第17話
side 湯島秀人
『豊田保が別荘に着きました。
えと、若頭?』
チッ!あと10分はかかりそうだな。
豊田保が餓えた狼みたく成瀬涼子に襲いかかってなきゃ良いが。
「…なんだよ。」
無愛想に中井に返事を返す。
『二人仲良く並んで別荘に入りましたが。』
「…あ゛!?」
『ひええっ!ですから二人仲良く…』
「んな訳ねえだろ!」
なに寝ぼけてやがる。
『す、すいませんっ!!』
何で拉致られた筈の成瀬涼子が仲良く豊田保と並んで別荘に入るんだよ!
あり得ねえだろ。
「‥‥‥」
苛つく俺を乗せた車は10分かからず豊田保の別荘に着いた。
「開いてるな?」
車を飛び降りて不機嫌に呟けば、北川がこくこくと青い顔で頷いた。
コイツの特技はドアの鍵のピッキング。電子ロックならぶち壊すしかないが、幸いこの別荘は鍵を使って開けるタイプだった。
静かにドアを開けて横にずれる北川の横を走り抜ける。後には中井と樋口が続いている。
俺は焦る気持ちが言葉になっていた。
「涼子っ!無事か!」
まったく無意識に名前を呼ぶ。
「なによ。馴れ馴れしいわね。」
バン!と開けた先は広々とした居間で。大開口から太平洋を一望できた。
俺の求める女は深紅のドレスを身にまとい俺を見た。
深いスリットから白く形の良い足を覗かせてソファーに足を組んでゆったりと座ってワイングラスを傾けている。
「あら、呪いの若頭じゃないの。」
なんだか縁起でもない呼ばれ方をしたような?
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