第20話
side 成瀬涼子
「一体コイツに何をしたんだ。」
呆れたような声にちょっと傷付く。
女の子1人で獣化した男を捕獲したんだから誉めてくれたっていいじゃん。
まあ、獣化したって言っても滅茶苦茶弱かったんだけどさ。
「別に。ワイングラスに薬入れたからすり替えて飲ませただけ。
何の薬かは知らなかったけど、
媚薬か、麻薬か。なんとなくだけど違法薬物じゃないかしら。
飲まされたと気付いた時に必死で吐き出そうとしてたから。」
淡々と話すと湯島秀人とその部下達はぽかんと口を開けた。
「お前、1人でコイツを捕まえたのか。」
当たり前じゃん。私とあんたたち以外誰がいるのさ。
「見苦しいからさっさと連れて行って。そいつを捕まえに来たんでしょう?」
私は部屋の隅でゴムマリみたいに跳ねてる男を顎で指すとワイングラスに手をかける。
「未成年だろうが。」
私のグラスを横取りした湯島秀人に吹き出した。
「やだ!ヤクザの娘にお説教。お生憎様。成瀬のお嬢は2人揃って蟒蛇(ウワバミ)で有名なのよ。知らなかった?」
私はふわりと笑うと、赤くなった湯島秀人の手からワイングラスを奪い返した。
豊田保は最低だがワインは美味いし景色は最高だ。
あ!思い出した。
「ちょっと待って。」
私は豊田保を連れ出そうとしてる強面2人を呼び止めた。
「「は、はいっ!!」」
明らかに年上の強面に敬語で返事をされた。ま、いいけどね。
立ち上がるとすたすたと強面の1人に近付き
「はい。」
軽く握った手を差し出す。
「はい?」
反射的に手のひらを差し出した男ににこりと笑うと戦利品を手渡した。
コロン。
彼の手のひらに転がるのはエメラルドの指輪。
「あの?お嬢?」
戸惑う強面は確か樋口と呼ばれていたか。
「その指輪に仕掛けがあるの。中に耳掻き一杯くらいの薬が入っててね。まだ少し残ってたし調べれば色々わかるでしょ。」
「‥‥‥!」
彼らの目付きが変わった。だよね。多分この薬絡みで豊田保を追いかけてたはずだから。
「「っ、感謝しますっ!!」」
強面2人にガバリっと頭を下げられて
「うふふっ。どういたしまして。」
ちょっと優越感にひたってしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます