイツを調べろ!」


「うすっ。」


俺は部下2人を見送りドサリと成瀬涼子の隣に座った。


「帰らないんですか?」


躊躇いがちに声をかける涼子は俺を見ない。視線は海に向いたままだ。


「お前独り残せねえよ。てか、そんなに俺が嫌いかよ。」


「は?」


成瀬涼子は首をかしげて俺を見た。


「質問の意味がわかりませんが。」


わからねえってコイツわざと惚けてんのか!


「嫌いかと言われても…私は成瀬の跡継ぎ娘ですがまだ中学生です。

瑠璃子から色々聞いてますしとても湯島の若頭のお相手ができる者ではありません。」


言外に『あんたの女癖の悪さは瑠璃子から聞いてる』と言われた気がする。

確かに女ぐせの悪さは誉められたもんじゃねえが


「俺はお前が欲しくてたまんねんだけど。」


とびきりの甘い声で囁けば


「サイテー!ドン引きするわ。」


露骨に体を離され鼻で笑われた。

この女っ!!

ムカついた俺はそのまま涼子をソファーに押し倒した。


「ちょっとっ!!」


抵抗して暴れるが押し倒せば力の差は歴然だった。


「湯島の若頭がこんな真似するなんて…」


吐き捨てる様に口にした涼子に


「悪いかよ。俺は男だ。先ずは意識して貰わねえとな。」


キッと下から睨み付ける涼子の唇に触れるだけのキスをして抱き起こす。


「い、意味不明。」


赤くなって恥じらう涼子に俺は笑いかけた。

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