第19話

side 湯島秀人





「呪いの若頭?」


俺が眉をひそめると成瀬涼子はヘラりと笑い。


「どうしてここに?

ああ!豊田保を捕まえに来たんでしょ。彼なら隣で寝てるわよ。」


「寝てる?」


俺は後ろの2人に目配せして涼子の見つめるドアを顎で指した。

中井と樋口は無言でドアに向かう。

俺は勿論、涼子の隣に座り彼女を抱き締めた。


「無事で良かった。」


「ちょ、若頭!ワインがこぼれるっ。」


感激して抱き締めた俺に涼子は冷静に抗議した。


「暑苦しいから離れて!」


「‥‥‥」


胸を叩く様に押されて抱き締めた腕を緩めた。涼子に嫌われてたのか。

そう言えば【呪いの若頭】なんて呼ばれていたな。


「「若頭っ!!」」


呆然としてた俺は側近2人の声に我に返った。


「…コイツが!?」


側近2人に引き摺られて来た豊田保に俺は言葉を無くした。

画像でしか見ていない豊田保だが、


「何だこれ。」


俺の前に連れてこられた男は身体中に脂汗をかき、真っ赤になって時々体を跳びはねさせる。

しっかりくくりつけられた手首と足首からはかなりの血が滲んでいた。

それでも可哀想だと思えないのは

目がうるうると熱を孕み、媚びる様に俺を見上げたからだ。

コイツ、欲情してやがる。

拘束を解いたら飛びかかられそうな危機感を覚えた。


「一体コイツに何をしたんだ。」


俺は成瀬涼子を振り返り聞くしかなかった。

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